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【♯47】慟哭の堕天使、逆鱗の火龍。

 ――思わぬ所から、己の人生を奪った【プレデター】を散開させた張本人・ハッタリの染谷を射殺したキッド。

 復讐を果たした彼だったが、その後始末は余りにも生々しかった。


「やれやれ……殺るなら徹底的に殺れって鳳凰堂には言われたが、FPSやってなきゃこんなんやってられるか。鉄の匂いがキツイわ」


 被弾15発、全て頭部に着弾した屍となったハッタリの染谷の遺体の下には真っ黒な血溜まり。過激なゲームをやっているせいか、グロテスクな絵面には耐性はありつつも、リアルな遺体と臭いには流石のキッドも顔をしかめる。


『キッドをプレデターの力で地位も名誉も地底に叩き落した。あの沈みようには笑いが止まらなくてなぁ!! そしたらどっかの―――』


 そしてキッドの手元には小型のテープレコーダー。先程のルシファーと染谷の会話を余すことなく録音され、それをプレイギアに転送させて射殺の起因として十分な証拠を得た。この重要な手掛かりをどうやって録音させたか、その答えを説明するならば……


「悪いなルシファー、接近するお前にマイク付けて、染谷に悪事を証言させる事しちまって」


 キッドは、負傷して倒れているルシファーの黒スーツの襟から小型マイクロホンを取り出した。染谷の枷になっていたルシファーの前でしか言えない証言を掴むために仕掛けたクレバーなトリックだった。


「……初めから、染谷を殺す気でいたのか」

 マイクを取り外されたルシファーは、うつ伏せになりながらも不機嫌な口調でキッドに話す。


「全然。コイツを自首させろつったのは本当だし、WGCに確保させるのも本来の目的だ。……でもアイツは交渉相手も、お前をも消して口封じさせようとしただろ? そんでプレデターばら撒いて改心する気ゼロ、更にはチートプログラムで天下取ろうとか上せた事言ってるようじゃ、死刑囚にも劣るクソガキだよ」


 クールを装う割には余りにも辛辣なキッド。

 自分の人生を痴鈍な考えでプレデターに奪われた怒りもあっただろう。だがそのチートプログラムで犠牲になった者は彼だけではない。

 ベレッタ・モデル92の全15発に込めたヘッドショットは、犠牲者全員への怒りの表れだった。


「人間とは、時に恐ろしい存在にもなり得るという事か。ゲームでは収まりきれない殺意というものが……」


 そんなルシファーの零す一言は、自身がアンドロイドである事への立場、そして己自身が無心に同等になろうとしていた人間への軽蔑を表したものだった。


「人間、根っこが真っ白な奴なんかいねーよ。欲とか夢に現を抜かしてる内に真っ黒になる奴もここらに沢山いるんだ。オセロの駒みたいに思えば分かりやすいだろ」

「お前も、それらと同等と認めているのか」

「当たり前じゃん。お前に()()()呼ばわりされてるなら尚更。だが……」

「!? な、何を……!」


 キッドは倒れたままのルシファーの負傷した腕に、携帯用の医療機器から包帯を取り出し巻きつける。

 負傷部分には、機械人間らしくコードや回線が曝け出した所を包帯で隠すように覆われた。


「ほら、こうすりゃ俺と見た目は変わんない。アンドロイドも人間も関係ねぇ、成り上がりを夢見てるゲーム戦士だ」

「……………」


 これもキッドの粋な優しさか、それを無言に、無表情に心情を語るルシファーの手にはプレイギア。操作する仕草をすれば、鳴り響くキッドの着信音。


 □――――――――――――――――――――□

 ・『ルシファー』より、

 3件のPDF画像が転送されました。

 □――――――――――――――――――――□


「……?」


 ルシファーから送られたPDFを開いてみると、そこには染谷から逆ハッキングされた【プレデター】の設計図・並びにそれらを散開させる計画プランがキッドの元に転送された。これでプレデター散開の証拠の殆どが証明させられる事となった。


「お前には借りが出来た。これぐらいの事しか出来んが……これをWGCに持っていって、プレデター撲滅に役立ててくれ。俺とお前の決闘を汚す獣のデータなど、俺には必要ない……!」

「お前…………」


 キッドが粋な男ならば、ルシファーは義理堅き男。彼がトリガーズ面々に近づき、食事をした時もそうだった。


 ルシファーはアンドロイド、だが欲に溺れ血溜まりに沈む人間よりも根は純粋。かつ光に憧れを持つ渇望に満ちた男であった。そんな彼にキッドは好敵手ながらもより興味を惹かれる事となった。


「………なぁ、ルシファー。そんなに太陽の光を知りたいのなら、俺達トリガーズと一緒に来ないか? やっぱり俺には、お前を討つ気には――――」


「同情でもしているつもりか? キッド。ふざけた事を抜かすなッッ!!」


 ルシファーはキッドの差し伸べる手を平手で払い、満身創痍ながらも立ち上がり、彼の意を反する。


「言ったはずだ。この地底空間に頂点に立つゲーム戦士は二人も要らない。俺は決めた、誰の手も借りずに己自身の手で太陽を掴み取ってみせる。欲をむしり取り、力づくで成り上がろうとする人間の手など、俺には必要ない!!」


「それじゃ……また俺たちと戦う気か?」


「当然だ。俺自身のゲームを、決着の付かぬままにするのは俺の沽券に関わる。―――近いうちに必ず白黒付けてやる。お前等人間と、人間の下らん知恵で作られた戦闘アンドロイドと、どっちが格上か!! この俺が人間を超越することを証明してやる!!!」


 人間と、機械人形の間に創られた確執という名の壁。理解の先にはやはり、戦闘でしか分かち合えない生命の本能が存在するのか。


 無数の骸と、血腥い鉄の薫りが充満する地底空間を去りゆく黒い稲妻。ルシファーの背中から漂う悲壮感。そこには人間への憧れを拒絶された嘆きのようなものがあった。


 まさに堕落を象徴させる堕天使。そしてその翼を見守りつつも、またしてもそれに否定された火龍のカウボーイに、憤怒にも似た叫びが木霊した。





『―――――――ルシファァァァァァァァーーーーーッッッ!!!!!!!』





 彼らが和解し、共に手を組み合う時は来るのだろうか。

【プレデター】事件が時によって解決へと促そうとしている因果に導かれて、また新たな運命の引鉄が、トリガーズ達の前に引かれようとしていた……!!





『――――火野暁斗が始末してくれましたか。彼をそのまま地底に籠らせるのは惜しいですね……そろそろ解き放ちましょうか。―――――()()()()()()()へ』



 〘◇To be continued...◇〙


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