【♯45】殺る前に殺り返す、正当防衛だ!!(……何言ってんだ?)
――午前一時。
ハッキングされたA.I.M.Sのルームマッチの戦場をようやく脱出したキッドとルシファー。
キッドはその後直ぐにログアウトし、ハッキングを仕掛けた張本人である『ハッタリの染谷』に制裁を与えるべく、既にその作戦を実行に移していた。
「………はい、そうです。『ハッタリの染谷』が脱走して、俺ともう一人のプレイヤーを纏めて始末しようとしてました。……はい、証拠データも送付はしています。――――討伐は承認で宜しいのですね。ありがとう御座います。また完了次第連絡申し上げます、はい、失礼します」
自宅に戻ったキッド、何やらプレイギア片手に誰かと連絡・報告をしていたようで。丁度その着信も切断した頃。他のメンバー三人も集まっていた。(響波姉妹は就寝中)
「おいキッド、誰からの電話だ? さっきの」
ハリアーにも聞き覚えのない会話に、何者からの通話か気になってキッドに説明を求める。
「あぁ、皆には言ってなかったんだっけか。A.I.M.Sとかゲームワールドオンラインを管理している機関【WGC】の副管理者からの電話。―――俺が染谷を直々に始末していいかの承認貰いに来た」
「え………どういう事!?」
「話がごちゃごちゃしとるがな。始末とかWGCとか何の話やねんな!」
アリスもツッチーも、突然の人脈カミングアウトに戸惑いを隠せない。というより、我々読者一同もチンプンカンプンな状態で話は進められない。説明して貰いましょうかキッドさん?
「そんな複雑な話じゃないよ。――WGCの現副管理者で、地底空間のB7層の『霊鳥殿』に住んでる鳳凰堂孔雀って娘が、俺に治安維持の為にハッカーや犯罪者プレイヤーを退治する【パニッシャープレイヤー】の資格をくれたんだよ」
「「「【パニッシャープレイヤー】???」」」
――それは、ゲームが世界を動かすこの近未来に特例として認められたプレイヤーのみ与えられる上級資格の事。
パニッシャープレイヤーは、ゲームを使った犯罪や殺人まで発展させた者に制裁を与える為に設けられた謂わば“退治・仕置人”のような存在。
例えば、人間の人生と名誉を喰らう【プレデター】の討伐もパニッシャープレイヤーの管理の元で討伐が行われる。
キッドは3年前にプレデターによる襲撃にあってから、その復讐にと自ら志願してパニッシャープレイヤー資格を取得。そこから配信プレイを通じて、プレデター討伐に野心を燃やしていたのだった。
そして今回の件、『ハッタリの染谷』によるキッドとルシファーの暗殺。並びに過去何件ものハッキングによるサイバーテロと、金銭強奪・暗殺を企てた前科持ちのハッカーに与える制裁は、お仕置き程度では済まなかった。
「アイツのやったことは、WGCにも大きな被害があったらしくてな。それと俺とルシファーの暗殺も重なって、鳳凰堂から討伐承認が下ったって訳。―――――場合によっては殺してもいいんだとさ」
「殺………何ぃ!?」
「貴方、本気で言ってるの!?」
WGCが直々にキッドに殺人許可を入れた事に正気の沙汰では無いと感じたハリアーとアリス。だがそれよりも、キッドがそれを喜んで引き受けていることに、仲間全員が驚愕した。
「パニッシャープレイヤーには『殺人許可証』の役割も果たすから、言っとくけど、他のパニッシャープレイヤーも、危険思考持った奴とかを被害広げる前に殺してる話を良く聞くぜ。中には不殺を貫く人もいるけど、そこは半々だな」
超次元ゲーム時代において、ゲームによって戦意が高揚し、過剰な殺意に駆られて乱心を起こし、事件に発展するケースが非常に多い。
故に暴走によって改心不可と判断するや否や、頭を冷やす前に風穴を開けられ、三途の川を渡る愚か者が多いとか、そうでないとか。裏の事情は掘り下げる程にフィルター規制ものだ。
「でも……あたしは嫌よ! キッドが人殺しするなんて!!」
「復讐つっても限度があるだろ!!」
「――――でもお前らだって、プレデターぶっ殺してただろ? それと地上に出てから一人や二人、心底殺してやりたい奴くらい居ると思うけど」
「「うっ………」」
ここは『違う!』と、即答で否定したかったハリアーとアリス。しかし実際に恩人や親友を目の前で殺された恨みもある故にどうしても言い返せなかった。
ましてや地上の方が無情で、人情をそっちのけにしてる環境下でストレスを抱えない者など、地底地上問わず何処にも居ない。
そんな不安に駆られる空間に、ここにも一人冷静にパソコンを開いて、ハッカーの現在地特定をするツッチーが彼らに物申した。
「………なぁ二人共、キッドはんが血も涙もない殺人鬼になるんじゃないか思うとるやろが、それは無いとワテは思うで。こんな真摯になって地底を守ろうとしてる男が、感情に振り回されて皆殺しにする人間に見えるか?」
「……有り得ないよな」
「寧ろ気持ち悪いくらいお人好しなユーモアバカに限って……ねぇ」
(どーゆー意味じゃ)
ガッシリと仲間の心情を見極め、先見の明を放つツッチーの頼もしさ。そう言われてみればと混乱していたハリアーとアリスの感情も、その一言で落ち着くこの凄さ。
「要は殺意の感情に流されなきゃ大丈夫や。キッドはんも殺害指令は諜報目的でやる事は分かってるやろし、ゲームで鬱憤全部晴らすの配信で言うてたやろ」
「殺るのは正当防衛の時って決めてんの。あとはWGCに身柄売り飛ばして報酬貰うだけ」
殺す云々よりも人身売買させる気ですか。
「……それも、一つの復讐なの……?」
「なんか釈然としねぇな……」
今ひとつ納得しきれていない二人。それと対象にキッドは、自部屋の物置の奥からアタッシュケースを取り出す。
A.I.M.Sとは全く異なる実銃。ベレッタ・モデル92と実弾を懐にしまい、ツッチーが詮索完了したハッカーの現在地をコピーした紙切れマップを手に漆黒の地底へ赴く。
「――――じゃ、なるべく血で服が汚れない程度で帰るわ☆」
「「…………………すッッッッッッげぇ心配」」
〘◇To be continued...◇〙
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!
更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!
A.I.M.Sで登場させたい実物の名銃も、感想欄で募集します! 次回も宜しく!!




