【♯42】人の上に立つ輩に、殆どがロクな奴はいない。
―――エレメント◇トリガーズ・キッドがリベンジに燃える中、その好敵手であるルシファーは再びB5層の自分の居場所に戻っていた。
……とは言っても、キッドのような自宅があるわけでもなし。飯も政治から配給される残飯のようなものが送られるだけ。
地底の更に深い地層に構えたここは、まさに闇だけが支配される虚無の世界観。
暗がりの天井と同化した鍾乳洞の地面。誰かが造ったのか分からぬまま地底の湿気に覆われて、廃墟と化した瓦礫。黒と灰色が混ざり合うモノクロトーンの空間にルシファーは数十年間も生きてきた。
今更嘆く気にもならない、発狂するどころかこれが普通と頭に刻み込まれた……だからこそ、手にしたい光が彼の冷徹な頭脳を狂わせる。
「太陽は――――何処だ………」
闇の中、何もない地底の層に佇み、黄昏る黒い稲妻・ルシファー。彼の渇望にも似た黒い眼から、光指す時は来るのだろうか。
――――RRRRR……
すると、突如B5層から流れる着信音。ルシファーの万能スマホ『プレイギア』から流れる単調なアラームが黄昏時を妨げる。
……何故に地下250mも相当するB5層が着信圏内に入るのかという野暮なツッコミは置いといて。
孤高のプレイヤーであるルシファーに対して、一体誰からの着信か。彼は躊躇わずに通話に出た。
「………俺だ」
『あぁ〜? 何が“俺だ”だぁ?! トリガーズのカス共を仕留め損ねた奴が気取る権利があると思ってるのかのぼせんなバーカ!』
通話早々から悪口雑言の数々、しかも聞くからに若々しい声に余って憎たらしさ百倍の嫌味が飛び出るこの始末。
―――そう、ルシファーと通話してる男こそ、ツッチーが予想していたトリガーズの始末しようと企む張本人『ハッタリの染谷』であった。
「……済まない、染谷。だが奴らの顔は割れた。次こそは必ず―――」
『甘いこと言ってんじゃねぇよ。分かってんだろ? 一度殺せつった奴を逃して、やり直しもコンティニューも効かないって事くらい、引きこもりの頭に叩き込んでるだろうが』
「分かっている。分かってはいるのだが……」
『だが? 何だよ、この俺に口答えか?』
「……あの男、キッドやその同胞は、飢えた俺を警戒なく飯を施した。一瞬だけの恩とはいえ、奴らと不意打ちをしようとは俺には……」
『てめぇは口を開けば言い訳ばっかか!? A.I.M.Sの時の冷酷なプレイは飾りかよ、太陽が見てぇつーから俺と契約交わしてる癖して生意気なんだよお前!』
何処ぞの反抗期か腐ったボンボンか。染谷の生い立ちは知らずとも聞きたくは無いが、それなりに性格の悪い育ち方をされたようで。……でなかったらハッキングも趣味でしないだろうが。
「………申し訳ない。この俺としたことが、出過ぎた真似をした」
『そうそう! それくらい素直で丁度良いんでちゅよ〜☆ 俺の操り人形ちゃんよ!』
一体何の因果でこの染谷とルシファーが結託する事になったのか、これまた謎に包まれてはいるが、明らかにルシファーは、この男に弱みを漬け込まれたに違いない。
“太陽の光”を見たいばかりに、良からぬ者と上下関係を作ってしまった黒い稲妻。
人格が形成出来ていない者が、人の上に立つ存在になる時ほど面倒くさく、ストレスが大いに溜まる事は社会人誰もが存じてる事と思われますが、ルシファーはそうも言ってられない。
何やら彼自身にも、どうしても譲れない意地があるようで。その為に彼は自らキッドをルームマッチの決闘を誘い込み、一対一の勝負をしようと思ったのだろう。
ルシファーもまた、誇り高きゲーム戦士なのか……!?
〘◇Now Lording◇〙
―――午前0時。
この時間帯でも、A.I.M.Sは夜が本番のプレイヤー達を大歓迎するかのようにオンライン勢でごった返している。
しかし今回のゲームは、それらとは全く関係ないプライベートな戦いとなる。
ルシファーの招待によって、この小説初のカスタム型ルールによるA.I.M.Sの『ルールマッチ』での戦いとなった。
そのフィールドは、まるで現実世界の時系列とリンクするかのように、夜の帳に包み込まれた漆黒のステージ。
そして世界観は、紛争に巻き込まれたとある廃墟地。爆撃によって大破された建物は弾丸の遮蔽物に代わり、草木も生えない不毛の大地を踏みしめて、二人のゲーム戦士は死闘を繰り広げる事だろう。
―――そんなステージを選んだのは、他ならぬ黒い稲妻・ルシファー。
彼が対戦相手への煽り文句も込めた【偽善者】という名のパスワードを招待状に、一人のゲーム戦士をこのルームに招き入れた。
「………今読んでる読者の世相考えろよ、皮肉に見えるだろうが」
等とルームのステージ風景にボヤくエネミー、もとい主役のご登場。エレメント◇トリガーズ・キッドだ。
「―――――待っていたぞ、キッド!!」
威圧もあり、ドスの効いた声にハッとするキッド。殺気とは違う飢えた闘争心を気配に、背後を向けた彼の先に、ルシファーが立っていた。
「……野郎、何時からそこにいたよ? 足音も立てねぇで、扁平足か?」
「黙れ! お前のようなお人好しが、この俺に飯を食わせて、情けを見せた事を今に後悔させてやる!!」
「お人好しぃ!? それが中トロ5切れも喰った奴のセリフか!!」
「中トロはお前が催促したんだろうが、どっちかと言うと俺はブリとかハマチの刺し身のが好きだ!!」
「だったらそう言えば良かったじゃんかよ!」
「状況的に言える立場か!?」
………あのー、お二方? 刺身討論してるとこ申し訳ありませんが……そんな悠長な事を言ってる暇はありませんよ!!
「「うるさい、今大事な話を―――――」」
語り部の注意喚起をも遮ろうとした二人は、即座に異変に察知した。
不毛な廃墟地に、明らかに無数の気配と、ザッザッと駆け足にも似た足音が彼等の耳に届いた。
カッ――――!
そして突如、二人を照らす大型のスポットライトがライトアップされた。これは即ち、キッドとルシファーがターゲットに絞られた事を意味する―――!!
「―――やべぇ、罠だ!!!」
「…………!!」
――――刹那に、彼等の周りに爆破と射撃の俄か雨。
一点のターゲットに一斉掃射するアンドロイド兵の総軍。
神聖なる二人の決闘を汚した不届きな奴。誰だと言わずとも読者の皆様にはもう検討が付いてるだろう。
『オラァ死ね死ね死ね死ねェェェェ!!!! 地底のゴミが良い気になってんじゃねーぞぉ〜〜敗北者があああああああああああああッッッ』
青二才ハッカー『ハッタリの染谷』狂乱!! 彼の卑劣な奇襲に二人はどう立ち向かうのか!?
〘◇To be continued...◇〙
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




