【♯36】声出して応援したい気持ちはゲーム実況も同じ。
――午後八時。
キッドが経営するゲーム実況配信チャンネル『ELEMENT◇TRIGGER‘S』のライブ動画が、そのファン達のスマートフォン、或いはパソコンの通知によって知らされた。
これを目にしたA.I.M.S好き、トリガーズの魅せプレイに興味を持った視聴者は、やり途中のゲームもテレビも課題もそっちのけで速攻動画サイトを開いては、お目当てのゲーム実況を視聴しにやってくる。
……しかし、今回のキッド達によるA.I.M.S実況は一味違うものとなっていた。それが―――!
『動画を御覧の皆様ー! こーんにちはーー!!』
『時間ズレてるわよ天音! もう夜の八時!』
『あ、ヤバ。こーんばんはーー!!』
〘チアガール!?〙
〘かわいい〙
〘もしかしてこの前キッドを助けてた娘かな〙
〘天然で草〙
〘顔付き似てるから双子か?〙
〘似てない双子ちゃん〙
紅白のチアガール衣装で着飾って、派手にも四大精霊のデザインをバックに視聴者に挨拶する響波姉妹の天音と琴音。
明るくもパッションな二人の第一印象に、視聴者達は一気に引き込まれていった。
『今日はキッドさんとハリアーさんとのデュオの実況を行うんですが、今回からあたし達トリガーズの公式チアガール二人で、チームの応援をしていきまーす!』
『皆さんも実況を観ながら一緒に応援してくださいねー!』
〘はーい〙
〘FPSで応援とか、うるさくないのかな〙
〘ちょっと恥ずかしいw〙
〘かわいいから許そう〙
視聴者の反応としては、ゲーム実況の声援エールと聞かされてもピンと来なかった。
何しろ数あるゲーム実況では初、更には五感の全てを研ぎ澄ますFPSゲームでの応援は人の迷惑顧みずプレイに支障が出るんじゃないのか、やってる我々がキッド達に迷惑を掛けるんじゃないのかと不安もあったからだ。
一部の困惑は避けられない状況で、お父さん本人からご説明が入ってきた。
「誰がお父さんじゃ。どうもご無沙汰してますキッドです〜。ごめんなさいね急に配信やって、イレギュラーな入りになっちゃいましたけども」
〘保護者来たよw〙
〘キッドさんこんちゃーす〙
「皆さんに改めてご紹介します。この度見習いなんですけど、トリガーズに加わることになりました双子ちゃんで、『天ちゃん』と『琴ちゃん』と言います。この前のプレデターの件で―――」
と、前回のカルテット戦でキッドが再びプレデターに撃破されそうになった所を響波姉妹に助けられた縁から、トリガーズで面倒を見る事になった件。そして彼女達もキッド達の頑張りに応えるべく、チームの貢献に全力を尽くそうと決めた。
それがゲーム実況初、生配信・同時進行応援チア! 響波姉妹の元気なエールが、トリガーズをどのように動かすのでしょうか。
「応援の合図は俺が指示して、天ちゃん琴ちゃんがはっちゃけさせます。なので遠慮しないでチャットで盛り上げたり、画面越しでエールをどんどん送ってください。宜しくお願いしまーす!」
〘はーい〙
〘画面とか大丈夫かな〙
〘多分サブ画面にするとか工夫するかも〙
トリガーズの動画を観てくれる視聴者は民度が非常に良く、マナーも守れてる方々ばかり。陰ながらも天音・琴音のエールを期待するコメントが彼方此方にスクロールされる中で、彼女達の緊張も解けていった。
では前座はこのくらいにして、いよいよ本戦と参りましょう。―――今回の舞台は嵐を呼ぶ無人島『ブルーウェーブアイランド』だ!
〘◇Now Lording◇〙
「…………流石にこれは予測出来なかったなぁ〜」
「100人一斉にパーチーにしては修羅場すぎらぁ」
キッドとハリアーの声からして明らかに震えてる様子。というのも、
―――ブルーウェーブアイランドの作物庫『ミル・ダブルドーム』に全プレイヤー集結!!
□――――――――――――――――――□
【A.I.M.S ミッション】
・ゲーム開始時に作物庫エリア
『ミル・ダブルドーム』に全プレイヤーを集めた。
これよりファイアウォールをエリア区域のみに
収縮させて、生き残りを賭けたゲームを行う。
・尚特殊ルールに則って武器のドロップ箇所を
5倍に増加させた。瞬発力と咄嗟の判断力で
勝利が決まる。心して戦いたまえ。
□――――――――――――――――――□
開始直後から大乱闘必須、約380㎡の中型土地に100人が絞り込まれただけでも大渋滞だというのに、それに武器を背負って戦えば火花どころか暴発もあり得る超スピード決着を目処にした特殊ルール。
これなら更新の回も長引かずに決着付い(咳払い)……キッド達の活躍も濃縮される事だろう。
「明らかに執筆事情絡んでるだろ」
「まぁダレるよりはマシだ。武器取る場所は決めとかないと」
通常のルールでは、巨大空母に乗ったプレイヤーが戦場になるフィールドをスカイダイビングで降り立って、好きなエリアへと降り立つというFPSならではゲームスタートなんですが。
今回は100人全員が既に地に立ち、ランダムな位置でスタンバイされての待機状態。スタートはアナウンスコールのカウントダウンによって始まる。
『―――ゲーム開始、十秒前』
さぁいよいよ臨戦態勢へ、鋭い眼の先にはアイテムボックス、或いは建物内に放置された武器と弾薬を誰よりも獲得する事に全てを注ぐプレイヤー達。出遅れれば……即撃破!!
『五秒前……3、2、1――――』
スタート!! さぁ一斉に駆け抜けていきます100人プレイヤー! アイテムボックスが近くにあるプレイヤー達は箱に喰らいつくか、殴ってでも武器を奪おうとする野蛮人とで既に乱闘状態、戦場のタイムバーゲンセールだ!
「よっしゃ武器いただきっ!」
ここは韋駄天のハリアー、数十名のプレイヤー達を軽く抜いて、一気にアサルトライフルとショットガンの二丁を獲得。更には挑発の発砲によって相手も思うように武器を取らせない。先手のムーブは天下一品のハリアーだ!
『ハリアー、こっちも取ったぞ! マグナムリボルバーとスナイパーライフル!』
「この狭い場所でスナイパーは分が悪くないか?」
『大丈夫、零距離射撃出来るから!』
「てか喧しいくらいハッチャケてんな」
現在『ミル・ダブルドーム』の連動する二つの建物内、その敷地では射撃音やらグレネードの爆破音がフィールド狭しと鳴り響く、この世で最も生々しいハーモニーだ!!
「オイ、キッド! この雑音で戦闘するのキツイわ! 姉妹の応援とやらを聞かせてくれ!!」
「おっ、天ちゃん琴ちゃんに助けを求める気になったかハリアー?」
「うるせぇのが嫌なだけだ! さっさとしろ!!」
「はいよ〜。天ちゃん琴ちゃん、応援頼むわ!!」
『はーい! 何時でも行けまーす!!』
『視聴者の皆さんも一緒に応援お願いしま〜す』
キッドの応援要請に、スタンバイしていた響波姉妹の初陣。配信画面ではゲーム画面の右端に小さく姉妹の姿が映されていた。――さぁ二人とも、思う存分踊って行きましょう!!
『―――――GO・FOR・IT! GO・FOR・IT!! OHーーーーーYEAHHHHHH!!!!』
若さ溢れる響波姉妹の豪快なエールが始まった! 更にバックグラウンドミュージックからは響き渡るドラム、トランペットと事前に録音したベース音に乗せて、二人が作った応援歌で過激に踊る!
♪チームの勝利の為に
太陽目指して行こう(トリガーズ!)
精霊の加護の元に突き進め
仲間と友の声が道しるべ♪
『GO!』
『GO!!』
『FOR!』
『FOR!!』
『IT!』
『IT!!』
『『LET'S GO、トリガーズ!!!』』
「良いじゃん、良いじゃん!」
(アイツら……!)
配信の画面で躍動する、雪白と薔薇紅の二輪の華。彼女達の熱いエールがキッドとハリアーの闘争心に火を点けて、視聴者の皆さんにもその熱意は伝わった!
〘すげええええええ〙
〘情熱溢れるエール!〙
〘パンツみえ〙
〘アバターだから大丈夫……?〙
〘下ばっか見んなお前らw〙
等と下心が垣間見えるコメントやら、二人だけのチアガールにも関わらず強烈な応援が心の髄まで響き渡り、称賛のコメントが飛び交うお祭り状態。
「……見直したぜあの姉妹。俺っちの心にガッシリ掴んで来てらぁ! その応援にちゃんと応えてやらなくちゃな!!」
その応援に対して、早速に効果を表したのは何とハリアーの方。四方八方に敵に狙われる修羅場状態に―――PASの力を解き放つ!
「思い切り暴れようぜシルフ! ――――今日の風はかなり荒れるぞ!!」
◇――――――――――――――――――――◇
・ハリアーのPAS『シルフ』確認。
◇――――――――――――――――――――◇
ハリアーのPASが、大混戦のカジュアルマッチに嵐を呼ぶのか!? 気になる続きはまた次回、本日のゲームレポート、報告完了!!
〘◇To be continued...◇〙
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




