【♯32】個性的なゲーム戦士達にはホント頭が上がりません。
――全国一億二千万のゲーム好きな皆様、ご機嫌いかがでしょうか!? Mr.Eでございますぅ!
……え、あんた誰?ですって。ほらこの小説の語りを担当してる者ですよ。クソ真面目な実況やらシリアスな感じに仕立ててますが、普段はこんな感じなんです。
格好のイメージはですね、目立たないモスグリーンの防弾チョッキにスカウターゴーグル、耳にインカム型マイクを掛けて、ホバークラフトでA.I.M.Sの実況やらエレメント◇トリガーズの様子を語ってる訳なのです。忍んでるのか派手なのか分かりませんが。
さて今回の『エレメント◇トリガーズ』は、シリアスから一転してバラエティに富んだ話を触ろうと思っております。
地上の者から忌み嫌われる地底空間の存在をゲームを通じて理解をしていき、魅せプレイで偏見を無くしていく事が目的のキッドさんの動画配信チャンネル『ELEMENT◇TRIGGER’S』。
A.I.M.Sのみならず、数多くのFPSゲームでその実力を発揮し、更新し続けて約三年。チャンネル登録数も120万人突破の人気実況者となっているキッド。最近では仲間との再会もあって、再び登録者数増加のブーストが掛かって脂が乗っている所。
しかし、彼も実況者のプライドを背負う者の一人であった。今回は、地底空間随一のゲーム実況者であるキッドの苦闘の一日を皆様と一緒にご覧頂きましょう!
〘◇Now Lording◇〙
―――午前七時半。地底空間・地底湖付近、白い斜面の屋根がチャームポイントのキッドの自宅。
連日のA.I.M.S実況プレイに追われているキッドは、毎日ゲームを終えると動画の編集と更新で体力を削がれ、終わった頃には朽ち果てるが如くベッドに吸い込まれて一分後には熟睡する程。そんな彼に再び目覚めの朝が来た。
「…………ぅ、ん〜〜ぁぁあああ、良く寝たっ」
A.I.M.Sの激闘に毎回体力を空にされる彼だが、この地底では人々のざわつきもなく、太陽の代わりに地底湖の頭上にある照明気分の“人工太陽”が起こしてくれる。
一見不健康な目覚めに思われるかもしれないが、数十年ここで過ごしてきたキッドにとっては、都会よりも千倍は安眠できる我が家である。
寝室の隣のドアがリビングになっているが、当然朝ご飯を用意する母上らしき人は無し。
一人暮らしの辛さが目に染みる風景ですが……ここ最近では自宅に居るのはキッド一人だけでは無くなりました。
「あの二人、また寝坊してるな。朝飯当番やるつったのは天ちゃんなのに!」
“あの二人”とは、以前キッドが自宅に居候させる事に決めた響波姉妹の双子ちゃん。二階の個室をその二人の私室に使わせてはいるが、ちゃんと家事分担してキッドのお手伝いをする条件付きとの事。
今日は響波姉妹の天音が朝ご飯当番だが、寝坊癖のある彼女にキッドも立腹。二階に駆け上がって私室にノックして起こそうとする。
「天ちゃん! 琴ちゃん! もう朝だぞ、自分で決めた当番はちゃんとやりなさい!!」
この言い方じゃまるでお父さんみたい! 痺れを切らせたキッドは無断で部屋のドアを開けた途端。
「ん、ふぅ………ちゅっ♡」
「ぁ……はぁぁ、気持ちぃ……!」
「ぁむっ☆」
「やぁんっ、そこはらめぇえええ」
二人とも夢見心地。それ故に甘過ぎるというか百合しき華が咲き誇るというか(咳払い)。これは余りにも際どい描写なので、読者の皆様のご想像にお任せします。
「…………そっとしとこ。『百合の間に男を入れた奴は死刑』だってWi◯iに書いてあったし」
※書いてあるわけありません。
〘◇Now Lording◇〙
―――午前八時。仕方なくキッドはリビングで手短にトーストにリンゴジャムを塗りたくり、朝のお供にブラックコーヒーを淹れて自分の世界に入り込む。
近未来では地上波のテレビを観る機会が殆ど無くなり、代わりにスマートフォンやパソコンのネット記事で情報を流し込むのが日課となっている。信憑性は読む方の知識次第だ。
「……おっ、『シャッフルオールスターズ』頑張ってるねぇ。【カードゲーム『アメイジング』地区大会、関西の七つ星・今宵も切り札が輝く】ってか。やるじゃん!」
キッドのスマホのネット記事では、話題のゲームチームの特集が載っていた。
今トレンドなのは、大阪・浪速区にて絶大な人気を誇っている『シャッフルオールスターズ』という、オールマイティなゲームでランクトップを掻払う強豪チーム。
なんとこのチームの大半は現役高校生。しかしかつて地球最大規模のVRMMO【ゲームワールドオンライン】の危機を二度も救った形跡から、大阪のみならず全国、キッドのような地底空間の者にも名を知らしめる程のチームとなったのだ。
「カードゲームも良いけど、いつかA.I.M.Sもやって欲しいな。プレデターとか細切れにしてくれるかも」
等と冗談言ってニヤケ笑いしているが、内心は正々堂々とゲームで闘いたい気持ちで一杯のキッド。だが彼の視野に置いているゲーム戦士は他にもいた。
「芸人ゲーマーに、VTuberに、お嬢様系ゲーム戦士だったり、色々気になる奴が居るけど、あのランクマッチで一度も戦えてないんだよなぁ。やっぱプレデター出てから途中退場するケース増えてるからかな」
キッドは椅子に寄りかかりながら独り言、ボヤいて真っ白な天井を眺める。
彼は本来、地底から地上に進出してきた未来あるプロゲーマーの一人であった。だがプレデターの捕食によって尽く夢は崩され、一度は地底に堕ちて、再び這い上がろうとする不屈の男。
そして最近になってキッドは、再び強豪プレイヤー・ゲーム戦士と真っ向勝負したい気持ちへと再燃したという。
――『ルシファー』と名乗る男へのリベンジ、そしてその野望を阻むプレデターの根絶を目指す事。それが火野暁斗・キッドの野望だ。
『いやァァァァまた寝坊しちゃったーーー!!!』
『天音が夜遅くまでライブ配信観てるからぁ! ……私何で身体こんなに濡れてるの?』
「やっと起きたか、あんにゃろめ!」
突如二階からドタドタと喧しい音。例の響波姉妹がようやく眼が覚めて、慌ただしい様子で階段を駆け下りる様子が伺えた。
「キッドさんゴメンなさああああいいい!!」
「おはようございます。すみません、天音がまたドジしちゃって……」
「おはよ。今度から早めに寝るように。二人の好きな紅茶淹れるから少し落ち着きなさい」
流石はトリガーズのキャプテン。頭ごなしに叱るのではなく、先ずは落ち着かせる事に専念させる。これには響波姉妹も申し訳無い気持ちはありつつも、優しさは十分に受け止められたようだ。
「ご飯食い終わったら、俺とA.I.M.Sに転送な。天ちゃんと琴ちゃんのエイムトレーニングだ」
「わぁ……! キッドさんがゲーム教えてくれるなんて!」
「これは絶好のチャンスですわ!」
未だトリガーズの見習いの見習い扱いの響波姉妹。今日はキッドも羽休めならぬ、“弾休め”の気分か、トレーニングに付き合うつもりらしい。はてさて、どうなります事やら! ――本日の戦況リポート、報告完了!!
〘◇To be continued...◇〙
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




