【♯27】ロボソルジャーVSトリガーズ、戦術は人工知能を超越する。
――TIPS――
【A.I.M.S ランクマッチ基本ルール⑥】
・フィールド内では、戦闘の長期化を防ぐ対策として『ファイアウォール』という高熱の炎壁を発生させて、フィールドの規模縮小を促す。
縮小時間は最大5回。初回は1分半の警告までの猶予時間を与え、その後はゲーム状況に応じた区間まで円型に縮小される。
またファイアウォールに身体に触れた一秒後にHPを5ずつダメージを与え、ラウンド毎にダメージ数値は倍加する為、ゲームが進めば進むほど危険なものとなる。
『―――報告、ファイアウォール収縮中。直ちに安全地帯へ移動せよ』
ランクマッチ・二回目のファイアウォール縮小。
ここまで来ると、安全地帯の距離区間は半径2キロまで縮小され、炎壁のダメージも倍加されて1秒10ダメージも奪われる。
そんなんで死ぬのはやだぁ〜と無言ながらに思いつつも、プレイヤー達は安全地帯に向かう。現在生き残りは9部隊・33名。もう間もなく今回のランクマッチもクライマックスに差し掛かろうとしてるのですが………
50体の強化機体ファントムも、プレイヤー達の後を付いて、その首を狙おうとレーザーキャノン『フォトンストリーム』を掲げる……!!
〘◇Now Lording◇〙
「……で、お前が見つけたファントム攻略法って何だ?」
敵プレイヤーやファントムが安全地帯へ近づいているにも関わらず、キッド達はフィールドの中央高台にある『フォーリング・ラボ』にて待機。序にファントム討伐の為の作戦会議を行っていた。
「先ず俺が皆に言えることは、最新型ファントムの特徴として、奴らの視線に入ったプレイヤーを過剰に反応する事。その標的がくたばるまで執拗に追い回し、レーザーキャノンで処理。って感じ」
無機質なアンドロイドだからこそ可能な、半永久的行動規範に従い、任務に全うする機兵の特徴。
それを打破する方法は唯一つ。人工知能の常識をも覆す我々プレイヤーの小賢しい知恵のみ。
「面と向かって真っ向勝負……って訳にはいかねぇよな」
「無謀だ。レーザーキャノン相手に突っ込むとか死にに行くようなもんだぜ」
近・中距離戦が得意なハリアーは、特攻戦法を提示するがキッドに一蹴される。ここで彼が答え合わせ。
「この作戦で使うプレイヤースキルは、アリスの【アクアミラー・トリック】だ」
「あたしの?」
ノーマルスキルに登録されている【アクアミラー・トリック】。これはアリスの水の力を利用して、彼女の姿を本物そっくりに創り出す“偽装分身”の技である。これに被弾したプレイヤーの位置を一瞬だけ公開することも出来る。
「そいつをファントムの囮にさせて、俺たちは弱点部位を見つけて討つぞ。今回の機体は弱点がバラバラに設定されてる!」
トリガーズの討伐作戦の内容はこうだ。
高台の研究所で待機する四人は、先にアリスがプレイヤースキル【アクアミラー・トリック】を発動させて、近辺のファントムのセンサーに反応させる。
偽装分身に惑わされたファントムの隙に、ハリアーのSMGとツッチーのショットガンで機体ごとの弱点を見つけ出し、そこでエイムの長けたアリスとキッドが弱点部位をヒットさせて討伐する戦法だ。
どちらも欠けては成り立たないマルチプレイ、チームワークが物を言う攻防戦。後は本題のファントム軍を待つのみ……!
「―――――来たぜ」
研究所から南、先程キッドが回避した『ターミナル』からなだれ込んで来たファントム軍、しかもキッドとニアミスしたあの五体だ。
「アリス、先に分身出しといて」
「オッケー」
◇――――――――――――――――――――◇
・ノーマルスキル【アクアミラー・トリック】発動
◇――――――――――――――――――――◇
アリスが指でパチンと鳴らせば、地面から湧き上がる水が忽ちに人の形へと変えて、固体となった水の塊からアリスの姿へと変えていった。
〘かわいい〙〘2倍かわいい〙〘かわいい〙〘かわいい〙〘かわいい〙〘スパチャ弾むんで一体下さい。本物の方を ¥20.000〙
「◯◯さん、スパチャ2万円ありがとうございます。アリスはあげませんけどね」
スパチャの返事も欠かさず、キッドや他のメンバーも高台の研究所前で迎撃準備を始める。
アリスは出した偽装分身を、遠隔操作でファントムにある程度近づけさせ、彼女もスナイパーライフル『ロングシューター』で構えの体制へ。
……おっと、ここでファントムの一体が偽装分身に気付いた。遠隔操作された分身のモンローウォークに色気付かれたか。んな事は無いでしょうが。
その反応が周囲のファントムにも通じ、群がるように偽装分身にターゲットを絞る。
「来たわね、ハリアーとツッチーの射程範囲まで寄せておいて……」
アリスの思念で、トリガーズの待機する研究所付近へ逃げ込み、五つのレーザービームから回避していく。本物の四人が待ち伏せてるにも気付かず、ただ偽装分身一点にレーザーを放射するファントム。
恋と標的には盲目か、いよいよハリアーとツッチーが高台左右で砲台代わりに武器を掃射!
[12][8][14][21][49]
先陣切るのはハリアー、小型のSMG『モーメンタル』を腰撃ちで、身体の一部一部を被弾させる。
そのうちに表記されたダメージエフェクト。バフの掛かった数値が続いたが、一部だけ50近いダメージを与えることに成功した。その部位とは。
「一番右端のファントムの弱点、右膝だぞー」
『了解!』
そして止めはアリス、ロングシューターの8倍スコープから狙い撃つ会心の一撃!
――――ダァァァァンッッ
[124]
〘ファントム・ノックダウン!〙
アリスの狙い澄ましたスナイプショット、クリティカルヒット!
弱点部位に100ダメージを与えることで大破するファントム、先ずは一機を撃破。
「左から二番目のファントム、右肩が弱点やでぇ」
『あいよぉ、ツッチー!』
ツッチーも拡散するショットガンで急所となった部位を見極め、キッドに指示。
キッドもバントラインスペシャルを構えて、一発で弱点を仕留めた。一撃必殺である。
確実なエイム力を約束するアタッカー、そして弱点を掴み取るオフェンスの二段攻撃に、蹂躙する筈のファントムは標的に大破される。
既に残されたファントムはあと一機。人間の可能性を前に科学技術が屈することはないのか!? ――――いや、それを判断するには尚早か。
「あっ、分身が!」
遂に逃げ回っていたアリスの偽装分身もレーザーによって消去された。標的を見失ったファントムが向けた視線には、キッド達四人に向けられた!
「ヤバい、見つかった!!」
同胞を大破されてファントムも怒りに狂ったか、背中のジェットパックを噴射させて、ジップラインも無しにキッド達目掛けてレーザーキャノンを構える。
そしてキッドも、ここまで来て姑息な手は使えないと判断したか、バントラインスペシャル片手に最後の賭けに出る。
「おいキッド、何する気だ!?」
「まさか、一発で弱点を撃ち抜く気や無いんか!?」
ファントムが上昇している内に、キッドはリボルバーに弾を手動でリロードさせ、ファントムへ射撃する部位を確実に狙えるように待ち伏せる。
(レーザーキャノンが撃てるタイミングから見て、瞬時に撃てる弾数は3発が限界だな。撃った弱点から最後の機体は胸か、腹部か、ドタマ辺りか……?)
既にキッド以外のメンバーは、研究所の隅で待機。キッドただ一人が、最後のファントム撃破に命を賭ける。これぞ魅せプ系実況者の矜持か!?
キッドの視線に、ファントムの頭部が現れ出た瞬間、先制一発!
[26]
頭部は弱点ではなかった。続いて、胸部に一発!
[19]
ニ発目も失敗! だがAIでターゲットロックされたキッドへ、ファントムのレーザーが飛ぶ!
――――ピィィィィィッッ
レーザーがキッドに右肩に掠ったがノーダメージ。その刹那に最後のトリガーを、ファントムの腹部に零距離放射!!
『―――――――FIRE!!!』
[145]
ドガァァァァァッッ!!!
バントラインの発射炎がファントムの機体に貫通し、ノックダウンによる爆風がキッドの身体を包み込む。
〘ファントム・ノックダウン!〙
エレメント◇トリガーズ、有言実行! 強化型ファントムに撃破されることなく、無数の機体を撃破していった!!
ファントム出現から撃破まで、劇的な瞬間に至る時間は僅か3秒に過ぎなかった。では、そのリプレイをもう一度読んで――――
「止めとけ、また字数が増えるだろうが」
失礼しました。
飛び交うチャット欄、歓喜の高速スクロール。時折送られるスパチャにキッドの返す暇すら与えない。この恍惚は戦った者のみが味わえる愉悦だ!
「おっ、これがレベル4の武器か!」
キッドは間近に爆破したファントムの残骸から、黄色に輝く武器の存在を確認した。
それはバントラインスペシャル同様、実際に存在する遠距離狙撃銃の一つ『バレットM82』という伝説武器であった。
「って事は、下にもレベル4のアイテムがあるって事か! よっしゃ、先にいただき!」
「あっコラ、ズルいぞ!!」
ファントム撃破に浮かれたか、ジップラインを使って降下しながら、大破したファントムからアイテムを取ろうとする。
その遥か遠方から、牙を剥かれている事も知らずに……!!
―――――バシュッ!!!
「ッッ!!?」
高台の研究所から飛び降りたその刹那、トレードマークの真っ赤なキャップが吹っ飛ばされ、何処からか飛び交ったスナイパー弾にヘッドショットされたキッド。
しかもその威力は、ボディシールドが完全充填されたにも関わらず一発破壊。それでも有り余る威力で体力を一気にゼロに持ち込み、我々の予想だにしない結果を招いた。
〘プレイヤー99(キッド)、ノックダウン!〙
〘!?〙〘!?〙〘!!?〙〘撃たれた〙〘!?〙〘!?〙〘!?〙〘えっ〙
「なっ……!?」
「嘘でしょ!? キッド!」
「どっから撃たれたん!?」
驚愕するトリガーズメンバー、更に視聴者達も驚く中で、響波姉妹だけはその狙撃者の実態をスクロールログで確認すれば、わなわなと怒りに震えた。
「天音、院長先生を喰らった【プレデター】が……!」
「よくも、キッドさんを……!!」
◇――――――――――――――――――――◇
・『b454541084』が
『KID』をノックダウン。
◇――――――――――――――――――――◇
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




