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【♯22】トリガーズの一番弟子は、双子の姉妹?

 ――ここは地底空間。地底湖の畔に右上に傾いた屋根が目印の一軒家。

 天井には尖った石灰色の鍾乳洞がシャンデリア代わりか。そんな鍾乳洞とリンクするように白い外観で一際目立つ家は、キッドの自宅であります。


「……誰だ? 今時分に客なんて珍しい」


 現在、地底空間の時刻は夜の10時。

 ハリアー達の三人は各々次のランクマッチの準備やら仕事の支度やらで一旦帰宅したばかり。何か忘れ物したわけでもなし、彼ら以外に自宅を知っていて交流できる人も居るわけじゃなし。


 仕方なくキッドは自部屋から玄関まで降りて、自動で付く電球色の照明に照らされながら客人を出迎える。


「はーい、何方様ですかー?」


 優しい口調で、扉を開けた先にキッドを待ち受けたのは―――高校生くらいの二人の少女であった。


「「はじめまして! 貴方が火野暁斗(ひのあきと)さんですか?」」


 二人は阿吽の呼吸で声を合わせて、“キッド”の本名である火野暁斗の名で挨拶をする。


「え? あぁ、俺が火野暁斗だけど。どうしたの、こんな夜遅くに綺麗なお嬢ちゃんが二人揃っちゃって!」


 キッドは基本的にはジェントルマンで名が通る男。女子二人に威圧したり、変な目で見たりするような事は絶対にせず、陽気な雰囲気で対応した。


 そして対する女子二人。キッドへの警戒心はなく、寧ろ出会えて光栄という尊敬の眼差しを向けながら、二人揃って自己紹介へ。


「あたし、響波天音(ひびきなみ あまね)!」

「私は響波琴音(ひびきなみ ことね)と申します」


 彼女達、響波姉妹は二人共同い年の15歳。魔法少女にもなれる青春真っ盛りなお年頃の女子。


 ――橙色のストレートヘア、それと金色のリボンカチューシャを付けたお転婆娘が“天音”。

 ――黒髪を三編みで下げて、その髪に銀色のリボンを付けたお淑やかな娘が“琴音”。


 似ても似つかない正反対の性格だが、何とこの姉妹は双子なんだそうな。


「それで天音ちゃんと琴音ちゃん、だったな。俺に何か御用かな?」


「「私達を、エレメント◇トリガーズのお弟子さんにしてください!!」」



「そーか、俺達の公認の御―――――弟子!!?」



 〘◇Now Lording◇〙


 ――響波姉妹は、キッドの自宅がある地底湖から数キロ離れた“旧都”の住民であった。


 旧都の人々は、エレメント◇トリガーズの活躍を配信動画を通じて全面的に応援をしてくれる味方であり、響波姉妹もそのライブ配信で四人が活躍している所を観て、弟子になろうと決意したらしい。


 おそらくキッドの自宅も、気のいい旧都の住民から教えてくれたのだろう。

 一大決心で姉妹自らがキッド本人の元へ出向き、承認してもらおうという行動力は大したものだが、問題はその弟子入りを受け入れてくれるかどうか。


 早速リビング部屋に招かれ、テーブルに座って個々面談に入った訳だが、即座にキッドの答えは出ていた。


「――――エレメント◇トリガーズの弟子入りは駄目! 俺達がやってんのは、エンジョイ勢の遊びとは違うの」


「どうしてぇ!? あたし達がキッドさんの自宅まで来て、こんなに頭下げて頼んでるのに!」

「天音、落ち着いて……」


 チームの弟子入りに断るキッドに対し、納得がいかないと憤る天音に、それを宥める琴音。確かに性格が対極を為すほどに益々似てませんね。



「……あのな、二人共俺らの生配信観てたから分かってるだろうけど。今のA.I.M.Sはランクはおろか、カジュアルマッチにもあの【プレデター】が出てるほど物騒な事になってる。

 そうでなくてもFPSは、ド素人だったり直ぐにパニクる人には向かないゲームだし、仮に参戦して【プレデター】に喰われたら俺らの責任になるの。


 俺たちに憧れてるから『はいそーですか』って認められる程、俺たちのチームは甘くありませんよっ!!」


 響波姉妹に対してオブラートに包みながら叱咤するキッド。これには天音も琴音もしゅんとなり、反省している様子だ。


「………ま、まぁせっかく家まで来たんだ。夜食になるけど、紅茶でも飲んできなよ」


 年頃の女の子を叱って、内心悪いと思ったのか。キッドはリビングの厨房で二人分のアールグレイティーを淹れ、数枚のクッキーも添えて二人に饗した。


「「いただきます……」」


 響波姉妹はしょげたまま、差し出された紅茶を呑む。すると、落ち込んでいた筈の二人の表情は忽ち笑顔に戻っていく。


「「わぁ、美味しい!」」


「あら、本当?」


「えぇ! こんなに香りが良くて、フレーバーの効いた紅茶呑んだの私初めてですわ! ねぇ天音?」

「ホントに! 流石キッドさんはレディの(もてな)し方までも神ってるわぁ〜!」


 キッドとしては粗茶のつもりで淹れたのだが、姉妹にとってはこの上なく舌が合うようで。二人共ご満悦の様子にキッドも上機嫌になっていく。


「そ、そうか? じゃ、もう一杯淹れちゃおか! 紳士淑女、紅茶呑めば皆兄妹!!」



 ――――数十分後。


「………なぁ、もう15杯目だけど二人共大丈夫か?」

「「紅茶ラブですのでぇ♡」」


 節分じゃあるまいし、年の数まで紅茶を呑むほどアールグレイを気に入った響波姉妹。

 お腹たっぷんになるまで呑んでも切りがないので、キッドはリビングテーブルに座って本題に持ち込んだ。


「さて、二人がこうして俺の家まで来て弟子入りを頼み込んだって事は、相当俺たちを頼りにして成し遂げて欲しい事があったからなんだろ? 弟子には出来ないけど、相談には乗るよ」


 それを聞いた響波姉妹、紅茶のカフェインを抜け出して急にシャンとなり、今度はキッドに懇願した。


「キッドさん、【プレデター】の件でどうしてもぶっ倒して欲しい奴がいるの!」

「私達を育ててくれた、孤児院の院長先生の仇を取りたいんです!」


「孤児院、って事は二人に両親は……」


「物心が付く前から、あたし達にお父さんとお母さんと呼べる人が居ないの」

「私達が赤ん坊の時から15歳になるまで旧都の孤児院で暮らしていました。私達が孤児院を出た後に施設が経営難で資金に困っていた所を、【プレデター】を使うプレイヤーに漬け込まれて……」


 地底空間に住む孤児は、地上よりも4割増しの数で増加していた。

 その主な原因は言わずもがな、追放区域故に親にも会えず、或いは別れ別れになってそれっきりの子供達が後を立たなかったからである。


 そして響波姉妹もその孤児の一組。何処に住んでたか、両親は何処に居るのかも全く知らないまま、地底空間の孤児院で15年間生活を共にしたのだった。


「【プレデター】に襲われた院長先生は、記憶も財産も無くなって腑抜け状態になったまま精神病院に運ばれたわ」

「その煽りで、孤児院が閉鎖されてるのも知らないまま……!」


 姉妹の瞳には涙、そして次第には嗚咽によって声を詰まらせる程にその惨状を物語る。


「…………………」



 またしても、地底空間に【プレデター】の犠牲者が。憤る感情を抑え込み、真摯に彼女達の涙を受け止めるキッドの瞳に、火龍の魂が目覚め始めていた――――!


小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!


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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!

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