【♯21】完全敗北は、最強への第一歩!
今思えば、ルシファーとエレメント◇トリガーズが出会った時点で、戦いの結末は確定していたようなものであった。―――それは何故か?
「……あんな野郎、初めてだったぜ」
「4対1で惨敗だったもんな」
「あ~ん、まだ電流の痺れが取れてない感じぃ」
「全然歯が立たんかったわ……」
口惜しい無念の意が溢れるのは、A.I.M.Sの電脳空間からログアウトしたキッド、ハリアー、アリス、ツッチー。
―――即ちこのランクマッチにエレメント◇トリガーズ、堕天使・ルシファーに完膚なきまでに叩き潰された!
四人編成のモードに、たった一人のプレイヤーによって全滅させられた。最も屈辱的な敗北であった!!
〘◇Now Lording◇〙
さて、このチームの敗北はどのような結末で終えたのか。
前回ではルシファーの圧倒的パワーと瞬発力を前にして、手も足も出ないと判断したチームが一斉にして逃亡を図った訳ですが……
◇――――――――――――――――――――◇
・パッシブスキル【堕天使の翼】発動
◇――――――――――――――――――――◇
本日初お披露目、プレイヤーが自発的に起動せずに条件を満たす事で、自動的に発動される潜在能力型スキル『パッシブスキル』を発動させていたルシファー。
ルシファーの背中に黒い大翼を生やし、十秒間だけ低空飛行、或いは垂直飛行を可能にさせる高い機動力を持ったスキル【堕天使の翼】。
これにより逃走したエレメント◇トリガーズを垂直飛行で追跡し、追い付いた訳であります。
『お前達が怖気付いて逃げた所で、俺の標的が変わるとは限らん。だが背を向けられたからには今度は確実に殺す』
堕天使ルシファーの据わった眼が、チーム全員に凄まじいプレッシャーを与えております。
死神の鎌が首筋に構えられたような、絶命寸前の心境にも似た絶望感。
だがこの絶体絶命の状況下に、やはりあの男が。このまま無様に終わらせないと最後の悪足掻きに入る!
「PAS、発動!!」
◇――――――――――――――――――――◇
・キッドのPAS『サラマンダー』確認。
◇――――――――――――――――――――◇
――招来せよ、我が魂! 炎滾る赤のパーソナルカラーに身を覆ったキッドが、AR片手に負けじとルシファーに高圧なガンを飛ばす。火龍に睨まれた堕天使か!?
(この輝きは……!)
やはり堕天使相手にも、サラマンダーの迫力に圧されてしまうのか。
……いや違う、ルシファーの黒眼の先に潤んだ瞳が。これはキッドのPASに照らされた光を求める好奇の瞳だ!
「お前も、太陽の輝きを求めているのか」
「……あぁ? 何のことだよ」
臨戦態勢に入っているキッドは、突拍子もないルシファーの問いに気を抜かされる。
「俺には、光というものを知らない。闇だけが俺の居場所だと思い込んでいたが……人工物で照らすだけの光と、太陽の光とはどう違うのだ。
お前が持つその輝きは、太陽と同類なのか……?」
「………お前、引きこもりの厨ニか? ロクに外に出てねぇから太陽恋しがって――――」
と、誂おうとしたキッドだがここは思い留まり、あることに気付いた。
「ルシファー、お前まさか地底空間の……!?」
「……お前達と一緒にするな。俺は生まれてこの方―――太陽というものを一度も見たことが無い!!」
ズガァァァァアアアアアアアン!!!!
「「!!!?」」
◇――――――――――――――――――――◇
・アルティマスキル【堕天使の雷】発動
◇――――――――――――――――――――◇
キッド達の上空に降り注いだ青天の霹靂。ルシファーが繰り出したアルティマスキル【堕天使の雷】に複数の稲妻が彼らの頭上に降り注ぎ、チーム全体に衝撃が起こった!
◇――――――――――――――――――――◇
・ハリアー、アリス、ツッチー、ノックダウン!
◇――――――――――――――――――――◇
「なん、だよ畜生……!!」
「とんだとばっちりじゃないのよ……!」
「ホンマ殺生やな……!」
最早ルシファーの眼に映るのはキッドのみ。他の三人など眼中に無し。
サラマンダーの炎の波動が好奇を呼び、深淵の闇に溺れた堕天使が光を求めるように、エクスタシーに駆り立てております!!
「これで俺を討てるのはお前だけだ、キッド。その太陽の如し輝きをもっと魅せてみろ!」
「………酔狂だなお前も。何だろうな、敵ながらお前って奴がなんとなく気に入っちま―――」
「言うな。俺以外の戦士は全員が敵だ。それだけは決して変えることが出来ない」
「そいつぁ……残念だ!!!」
―――ドガガガガガガッッッ
キッドはルシファーに興味を持ったのだろうか。
堕天使に対する好奇、太陽と見まごう炎の魂の輝きに対する好奇、それら全てを拒絶されるA.I.M.Sの銃撃戦。
ギュイイイイイイイイイイイッッッ
ARのキッドに対して、エネルギー光弾を放つLMGのルシファー。弾丸の雨に対抗するは流星の光か。
岩の山で弾をかわす壁代わりに、射撃しては回避するその繰り返し。ハイテンポな連射とハイブリッドの機械音が奏でるユニゾンか!?
だが、弾丸より大型のエネルギー光弾の被弾率は伊達じゃない。近距離で撃ち合った為にかなり被弾したキッド。最早PASスキルを放つのは今しかない。
(ルシファーが近付いた瞬間、その時が俺のラストアタックだ……!!)
岩山の上に登って、ルシファーがそれを追うように近づいてきた所で……解き放つ、サラマンダー印のPASスキル!!
◇――――――――――――――――――――◇
・PASアルティマスキル
【火龍大炎柱】発動
◇――――――――――――――――――――◇
「くらえぇぇぇえええええ!!!!」
突如、岩山の地面から湧き出した巨大な炎柱! それをルシファーが近付いた所を見計らってのカウンターアタック、これが当たらなければ……
「――――ッッ!!?」
……何という事か。巨大炎柱よりも遥か上、パッシブスキル【堕天使の翼】で飛翼回避したルシファーにPASスキルを破られた!!
「俺は敗者には興味は無い。……だが、お前だけは別だ。A.I.M.Sの頂点を目指し、俺にその太陽の魂を魅せに来い。待っているぞキッド―――!」
「……お前に逢うだけに地獄に行くのは俺は嫌だぜ? だが、この借りは必ず返す。再戦の約束はちゃんと覚えとけよ、ルシファーッッ!!」
――キッドの頭上に注いだ流れ星一発。
LMGのエネルギー光弾が彼に被弾した瞬間、キッドを含めたノックダウン中の三人全員が、墓標として戦利品を収めた『デスボックス』が置かれ、四人全員が撃破離脱された。
◇――――――――――――――――――――◇
・キッド ノックダウン!
・キッド ハリアー アリス ツッチー 撃破!!
◇――――――――――――――――――――◇
エレメント◇トリガーズ、ルシファーとの激闘に一敗地に塗れる。
〘◇Now Lording◇〙
……というわけで、ランクマッチに敗れたチーム一同。
一旦体制を立て直すべく、A.I.M.Sをログアウトした四人は、直様対策に出るためにキッド以外の三人は火野宅から出ていった。
あとに残されたのはキッド一人。パソコンとGWギアが置かれた机、そしてゲーミングチェアに寄りかかりながら思いに耽る。
(……ただ妙なんだよな、あんなに強かったルシファーがどうして、戦ってても奴のPASの波動が感じなかったんだろう……?)
その謎も、次なる対峙にて分かる時が来るのでしょうか。また次回のA.I.M.Sに備えるべく、キッド達は各々の準備に取り掛かろうとしたその時。
―――ピンポ~ン
「……なんだ?」
――火野宅に意外な訪問者来たる。
その出会いはエレメント◇トリガーズにどのような縁を生むのでしょうか……?
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




