【♯20】黒い翼と稲妻のヤバい奴。でもチーターじゃな〜い!!
ブルーウェーブアイランドの作物庫『ミル・ダブルドーム』に突如現れた黒スーツの片眼野郎!
――奴の名は【ルシファー】。
光をもたらす者という意味をもつ堕天使の異名を持つプレイヤーが、未確認のLMGを片手にキッド目掛けて撃ち放つ。
その銃器から放つ弾丸は、光子力のエネルギーを凝縮させた光弾。
普通の弾丸よりも3倍もの大きさを誇る武器に、キッドの身を護るボディシールドは一瞬にして破壊。体力も微量に削られるダメージを負う彼を、ほくそ笑むように笑うルシファー。
「くっそぉ……!」
ここまで翻弄されては、エレメント◇トリガーズの名が廃る。
キッドは装備した高性能AR『VZ-369』をエイム標準で射撃。反撃体制に入るが、高連射を持ってしても並外れたルシファーの瞬発力でほとんどかわされた。
「なんつーすばしっこさだ!」
ルシファーの脳裏には、ARの弾道を先読みする未来のビジョンでも描かれているのか。軽やかなフットワーク、忍者以上の瞬発力によって眼前の銃をも軽く受け流していく。
キッドの神エイムを持ってしても尽く回避されて、一発も当たらないまま止むなくリロードを費やす。だがこれだけで反撃は終わらない。
「野郎……!」
「ナメたらアカンで!」
エレメント◇トリガーズ追撃の陣。回復したハリアーとツッチー、ARとLMGによる十字射撃でルシファーを追い詰めるが……
「……くだらん」
二丁のマシンガンライフル相手でも、ルシファーにとっては欠伸が出るほど退屈か。煽りのパフォーマンス序に側転、或いはバク宙まで洒落込んで、鉛玉の雨をヒラリとかわしていく。
エレメント◇トリガーズの攻撃を持ってしても、ノーダメージのルシファー。四方八方の弾丸にも全く歯が立たないか、はぁどうしたものでしょうかねアリスさん………ってあれ、お嬢さん? 何処行ったんでしょね。
(目先の弾丸を避けるのなら……、上からの射撃はどうかしら?)
何時からそこへ登ったやら、作物庫のドームの天辺を自力で登ったアリスは、キッドから手渡されたマークスマンライフル『スティングレイ25』で遠方射撃を狙う。ターゲットはルシファーの頭上、ヘッドショットだ!
―――ダンッ、ダンッ、ダンッッ
ドーム上部から放つ『スティングレイ25』、ヘビーアモによるスナイプ3連射!!
……だがそれすらも、ルシファーは身体ごと上からの射撃を反らされて奇襲は失敗に終わった。
「嘘でしょ……? ちゃんと頭を狙った筈なのに!」
「………そこで何をしている」
「ッ!?」
更に最悪な事に、今まで冷淡冷静で保っていたルシファーの額に、青筋を立てながらアリスにその殺気を向けた。
「俺は敵に後ろを見せられるのは嫌いだ。己から真っ向に挑まず狙撃しようなどと企む臆病者など、俺の敵では無い!!」
ルシファーは己の強さに自惚れず、卑怯な真似を大いに嫌う。そんな彼はアリスに目掛け、グローブの指先に放つは――――黒い電撃!!
―――バリバリバリバリッッ
「きゃあああああああッッ!!!」
「「「アリス!!」」」
アリスの身体に迸る3万ボルトの電流! その威力はボディシールドを一瞬にして破壊、更にダメ押しでその身を仰け反らせる程の高圧電流がプレイヤーを襲い、数秒間は身体の自由が効かなくなる。そのダメージ値は125。
これぞルシファーのアルティマスキル【堕天使の雷】、そしてこれこそが、彼を“黒い稲妻”と呼ばれる所以であった。
そして彼の背後には、電撃による大ダメージで、ドームの上から転げ落ちて気絶したアリスの姿。
「成程……確かに“黒い稲妻”だ。どーやら俺らとんでもない奴と鉢合わせちまったらしい」
「あの女なら気にするな。ノックダウンさせる程痛めつけてはいない。……だがお前らは違う。その実力程度で地底の救世主を気取る愚者は、万死に値する」
「…………この野郎ッ!!!」
その様に憤るキッドは、ガムシャラにもルシファーに接近し、零距離からのアサルトライフル射撃を狙うが……ルシファーも同様にLMGの銃口をキッドの眉間に付ける。
「死に急ぎたくば俺を撃つがいい。―――お前ではこの俺に勝てない」
「そんな事はねぇよ。俺ならお前を存分に楽しませてやれるけど?」
―――ザクッ!!
「!」
と、キッドが苦し紛れに放つ皮肉を漏らせば、懐から取り出した手裏剣型グレネード『スパークル』を、ルシファーの側腹部に突き刺した!
「ツッチー!!」
「あいよぉ、ノーム印の大地シェルターや!」
◇――――――――――――――――――――◇
・ノーマルスキル【ノームシェルター】発動
◇――――――――――――――――――――◇
グレネードを突き刺されたルシファーを囲むように、突如地面が盛り上がって、四方の土の壁が彼を閉じ込めていった。これは防弾にも爆炎をも防ぐ事が出来るツッチーのノーマルスキル技だ。
「コイツはおまけだ、ヒロインをいたぶった天罰を喰らいな、それッ!!」
止めはハリアー、持参していた『グレネードボム』をシェルターの頭上の空いた穴目掛けて投下。数秒後に解き放たれる二種のグレネード爆破……!
――――ズドォォォォオオオオオオンッッッ
「やったーーーーーー!!」
「フゥゥゥゥウウウ!!」
憎きあんちくしょう、ルシファーをチームプレイで大ダメージを与えることに成功したキッド達は有頂天。
だが………!
ギュイイイイイイイイイイイッッッ
「何ッッ!??」
ノームシェルターに風穴を開けるエネルギー光弾が、不意にキッド達の隙きを狙らわれて被弾させる。
ボロボロに破壊されたシェルターから出てきたルシファー。グレネードによる爆破で黒スーツはボロボロになってはいるが、致命傷とまでの大ダメージには至っていない。
「どうなってんねんな、あの不健康青年は」
「これじゃ手も足も出ねぇ」
攻撃の殆どが効かないルシファーに、呆れ返るようなコメントが飛ぶキッドとツッチー。
「やいお前! 何だってあんな瞬発力とスキルが身に付いてんだ! まさか【プレデター】の回し者か!?」
巷を騒がす最凶のチートプログラム【プレデター】の関連性を求めるハリアー。だが返ってきた言葉でその疑惑は直様晴れる。
「【プレデター】? あんな欲に溺れた餓狼共と一緒にするな。姑息な人工物に現を抜かすプレイヤーなど滑稽千万!」
「……そこを分かりきってるのだけは認めてやるよ」
彼がキッド達の仲間にでもなれば、【プレデター】討伐もどれだけ楽になるのか。夢みたいなシチュエーションを思い浮かんだ所で、絶体絶命な現実からは逃れられない。
『キッド! 皆も、アイツと真っ向に戦ったって勝てないわ! ここは一旦逃げた方が……』
「何ぃ!? この神エイムの俺が―――――」
かつてプロゲーマーを自負していたキッドが、勝てない相手に自ら背中を見せる事などプライドに関わる。
主人公は何時でも真っ向勝負に生き………
「逃げよ☆」
………てるとは限らなかった!!
◇――――――――――――――――――――◇
・ノーマルスキル【エアロジャンパー】発動
◇――――――――――――――――――――◇
ビシュュュンンッッッ
ハリアーのノーマルスキルによるトランポリンパッド。勢いよく飛躍すれば、一瞬にして遠方へと飛んでいける強力なバネ。
アリスもドーム内から別々に逃げて、途中でキッド達と合流するように逃亡していった。
「………馬鹿め。俺から逃げられると思うな」
〘◇Now Lording◇〙
北西エリアの『ミル・ダブルドーム』から北へと逃げた先には、フィールドの外側にある海原のサルベージに使う大型機械と、得体の知れない巨大生物の死体が石化した洞窟がプレイヤー達の隠れ場所となっていた。
「俺ら、まだ生きてるよな」
「走ってる時は生きた心地してねぇが生きてるな」
「こんなん商人のやる運動ちゃうわ!」
「こっちは痺れがまだ取れてないのよ!!」
等と各々の愚痴が飛び交う中、無事にルシファーの魔の稲妻から開放されたエレメント◇トリガーズ。…………ところが。
「うわぁぁぁぁああああああ!!!」
ハリアーが上向いて見渡した途端、戦慄の顔と絶叫。
「どうしたハリ――――あぁあぁぁああああ!!!」
キッドもハリアーにつられて上向けば、戦慄と絶叫のデュエット。
「やかましいわ、何を叫んど―――――ぉぉおおおおおお!!!」
ツッチーも、以下同文。
「………あたしはやらないわよ」
アリスちゃんそこは乗れよぉ!とツッコんでる読者の皆様を他所に、チーム全員が上を見上げれば。
「この俺から逃げられんぞ。――――エレメントトリガーズ!!」
堕天使ルシファーが背に黒い翼をはためかせて、上空からエレメント◇トリガーズを追跡・発見していた!!
―――堕天使による地獄は、まだ終わらない。
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




