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【♯16】俺たちがゲームに挑む理由。“復讐”か“使命”か?

―TIPS―

【地底空間・アンダーグラウンド②】

地底空間に追放された者、或いは本来地底空間出身の者が

地上に出るには幾多の条件をパスする必要がある。


主な条件の一つとして

①満18歳以上になった者

②地上にて課せられる納税を払える保証のある者

③ゲームや職業等、収益を得て、社会に貢献できる者


その他は特例として地上進出を許可される事もある。

 ――エレメント◇トリガーズが、A.I.M.Sに挑む本当の理由。


 キッドは地底空間に追放されて、彼と同じく【プレデター】の被害にあった者や、そうでなくとも理不尽な目にあって追放された人々を救うために、A.I.M.Sのゲーム実況者として稼ぐ事を決めた。


 では他の三人、ハリアー・アリス・ツッチーは如何なる決意で戦場に赴くのだろうか……?


「……これ」

「写真か。ハリアーが撮ったのか?」

「あぁ。俺っちが地上に出て、カメラマンとして初めて撮った写真だ」


 その写真は、山梨の富士五湖の一つ『河口湖』から撮った富士山であった。


 真冬の富士は山頂から中付近まで雪が被り、真っ青な空に背後の朝日がその白化粧を煌かせ、それを河口湖が逆富士としてくっきりと映してるではないか。


「俺っち感動したよ。暗がりの地底から抜ければこんな広くてデカく聳え立った山があるんだからよ。

 ――俺っちはそれを一眼レフに映して、そこにある()()を記録にしていくだけだ」

「真実、って何だよ」


「その時とこの場所で、撮った写真の中に隠された真実だ。キッドの配信だけじゃ知らないものが、写真には沢山残っている」


 富士の写真に加えて、更に数枚分撮った写真をキッド達に渡す。その内容は衝撃的なものだった。


「おいちょっと待て、これ……!!」

「【プレデター】のプログラムコードやないか!」

「えぇっ!?」


 キッド達三人が戦慄するその写真には、USBに黒い管のようなものが巻き付かれ、まるで生きているかのような禍々しいプログラムメモリが映されていた。

 これこそが、人間の人生を狂わせる最強のチートプログラム【プレデター】の正体であった。


「これな、俺っちじゃなくて俺が地上で知り合ったカメラマンの先輩が撮ったやつなんだ。危険も承知でコイツをばら撒いてる奴の所に接近して、撮って、そのまま…………」

「――――――逝っちまったか」


 キッドの同情にも似た返しに、ハリアーはただ小さく頷くだけであった。


「それで先に、キッドと落ち合って一緒に【プレデター】を潰そうと決めたんだ。――俺っちに初めて優しくしてくれた先輩を殺した彼奴らだけは……!!」


 苦虫を噛み潰すハリアーの怒り拳に感化されたのか、アリスもその恨みに続く。


「あたしだって……! 一緒に地底から成り上がろうって決めてたモデル友達も【プレデター】にやられて、堕ち果てて身を投げたあの子の仇を取る為にも、『シャインピース』を全部取って生き返らせるんだから!!」


 アリスは同じくトップモデルを夢見ていた友人の無念を晴らす為に。

 ハリアーは先輩が身を投じてまで撮った写真を形見に、真実に辿り着く為にA.I.M.Sに挑む覚悟を決めていた。


「ワテは、そないな復讐心はあらへん。ただ【プレデター】みたいに、欲に駆られて人を泣かすような道具は造らせんつもりで戦っとる。そんだけや」


 だが兄貴たる男ツッチー、多くは語らずとも彼ら以上に頑なな意志でA.I.M.Sに挑んでいる事は確かだ。

 その証拠に、彼のスマートフォンにはA.I.M.Sに使うカスタマイズアバターの設計プログラムが多数眠っている。

 それが開放される時はおそらく、ツッチーの怒りに触れたときであろう。


 それぞれの思いの丈を、出来る限りキッドに顕にした三人。それに対して彼が導いた結論は。



「大体分かったよ。お前らがA.I.M.Sに挑む原動力は()()って訳か」


 その答えに各々は一瞬同様はしたものの、そうだと己に暗示を掛けるように頷いた。


「恨むのは誰だって出来る。俺だって【プレデター】に記憶を失いかけて、大事なお前らの事を忘れかけたと思えば腸が煮えくり返ったもんだ。


 ―――その怒りをそいつにぶつけたら、お前らはそれで終わりか?」


「「…………!」」


 復讐は向けた怒りの矛先を討つか、失えばそこで終わる。それでは自己満足で容易く事が片付く。

 だがハリアーやアリスのように、自分を慕ってくれた者への恩に報いるのであれば、その怒りのパワーを誰かの為に使う事が出来るのではないか……?


「俺は三年もの間に地底に籠もって感じたんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってな。

 人の努力を踏み躙った奴への怒りを全部請け負って、A.I.M.Sで実況配信を始めようって決めた」


 そして配信の積み重ねがキッドの強さに変えた。故に彼と地底空間に住む人々の関係がどうなったかというと。


「キッド! 旧都に帰ってきてたんだな」

「キッドさんだー」

「実況終わりかい?」


 旧都の繁華街で商売に営む主人の声を皮切りに、あれよあれよと彼らの前に集まる住民達。


「初陣ランクマッチ観たよ! お前さんと仲良くしてたハリアー達が揃ったんだって?」

「アリスちゃんも相当大人びてたなぁ、アバターからロリっ気が溢れ出て……」

「何言い出すんだいこのスケベ主人!」


「その三人が、5年ぶりに旧都帰って来たんだよ!」


「「「おおおおおおお!!」」」


 キッドが指差す先に、蚊帳の外にいたハリアー達三人。それに気付いた住民達は、更に野次馬根性で人を呼び寄せるや、成長ぶりに感動する者や懐かしさから涙を流す者もいた。


「大きくなったなぁ皆、すっかり大人になって!」

「キッドと会えなくて寂しかっただろう?」

「あの子、三人の事を物凄く会いたがってたんだぞ」


 住民達の口からキッドの本心も垣間見える程に、四人の事をいつでも見守ってくれていた。


 長らく無機質な地上の空気に馴染みすぎて、忘れかけていた人情が、人の暖かさを思い出した三人は胸がいっぱいになるやら。涙が溢れ出そうになるやら。


「皆、俺たちの事を応援してくれてんだよ。俺のライブ配信の視聴者も調べたら、3万人の内の8割が地底の皆がネット越しに観てくれてた」


「そんなに……」


 恐るべし、地底空間に住む人々の絆。

 彼らの怒りを請け負う代わりに、彼らから特大の応援を貰っていたキッド。それこそが、これまで単独でA.I.M.Sに挑み成り上がった努力の結晶なのだ。



「復讐するのは勝手だけどさ、その前に俺らの後ろに皆がいる事を忘れちゃ駄目だ。どうせなら、そんな皆に恩返ししてやりたいって思わないか……!?」



 たとえ四人の故郷が時代の流れで変わりゆくとも、変わらぬ心がそこには確かにあった。


 摩訶不思議なり、人間の心とそこに繋がる因果。


 そこから導かれて、彼らが辿り着いたA.I.M.Sに挑む真意は『復讐』か、それとも『使命』か……?



 〘◇Now Lording◇〙



 ―――舞台は変わってA.I.M.Sのランクマッチ。


 急遽企画された四人部隊『カルテット』のライブ配信で、彼らの決意が確立する。

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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!

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