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【雑談】俺の過去、出来るだけ全て教えます。

今回はランクマッチ終了後から数日後の話。

ゲーム中にカミングアウトした彼の過去を視聴者に改めて説明する為に、雑談と今後の活動報告も兼ねて、ライブ配信を始めた。

 

「……俺の声、聞こえてますかー?」


 〘聞こえてまーす〙

 〘大丈夫です〙

 〘聞こえましたよー〙

 〘おけです〙


 ライブ配信の画面は、A.I.M.Sのロビーから転送された射撃訓練場。


「あ、良かったですー。改めましてこんにちは、キッドです。いつも御声援有難うございます〜」


 配信音声が通常通り視聴者にも届いた事が伝わり、疎通していた事を知ると改めて挨拶を交わすキッド。

 右上には例の如く、視聴者からのチャットが下からスクロールされている。


 ただ淡々と雑談するだけでは味気ないと思ったか、エイムの調整も兼ねてのトレーニング模様を魅せる事になっていた。


「今日配信した理由は、こないだのランクマッチで知ったと思いますけど……俺の過去の事ですね。もう隠しても仕方ないんで、プライバシー保護できる程度で語ろうか思ってます。長話が苦手な方は射撃練習を参考にしてみてください」


 エイム練習は話を聞くのが苦手な人対策なのか。

 それはともかく、キッドは武器庫でセットされている十八番(おはこ)マグナムリボルバー『ファイアバード』を片手に、ダミーロボットや遠方の的を狙い撃つ。


 しかし武器の中でも、トップクラスの反動が出る強力な銃を容易く使いこなし、ターゲットを撃ち抜くキッドの神エイム力。さぞ慣らすのに苦労した事だろう。



「先ずは、俺が3年前に【プレデター】にやられて、地底空間へ追放されたって話。別にあの時彼処に放り込まれた事は全然苦にしなかったです。

 というのも俺は、一緒に戦ったハリアーも、アリスも、ツッチーも、全員()()()()()()なんですよ」


 〘!?〙〘マジ!?〙〘!?〙

 〘地上の人じゃ無かったの!?〙


 早速、衝撃のカミングアウトに驚きのスクロールが飛び交うチャット欄。キッドを東京か何処かのプロゲーマーと思っていたらしいが、仲間も揃って生まれも育ちも地底空間という異質の経歴を持っていた。


「ただ俺も皆も両親を知らない孤児だったらしくて、そこで地底のご近所さん達と力合わせて、愛情込めて育てられて今の俺たちが居ます。地底に生きてる皆が俺たちにとっては家族なんです」


 〘うわぉ……〙〘優しい世界〙

 〘ハンカチ用意していいすか?〙


 等とチャットも感動に包まれる中、キッドはマグナムから変えて、射撃スピードと安定の低反動で人気のSMG『フォーミュラ』で無駄のない連射を魅せる。



「地底空間には掟があって、『満18歳以上』とか『地上において税金を支払える保証がある者』とかの条件を全部クリアした人が、地上に行く資格を持てるルールがあるんです。俺も他の三人も成人して仕事に就いて、俺もプロゲーマー目指して年収一億目指したかったって訳」


 〘いや今からでも一億目指せそうw〙


 そんな夢を抱いて、地底から地上へ()()……いや、上京しプロデビューを果たしてVRMMOやアーケードで名を馳せていたキッド。


 だが、事件は絶好調の最中に突然起こった。


「3年前にFPSの大会で出場して、優勝した後のロビーで、片目を黒髪で隠した黒ずくめの男が居てさ。

 出場者の中には居なかったし、何より不審だったのは個人ルームのロビーに何故か俺のルームIDを知ってた事。


 流石に怪しいと思った俺は、『誰だ?』なんて言おうとした途端に――――」



 その不審な男は、キッド目掛けて蜂の巣にでもするかの如く射撃。

 当時としては未知であった“エネルギー弾”を用いた武器に撃たれたキッドは、強制ログアウトと同時に重症の精神ダメージを受けて病院に搬送された。



「病院で治療受けてた時にまず驚いたのは、保険が降りなかった事。そんな馬鹿な話は無いよな。それなりに稼いでる俺が医療保険受けられない筈が無いし。


 話を聞いたら、俺が保険はおろか財産も全てゼロになってた。

 後から分かった事だが、あの時俺を襲ったプレイヤーはチートプログラム【プレデター】の最初の被験者で、俺はそいつの初の犠牲者だったらしい」



 衝撃的な展開の連続に、チャット欄のスクロールも一時止まったまま。皆が彼の話に聞き入っているようだ。


 何しろこの物語の時代は、“人類完全データ管理体制”。つまり現在のマイナンバー制度のような表面的な管理の更に上の制度が設けられていた。

 個人の全財産や生い立ち、血縁から仕事の関わった者への関係、ゲームの公式大会の成績なども全てコンピュータに管理された近未来の時代。


 そんな大事なデータを容赦なく貪り喰らうのが、あの【プレデター】。

 人々の培ってきた経験や形跡を荒らす輩は、やはり赦すべき存在ではない。


「ただあの【プレデター】も不完全な所はあったらしく、多少の記憶障害はあったものの何とか地底空間の事とか過去の事は覚えていた。……まぁ、ハリアー達はPASの力を見るまで忘れてたけどな。思えばそれが一番恐ろしかったよ」


 不幸中の幸いといったものか。だがどっちにしても地底空間への追放は免れず、失った財産や名誉を取り戻す為にキッドは3年もの間地底に籠もって、A.I.M.Sのゲーム実況でひたすら稼ぎに稼いだ。


 今やこの雑談配信でも3万人もの人が、彼への心配から視聴してくれている。ゲームでの魅せプレイと、彼の人柄が魅了した努力の結果だ。



「過去の話で言えるのはここまでですね。ハリアーとは記憶を取り戻して最近再会できて、アリスとツッチーはあのランクマッチで出会えた。後者はアポ無しのマジな奇跡だと思ってます。

 あのマッチの後に皆のIDにフレンド登録をしまして、俺は今後の配信活動で、ある事を決めました」


 ここからは今後のキッドの活動状況の説明に入り、アサルトライフルの撃ち尽くしも終えて、ここからは武器を置いて本格的な告知に入る。



「俺はもう【プレデター】に大事なものを奪わせないように、奴らの完全討伐を目標に、これからは()()()での活動をしようと思っています。 ――皆、入っといで!」



 訓練所にただ一人だけの筈の空間に、キッドの呼びかけで出てきたのは、なんとハリアー・アリス・ツッチーの三人組ではないか!



 〘おおおおおおおおおお〙

 〘キタ━━━━━━━━!!〙

 〘アリスたそ来た!〙

 〘これで勝つる!!〙

 〘兄貴ーーー!!〙


 四人組勢ぞろいで盛り上がるチャット勢。


「えー、今後から新しくハリアー・アリス・ツッチーの三人も加えて四人組でA.I.M.Sのゲーム実況と、他の企画も考えながら活動していきます!


 ―――チーム名も【エレメント◇トリガーズ】として、皆様に魅せプをしていけたらと思います!!」



 キッドの後ろに並ぶ三人組、ニヒルやらダブルピースで応えたりと各々の個性的なリアクションで視聴者にアピール。

 更にここで初めて公表されたゲームチーム名【エレメント◇トリガーズ】。この歴史的瞬間に約3万人の視聴者が一致団結して、その命名を詠唱する。


 〘ゴーゴー、トリガーズ!〙〘がんばれートリガーズ!〙〘トリガーズ、バンザーイ!!〙

 〘エレメント◇トリガーズに幸あれ! ¥10,000〙


「はい早速のスパチャ、有難うございます!」



 かくして、雑談兼チーム名公表のライブ配信は好評の大盛りあがりで幕を閉じ、次なるランクマッチの配信に備える準備期間に入るのだった。



 〘◇Now Lording◇〙



 ―――変わって舞台は現実『地底空間』。


 先程まで配信されたライブも終えて、ヘッドギアから外された彼の頭部には真っ赤なサラマンダーキャップ。

 ゲーミングチェアにモニター、更に高価なWi-Fiルーターなどが並ぶ個室は地底の暗さも相まって余計に暗く感じる。


 更に個室には彼の他にも、三人の気配があった。



「――――それじゃハリアー、アリス、ツッチー! 改めて宜しく頼むぜ!!」


 ―――――グッ!!


 同じ地底空間で生活を共にした幼馴染が、5年の年月を経て現実世界で本格的に邂逅。

 キッドの団結を呼びかける声に皆は声を掛け合わずもサムズアップの親指で、その意思を顕にした。



 四大精霊の力を宿し、地底空間にて絆を結んだゲーム四勇士。【エレメント◇トリガーズ】、ここに結成す!


小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!


更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!


エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!

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