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【♯13】俺たちのゲームは、ここから始まる。【神回】

――TIPS――

【プレイヤーの魂・PAS】

ゲームを心から愛し、全力で挑む闘志が形となった、プレイヤーの特質なる異能力スキル。別名“最後の切り札”。


覚醒したPASの種類は『剣』『銃』『火龍』など多種多様。それぞれのアイデンティティに沿って、人間の極限を超えた能力を発揮する。


ただし、発動後使えるのはゲーム中一回のみ。

『A.I.M.S』ではノーマルスキル最大三つと、アルティマスキル一つの能力が格段にグレードアップ。

更に鍛錬次第では潜在能力も身につけられる。

 ――『マークスマーケット』の天井より放射されるは怒りの業火。

 プレイヤーの魂“PAS”を覚醒させ、強大な力を得たキッドが指先に秘めた灼熱光線を【プレデター】の後方に直撃させ、こちらに注意を引かせた。


「ゥゥゥルルル………!」


 自我を失い、チートプログラムの魔力に乗っ取られたプレイヤーの喉が鳴る。

 プレイヤー達のデータを喰らい、そこから放出する知的財産も記憶も生きた形跡もそれによって奪っていく飢えた獣を、この聖地に野放しにする訳にはいかない。


 キッドの背後に宿る火龍(サラマンダー)。更に仲間の風妖精(シルフ)水波乙女(ウンディーネ)大地小人(ノーム)の四大精霊のPASが【プレデター】の狂気を鎮まらせ、その覇気に圧倒される。


「……どうした? さっきまでバイキング感覚でプレイヤーを喰ってた奴がヤケに大人しいじゃねぇか。あぁ、そうか。俺の火龍(サラマンダー)が怖いのか!」

「グルルル………」


 血に飢えた獣とて、炎を司る龍相手に怖気づいたか。


 いや、火龍だけではない。穏やかな風を漂わす風妖精も、清き水に滴る水波乙女も、ピッケル片手に土を掘り起こす大地小人も、【プレデター】などに恐れるに足らず。

 たとえチート仕様で改造されていようとも、エレメントの力を宿した精霊達が、不条理な者を成敗する!


「ゥグォォオアアアアアア!!!」


 野性的本能が呼び起こす【プレデター】の跳躍、そして構えるLMG『フレンジーF500』。中腰に姿勢を低くし、キッド達四人を喰い付かずに代わりに弾丸を御見舞する。


「させへんでッッ!!」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・PASノーマルスキル

【ノームクリスタル・プロテクター】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


 PASを発動させたプレイヤーは、登録したスキルの威力をも倍増させる。

 先陣を切るはツッチー。大地の精霊・ノームの加護を授けたスキルは岩壁転じて鉄鉱から取れる宝石・クリスタルから創り出した自然のプロテクター!


 なんと一発で即死のLMGの連射でも一切破壊されない、鉄壁のガードが施された!


「今度はあたし!」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・PASノーマルスキル

【ウンディーネ・マインド】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


 アリスが【プレデター】目掛けてパチンと指を鳴らした瞬間、何をとち狂ったか……いや元から狂ってるが。マシンガンの矛先をキッド達ではなく、東の風へと向けてぶっ放してるではないか。


「あれ、アイツ頭までバグったか?」

「いいえ、あたしのPASスキル! 【プレデター】の視界に()()を見せて、弾を無駄撃ちさせるの!」


 アリスのあざとい幻覚技、ウンディーネは恋をすることで魂を得るとは聞いているが、『恋は盲目』という言葉もある。【プレデター】をも惑わせる水波乙女の魔力か。


 ―――カチッ、カチッ!


 装備している二丁ともLMGの弾は切れ、更にバックパックのLMG用弾丸も底を尽いたようだ。


「よっしゃ、武器は封じた!」

「あとはアホみたいな自己回復をどうにかすれば……」


 撃破の危機は去ったが、異常な自己回復力を封じ込めなければ埒が明かない。その時に名案を閃いたのがハリアー。


「じゃ、今度は俺っちだ!」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・PASノーマルスキル

【シルフ・トルネード】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


 ビュルルルルルォォオオオオオオオオッッッ


 逆巻く竜巻、【プレデター】をも宙へと吹き飛ばす程の強烈な上昇気流。

 気まぐれな性格の風妖精・シルフも今回ばかりはご機嫌斜め。地面を離され飛ばされた獣は自由が効かない。


「【ホークアイ】!!」


 ここでハリアー、間髪入れず宙に舞う【プレデター】目掛けて敵監視装置をスキャニング。そこで何かを勘付いたか、アリスに次の行動を指示する。


「今だアリス、奴の右肩目掛けて撃て!!」

「え、わ、分かった!」


 慌ててアリスもマークスマンライフル『スティングレイ25』を天目掛けてロックオン。

 スナイパーよりも軽量、かつ連射力も上のマークスマンライフルから放つ三拍子のトリプルショット!


 ドンッ、ドンッ、ドォン!


「ガァッ……!!」


 エイムに関してはキッドに負けず劣らずの正確さ、右肩に一点集中したライフルの弾丸は貫通。

 その風穴からは何やらバグとはまた違った電流の跡が垣間見えていた。


「ビンゴ、彼処が【プレデター】のプログラムを埋め込まれた場所だ。HPも確認してみな」


 ハリアーの言われるがままに、奴が肩を抑えている所の隙に一斉射撃をしたところ。『999』から一気に『345』へと著しく減少していった。


「HPの自動回復が消えてる!」

「ハリアー、これって……?」


「【プレデター】の回復機能の回路を断つために、俺っちの【ホークアイ】でスキャンしてその場所を探したんだ。それが奴の右肩。もうこれで自動回復も使えねぇぜ!」


 これで【プレデター】の武器も、チートの部分も削除させた。

 気付けば奴の捕食によって、フィールドには他のプレイヤーも、ロボ兵『ファントム』の姿も無い。

 だが四人以外全てを喰らい尽くした飢餓の獣も、彼らの力によって制圧寸前まで来ている。


 ならば最後の手段と、地を這う【プレデター】は激痛と薄れゆく暴走の意思の中で、五体満足の身体を使い反撃に出ようとするが……


「――――おおっと!」


 奴の目先に向けられるは、マグナムリボルバー。


 キャップの先に宿るキッドの眼光と、『ファイアバード』の44口径の銃口が【プレデター】を威嚇する。


「………何を言いてぇか俺には分かるぜ。“なんで【プレデター】を使っても勝てないんだ”とでも言いたいんだろうが、あんなのに手出した時点で終わりなんだよ。人間として……!」


 重く、鋭く、低い声で呟きながら、キッドは射撃の構えを完了させる。



「分かってるよな。人の積み上げてきた人生を喰らうプログラムに、魂を売ったプレイヤーがどうなるか。


 ――仮想空間から転移したその精神、取り残された身体もろとも()()()()する。骨も残さずあの世へ行けるんだ。……ま、地獄だろうけどな」


 人生を喰らう捕食者の末に墓標も、形跡も、その者の存在すらをも赦さない。

【プレデター】の異常な情報吸収回路によって、侵食されたアバターの身体はゲームに破れた瞬間に、跡形も無くさず消去。

 その際に転移した本来のプレイヤーの身体も、契約の代償としてこの世から消される運命にあるのだ。



 だが既にキッドは、そんな【プレデター】に赦す気は到底無い。既に40数名の集積データを喰われた惨事と化し、最早命を乞う弁解の余地はどこにもない。


 残された最後の切り札は、キッドの魂に宿す火龍の怒りのみ………!!


「さぁ、地底より深い地獄へ行く準備は出来たか? ―――おぃッッ!!!」


 歯を強張らせて、非情にも向けられる銃口に対し、【プレデター】は口を開けたまま中腰に止まる。

 まだ勝てるという自負か、或いは力を信じた先にあった自棄か。奴の考えた先に待つものは唯一つ。




「グギギギャャャャアアアアアアアアッッッッッ」


 鋭い爪を立てて、狂い果てた獣の咆哮と共にキッドに突撃する【プレデター】。その刹那に、


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・PASアルティマスキル

【火龍逆鱗砲】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇



「――――――FIRE(ファイア)!!!!!」



『ファイアバード』の銃口から吹いた炎は、サラマンダーの放射火炎か。

 途轍もない火力の発射炎(マズルフラッシュ)は、龍の形となりて、そのまま【プレデター】の身体を貫いた。


 その衝撃は凄まじく、『マークスマーケット』の脆い天井をぶち抜いて、そのままデスボックスが散らばる市場内へと叩き落された。



 ―――【プレデター】の身体に大砲並の風穴。そして死に際の顔はまさに、瞳孔を見開いて無様に朽ち果てた獣そのものであった。


「………な、なんで、こうなるんだよぉ………!」


 瀕死寸前、か細く息絶えそうな声で未練を口にするのは、薄れゆく意識の中で自我を取り戻した【プレデター】のプレイヤーだった。



「おれ、は、ただ………、金が………大金が欲しかっ、た……だけなのに……………………………」



 プレイヤーの小さな欲が、【プレデター】一つで粉微塵に崩壊されるこの無残な始末。殺る方も殺られる方も何一つ得しない危険なチートプログラム。


 身体はデジタル粒子となりて、跡も濁さずに消えたアバターと本来の身体。故にその者が何者であったのかも、誰も知る由もない。




【討伐完了 A.I.M.Sランクマッチ・チャンピオン キッド・ハリアー・アリス・ツッチー】


 未だアバター消滅の苦々しい余韻が残る中で、生き残った四人に授与される“チャンピオン”の肩書。

 本来のゲームとは特例の決着となったが、視聴者の予想された展開に満足したようで、チャット欄は大盛り上がり。


 〘やったあああああああ〙〘GG!〙〘おおおおおおおお〙〘ランクマッチ・初勝利おめでとうございます!! ¥30,000〙〘ないすぅ〜!〙〘GG!〙〘サイコー!!〙


 更に、戦い抜いた四人にはもう一つ褒美が。


「ん……?」

「……オイオイ、マジか」

「うそ!?」

「ありゃ〜、これが噂の“太陽”か!」


 ◇――――――――――――――――――◇

 ・スペシャル報酬

【シャインピース】獲得!!

 ◇――――――――――――――――――◇


 四人の手元に授けられた扇形の黄金の欠片。

 これがあの108つ集めると願いが叶うと言われる太陽プログラム【シャインピース】の欠片!


 一気に欠片を4つも手に入ったキッド達。


 それぞれに交錯する想いも多々あるだろうが、このゲームを通じて、皆が共通して固めた決意の形。それが四人のこれからの運命を示唆するのであった……!!



(……もう、後戻りはしない。【プレデター】をばら撒いてる張本人をぶっ飛ばして、【シャインピース】を全部集めて、真の自由を手に入れてやる!


 ―――四大精霊の魂の元に、この不条理な世の中を撃ち抜くッッ!!)




 ―――いざいかん、四大精霊の魂を宿すゲーム戦士達。『エレメント◇トリガーズ』に幸あれッッ!!!



 〘◇You are the A.I.M.S・CHAMPION!◇〙

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