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雨は嫌い、だけど雨は好き

作者: 只野名無

 雨は嫌いだ。

校庭で走り回ることが出来ないから。

今月は大好きなサッカーの月。ドリブル、リフティング、パス。最初はぎこちなかったけどちょっとは上手くなっていく。ようやく試合をやれるのに、どうやらそれも無理みたい。肩をガックリと落とす。

折角の体育が、ざあざあ振る雨で流れていく。



 だけど雨は好きだ。

いつもの光景を見違えるようにしてくれるから。

校庭の乾いた砂が雨に濡れて色が濃くなっていく。もっと時間が経つといつもは分からない凸凹に水溜まりが出来ていく。一つ二つ出来る度に少しずつワクワクしてきて気分が弾む。

放課後に校庭でちゃぷちゃぷ水を跳ねさせて歩いていく。






 雨は嫌いだ。

授業中でもゴロゴロと雷が大きな音を立てるとビックリするから。

ゴウゴウと風を伴って窓を叩く音。それに負けじと音楽の授業中に大きな声を出したのに、まるでうるさいと言われたかのように雷が落ちてくる。



 だけど雨は好きだ。

本を読んでいる時には周りの雑音をシトシトと消してくれるから。

さあさあと気持ちを落ち着かせるように振り続ける音。図書室で本を読み始めると物語の中に連れていってくれるかのように耳に響いてくる。






 雨は嫌いだ。

一人になってしまったと思うから。

下校中の帰り道。一人傘をさして歩いていく。パタパタと大きな雨粒が傘を叩く。音は大きいのに周りには誰もいなくてとても静かな帰り道をトボトボ歩いた。


 だけど雨は好きだ。

一人じゃないって教えてくれるから。

夕立の放課後。一人校門に立ち尽くす。トントンと傘を持って迎えにきてくれたお母さんが僕の肩を叩く。雨音は大きいのに気にならないのはきっと手を握ってくれているから。


 ざあざあ振る雨がパタパタと傘を叩いて、シトシト冷たい雨の中握ってくれた手はポカポカ暖かくて、ゴウゴウ風が吹いてもグングン前に進めて、ゴロゴロ雷がなってもトントンと背中を叩いて勇気づけてくれて、ちゃぷちゃぷ水を跳ねさせながらルンルンと帰り道を歩いた。







 雨は嫌いだ。

出来なくなる事はたくさんあるし、いつもの景色を変えていくから。


 だけど雨は好きだ。

その時しか出来ない事がたくさんあるし、いつもと違う景色にしてくれるから。



 それはきっと、これからも変わらない。

読了ありがとうございます。


6/8 文章を修正しました。


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