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01 裸足の黒髪美少女

「……こんなものかな」


一息吐いて家具家電を出し終わった部屋を見渡す。

引っ越してきたばかりの部屋はダンボール特有の匂いで埋め尽くされていた。


俺の名前は天野奏太(あまのそうた)。高校一年生だ。

高校一年生といっても入学してから1ヶ月経ち、今は5月。

何故その様な時期に引っ越してきたかと言うと、実家から高校まで片道1時間以上掛かるからである。

親に頼み込んで何とか1人暮らしの許可が下りたという訳だ。


スマートフォンで時刻を確認すると現在は午後17時。

夕飯を買うついでに自宅マンション周辺の地理を確認しておこうかと、財布を持って部屋を後にする。


取り敢えず目指すはコンビニ。

引っ越し初日からコンビニ飯はどうかと一瞬思ったが何も食べないよりはマシだ。


近くのコンビニに立ち寄りハンバーグ弁当、ペットボトルの麦茶、おにぎり、食後の為のポテチをカゴに入れ会計を済ます。


コンビニを出たら当てもなくふらふらと周辺の施設を見て回る。

ドラッグストア、スーパー、100円ショップ等の店は一通り揃っている様で安心。


そろそろ部屋に戻ろうかと思った時、ふと公園が目に入ったと同時に小腹がグゥと鳴る。

ベンチに座りながら先程買ったおにぎりでも食べようかと公園に入りベンチを目指すが先客が居たようだ。


艶のある綺麗な黒髪ロングヘアに少し幼げな顔立ちをした美少女が無防備にベンチで寝ているのである。

ベンチの背もたれに体を預け、脚をだらりと伸ばして気持ち良さそうだ。


しかし、くぅくぅと可愛らしく寝息をたてている女の子に俺は見覚えがあった。

女の子の名前は白波結乃(しらなみゆの)。隣のクラスの女子生徒だ。

同じクラスならいざ知らず隣のクラスの女子となると相応のインパクトが無いと一々覚えていないが、彼女の事は記憶に残っていた。


何故残っていたか、白波さんが美少女という事もあるが……俺は視線を白波さんの足下に移す。

色白の細い脚から爪先にかけて靴下はおろか靴にすら覆われておらず色白で綺麗な肌が続いている。

たしか学校でも白波さんは靴下を履く事をせずに裸足で過ごしていた。

移動教室等ですれ違う時も靴下を履いていなかったのを覚えている。

別に女子の裸足に対してそういった性癖を持ち合わせているという訳ではない筈だが。


……それはさておき、この状況どうしようか。

無防備に寝ている女子を発見してしまった以上見て見ぬ振りをして帰るのは如何なものか。

もし、このまま起きる事なく変質者に襲われる可能性だって無い事も無いだろう。


「ーーんぅ……」


どうしたものかと考え込んでいると白波さんが小さな声を漏らし、ゆっくりと目を見開いていく。

どうやらお目覚めのようだ。


「ぁ……私、寝ちゃってたんですね……」


寝起き特有のぼやぼやとした声で自分の状況を把握する白波さんと目が合う。

ぱっちりとした瞳には吸い込まれるように魅力的だ。

う〜んと大きく伸びをすると同時に彼女の裸足の足指がパッと広がる。


「ありがとうございます」

「……え?」


想像もしていなかった感謝の言葉が白波さんから飛び出し間の抜けた声が出てしまう。


「私が起きるまで見張っていてくれたんですよね」

「いや……たまたま通りかかっただけだよ。俺がここに来てからすぐに起きたし」

「それでもです。感謝の言葉くらい言わせて下さい」


えへ、と可愛らしく微笑む白波さん。

それにしても見ず知らずの男に寝姿を見られたのにも関わらず怒るどころか逆に感謝されるなんて……人間出来過ぎていないか。


「あ、私は白波結望といいます。貴方は?」

「え?お、俺は天野奏太……」

「良いお名前ですねっ」


美少女に名前を褒められた。正直嬉しい。

この名前を授けてくれた両親に感謝。


しかし、それよりも気になる事が1つ。

白波さん、靴はどうしたのだろうか。周りを見た感じだと靴とかサンダルとか履き物の類が見当たらない。

そんな俺の考えを他所に白波さんは無邪気に裸足をぶらぶらさせている。

一瞬見えた足の裏は公園の芝生が幾つかへばりついているように見えた。


「あの……」

「どうしました?」

「いや、靴はどうしたのかなって思ってさ。靴下も履いていない様だし気になって……」

「靴と靴下は家に置いてきました。私、裸足でここまで来たんですよ〜」


え?裸足で?


白波さんの言葉が飲み込めずにいると、白波さんがベンチから立ち上がり1歩2歩……と裸足で歩みを進めていく。


「……私、裸足で歩く事が好きなんです。芝生はくすぐったくて、アスファルトはゴツゴツしてて……」


「その刺激全てが気持ち良いんです」


広い芝生の上に裸足で立ち微笑みかける美少女。

その姿は本当に可愛らしく、暫く見惚れていた。


「……あ、もうこんな時間ですね」


白波さんが気がついた様に言う。

公園に備え付けられた時計を見ると18時になろうとしていた。


「そろそろ帰ろうか。良ければ白波さんの家まで送っていくよ、裸足だしさ」

「いいんですか?では、お言葉に甘えて……」


そう言うと白波さんは俺の隣に寄って裸足で歩みを進めだす。

それに伴い俺も歩き出す。


暫く歩くと公園から出て、地面が芝生からアスファルトに変わる。

地面が変わっても白波さんの歩みは変わらずしっかりと歩いている。慣れているのかな。


「足、痛くない?」

「大丈夫ですよ〜慣れているのでっ」


やはり慣れているのか。


公園から出て目の前にあるマンションに向かう。

……ん?ここは俺が今日引っ越してきたばかりのマンションの筈だが……。

そのままエントランスを通り、エレベーターで2階へ。

エレベーターを出て203号と書かれた札の前で白波さんが止まる。


「ここが私の部屋です」


その言葉を聞いて俺は内心驚いていた。

何故なら白波の部屋は俺の隣だったからだ


「ま、マジで……?俺…隣の部屋、というか今日越してきたばかりなんだけどさ……」

「えっ!?偶然ですね〜〜」


なんだか嬉しそうな白波さんを横目に俺は戸惑いまくっていた。

同じ学校の美少女とお隣同士なんて……俺の高校生活はどうなってしまうんだ……?



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