真夏の太陽。
その記憶は本物か。
勝手に美化してしまっただけじゃないか。
今も残る熱や匂い、、、
二度と会えないあの人を、忘れられない自分が勝手に創り出したマガイモノではないと、、何故言い切れるのだろうか。
大きな事故だった。
身動きが取れない中で与えられる物を拒む事も止める事も出来ず、徐々に消えていく唇の体温。
「大丈夫だよ、愛してる」
貴方の声も、もう聞こえない。。
覆いかぶさる貴方の大量の血で熱からも渇きからも守られて私だけが生き残った。
生存者絶望的と思われた中で、奇跡だ美談だと書き立てられても、酷でしかない。
泣き疲れて眠りに落ち、目覚めては泣く。
枯れる事を知らない涙だけが、生き残ってしまったという現実を突き付ける。
死んでしまいたい。
何度も試みて、見慣れた病室で目が醒める。
空は青くて、芝生は緑で。
本当に?
「ねぇ先生、私の血は朱色かしら」
「もちろんですよ」
途切れた意識が戻って最初に見たのが先生。
何がおきたのかを思い出し、半狂乱に叫び、世界から色が消えた。
だから最後の記憶は先生の薄茶色の瞳。
「何度でも助けますよ」
記憶が曖昧になっていく恐怖。
唯一無二の存在。
血の味と、熱さと、あの人に愛された自分を。
何一つ疑う必要はないのに、、
愛してる愛してる。
それは呪文のよう。
何度でも助けるという言葉が過去を未来で上書きしていく。。
「愛してる」
「だれを?」
そんな愚問をって開きかけた口を掌で塞がれる。
「だれを?」
モノクロの世界で、貴方を貴方が消そうとしている。
「だれを?」
空っぽの部屋で、モノクロの世界で、記憶の貴方を探す。
全部、全部、全部、全部が本物。
なのに、、、曖昧。。
恐怖で自分を傷付ける。
このまま貴方との幸福の時間と眠りたいと。。
でも、気付いてしまった。
目覚めた時に貴方に会える喜び。
「・・・先生」
言葉にした途端に枯れない涙が溢れ出す。
薄茶色の瞳があたたかく揺れ、
記憶を未来で着色される。
貴方と最後に見た景色は、真夏の太陽《ブルー&レッド》の元で咲き誇る大輪の向日葵《グリーン&イエロー》
何年経っても空は青く、真夏の陽射しはキラキラと輝いていた。
読了ありがとうございます。