ユメ。女神と契約する。
俺の名前はユメ。
小さな村に生まれた極々一般の村人だ。
魔法が使える訳でもなく、剣術がうまい訳でもない。
運動神経も学問も極々一般で、特に金がある訳でもない。
唯一得意な事は笑う事だ。
喧嘩も好まず、暴力を振るったこともない。
面倒事は嫌いだからだ。
今日も退屈な一日が始まる。
朝起きて、眠たい目を覚ましつつご飯を食べる。
そして仕事に向かう。
仕事が終わって帰って風呂に入ってご飯を食べて寝る。
もう何年同じ事を繰り返したんだろうか!!!
くっそつまらねー!!
俺はもう26だぞ?
周りはやれ結婚だの、やれ勇者だの、やれ戦争だのなんなんだ?
俺は何のために生きてるんだ?
こんな人生なら死にたい...
...って言っても仕方ない。
俺は何も出来ないんだから...
死ぬ事すら怖くてできない...
明日は確か家の屋根の修理の仕事だったな...
朝早いしもう寝るか....
「ん?ここはどこだ..?」
ユメが目覚めると真っ暗闇の空間にただ一人立っていた。
「なんだ。夢か。」
ユメはその場に倒れこんだ。
だが何も音がしないどころか、衝撃すらこない。
「変な夢だな」
また眠ろうと思った瞬間目の前が眩しく光る。
「な、なんだ?!」
そこにはとても綺麗な女の人がいた。
ただ違和感があるのが、その人が神々しく光っているのだ。
「誰なんだい?」
「ユメ。こちらの世界にようこそ。私は女神のナナリーよ。」
「女神?!嘘つけっ。これは俺の夢だぞ!」
「ぁらぁら。本当よ。ユメは願った。こんな人生なら死にたいと。」
「まさか本当に女神だってーのか?て事は俺はやっと死んだのか!」
「いいえ?ユメはまだ死んでいないわ。ただユメが死にたいなら死ぬ理由をあげるから好きに死ぬといーわ。」
「死ぬのが怖くて死ねないの分かってるだろ?女神なら殺してくれよ!」
「私達女神はユメの世界に直接干渉出来ないの...だからユメの為に死んだ後の最高の世界に転生させてあげるわ」
「なんで俺なんか村人に女神様がでてくるんだ?勇者とかならともかく、俺はただの村人だぞ?」
「えぇ...だからなのです。最近のどっかの馬鹿女神は死にたくなくて死んだ人間を転生させるんですもの。それでチート能力で転生先もハッピーエンドだなんて理不尽じゃない?それで女神ポイント稼ぎとかあり得ないから!だから私は死にたいって思った人間を転生させるの!」
「女神ポイントってなんなんだ?」
「女神は50人いてその中でポイントによって女神ランキングが決まるの。今の女神1位が2万8千ポイントよ。1ポイント=1転生で転生した人間がハッピーエンドならプラス3ポイント。バットエンドならマイナス3ポイントなの。」
「お前は何位なんだ?」
「私は50位...」
「ハハハッ。最下位じゃねーか。俺なんかが転生した所でなんもかわらねーじゃん。あー、腹いてぇ」
俺は大笑いし転げ回った。
「えぇ...確かに。でも私は神のルールブックを良く読んで考えたの。ルールブックによると残りの寿命-生きた年数=???×1ポイントって記載されてるのよ。そしてハッピーエンドの場合プラス3ポイントじゃなくて×3ポイントなの。他の女神達は知らないみたいで、寿命が来た人間を転生させてるから1ポイントだけになるわけ。だからハッピーエンドでも1×3で3ポイントしかたまらないわ。そこにボーナスポイントがついて4ポイントしかたまらないの。」
「女神が何人もいるのもポイント制なのもびっくりだわ。でもなんで1位になりたいんだ?」
「1位になるとね。自由が得られるの。こんな馬鹿みたいに転生させたり面倒みたりって面倒じゃん?私は仕事なんてしたくないの!毎日だらだらしてたいのよ!」
「ハッハッハッ。面白い。ただ俺なんかでいーのか?」
「ユメじゃないと駄目なのよ。ユメが好条件なんだわ。ユメみたいな考え方でユメみたいな性格中々いないのよ!それにね。ユメは87歳まで本当は生きる予定なの。もうすぐ27歳になるでしょ?365×87で31755それから27年分引いて21900ポイント。それでユメが転生先でハッピーエンドになって21900×3で65700ポイント。ボーナスポイントのことは良くわからないけど、無くても楽勝で1位に慣れちゃうの!!しかもユメ一人だけでね!だから何千人もの人間を何百年も馬鹿みたいに観察して手助けしなくても良くなるんだ!だからユメ一人だけ見てれば私それ以外の時間自由にだらだらできるしさ!」
「ハッハッハッ。駄女神だな!だがその考え方俺は好きだぜ。んで転生先はどんな未来が待ってるんだ?」
「私もユメなら分かってくれると思ったから呼んだんだよ!良い関係になりそうね。転生先は自由だよ!好きな物が選べる!ただ期限があってその期限内に死ねないと、希望した世界には行けなくなるから注意ね?」
「期限つきか...もし転生先の世界を選んだとして、魔王になるとか勇者になるとか、女の子になりたいとか、ハーレムになりたいとかどんな願いも叶うのか?」
「ある程度の事は叶えられるわ。神以上の存在になるとかはさすがに無理だけどね。所詮人間だから神とスペック違うし...」
「なるほどな!今はどんな転生先があるか見せてもらっても構わないか?」
「今人気のだとこれとかかな?」
女神は一枚紙を渡してきた。
「タイトル『魔法の世界の世界一の魔法使い』
んー。世界一とか興味ないんだよなあ。」
「まぢかー。じゃあこんなのは?」
「タイトル『世界征服物語(1カ月ber...)
』世界征服とかも興味ないんだよねえ...
色々なのみたいから全部貸して?」
「分かったわ。私に取り扱える物はこれで全部よ。」
目の前に20枚くらいの紙が並べられた。
「意外と少ないんだな。」
「まぁ50位だからねぇ...少なくてごめんね?」
「いや、問題ない。それに1位になったら増えるんだろ?俺がお前を1位にしてやるさ!」
「ありがと...期待してるわ!」
俺はじっくり並べられた紙を見つめる。
「なっ!これは!!!これでもいけるか?!」
ユメは一枚の紙を女神に渡す。
「どれどれ?..ふむふむ...タイトル『無人島で獣耳少女と幼馴染みといちゃいちゃパラダイス』こんなのでいーのか?」
「こんなのじゃないぞ!これがいーんだ!獣耳少女とかまじでやばいし、それに加えて幼馴染みとか反則だわ!!毎日あんなことやこんなことしながら平和に暮らせるんだぞ!これ以上の幸せはないわ!」
「分かったわ。でもこれ期限後7日だね!」
「7日以内に死ねばいーのか?」
「そういう事!ただ一つ注意事項ね?故意に死のうとすると死ねないから、上手く死んでね」
「自殺はできないってことか...上手く事故死するか殺されるって感じか?」
「そゆこと!だから自殺は何らかの力が働いてできなくなるから!」
「上手く死んでくるわ!早く元の場所に戻してくれ!」
「あ...待って!契約しないと。」
「ん?契約ってなんだ?」
「女神って基本契約しないで、死んだ人間の魂が自分のとこにきた時だけ接触できるの。契約すると一人しか見れなくなるから、契約してる女神なんていないわ。でもね契約することによって私からいつでもユメの事が見れるし、ユメが眠ったら私に毎回会えるわ。それと契約してないと出来ない事なんだけど、直接死ぬような状況は作れないけど、頑張れば死ねそうな状況は作れるようになるのよ!それが契約!」
「んー。良くわからないけど助けてくれるって感じか?」
「早いとこそんな感じね!」
「良し!契約しよう!」
「契約の手順だけど私の両手を握って私が自分の名前を言ったらユメは目をつむって自分の名前を言って?両手が離れたら契約成立よ!」
「分かった!」
ユメは女神に近づき両手を握る。
「我が名はナナリー。」
ユメは目をつむり
「俺の名はユメ。」
すると唇に柔らかい感触がした。
「んっ...んんん?!」
ユメは目を開けるとナナリーがキスしていたのを目の当たりにしとっさに離れる。
「なっなっなっ...俺のファーストキスがあああ」
「契約に必要だっただけよ!それにユメの夢の世界なんだし大丈夫よ!それにもう死ぬんでしょ?」
「だが...ファーストキスはファーストキスだあ」
「私だってファーストキスなんだからぁ...」
「...」
その場に変な空気が流れる。
「ん?これはなんだ?」
俺の右手首に鎖がまかれて黒いサイコロがついていた。
「それが契約の証よ。無くなる事はないから気にしないで」
「違和感が少しあるが...まぁ気にならないか。んじゃあサクッと死んでくるから元の場所に戻してくれ!」
「頑張ってね!」
その時の笑顔は駄女神なくせにちょっと可愛いかった。
俺は目を覚ます。
「ねむっ。変な夢見たなあ...」
俺は起き上がり右手を見ると手首に黒いサイコロがついた鎖がまかれていた。
「夢じゃなかったか!!なんて良い日なんだ!ナナリー感謝する!!」
俺はスキップしながら風呂に向かった。
「どうやって死ぬかなあ~ふんふんふん」
俺は鼻唄を歌いながら風呂に入って本気で死に方を考えた。
「残り7日か...」
残り7日...どんな事が起きるのか楽しみです。