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真夏のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 真夏のミステリーツアー参加者一同
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「大地少年の事件簿」 真咲タキ 【推理】

(クイズ式短編)


 私は神田大地。1年前の夏、私には彼女ができた。

 彼女の名は伊達ほのかと言う。笑うとエクボが浮かぶ可愛らしい女性だ。

 彼女と過ごす時間は夢のようで、気づけばあっという間に時は過ぎて、大学受験がやってきた。そして大学受験を終えた私達は遠く離れた地で桜の季節を過ごした。


 私達は大学に通うために引き離されてしまった。

 2人を隔てる距離の壁は厚い。電車で6時間の道のりだ。私は貧乏で飛行機に乗ることができない。そんな私達は夏休みに入り、再び再会する約束をした。


 一緒に彼女の住む福岡で夏祭りを楽しむ約束をしたのだ。


 私は今、電車に揺られて彼女の住む福岡へ向かっている。電車の中は冷房が効いているというのに、それを打ち消さんばかりに人でごった返している。

 目の前のサラリーマンの手には家族へのお土産だろうか、可愛らしいイラストの書かれた紙袋がぶら下げられている。サラリーマンの首筋からは汗が玉のように吹き出して、首に一筋の線を描いて落ちていった。


 正直暑い。ここは日本なのだろうか。


 私は彼女の住む福岡まで、この状態を6時間も耐えなければならないのだろうか。こんなに夏は暑いものだったのだろうか。


 大変な夏休みになりそうだ。


 ガタン、ガタン

 電車は進む。バテることなく進む。電車にとって暑さはなんの障害にもならない。ただただ線路を走るだけなのだ。


 …………


 5:00祭りが開始する時刻になり、私は彼女と会うために祭り会場へ向かった。

 まだまだ明るい時間であるが白い空には月が浮かんでいた。


 私はポケットからスマホを取り出し、ほのかにLINEでメッセージを送った。

 するとすぐに既読がつき、電話がかかってきた。


「もしもし、ほのか?今着いたよ。、、、うん、うん、そう。会場の入り口」


 返事をしていると、目の前に赤い浴衣をきた可憐な女性がテトテトとやって来た。その女性は可愛らしいエクボを浮かべて言った。


「久しぶり!ダイちゃん」


 ………………


 私達は話した。どんな風に夏を過ごしていたかを。

 彼女は女友達と海に行ったらしい。


 ナンパされなかったか聞くと、彼女はおかしそうに笑ってこう言った。「されたと思う?」


 私はただ笑った。まったく、彼女には敵わない。


 そんなこんなで夏を楽しみながら、私は彼女と(たこ焼き)を買って食べた。熱かった。しかし、うまい。

 やはりたこ焼きにハズレは無い。



 彼女と歩を進めて、次は何を食べようか話した。

 やはり祭りと言えば(かき氷)は外せないだろう。

 思った通り、かき氷は祭りの雰囲気も合わさり最高だった。


 かき氷の次は(アイス)を食べた。私にとってかき氷もアイスも変わらないのだが、彼女からしたら違うらしい。まったく、女性の考えることは難しい。


 では他には何を食べようかと周りを見ていると(野菜スティック)が売っていた。

 私は手で野菜スティックをつまんで食べ、彼女も少しずつ野菜をつまんでいった。


 ………….…


 しばらくすると、どうもお腹が痛くなってきた。

 意識が薄れて、吐き気がする。


 おかしいな?


 どうしたんだろう。







 私は自分の体が地面に倒れていくのを実感した。隣からはほのかの悲鳴が聞こえた。



 …………

「神田さん。あなたは食中毒にかかったようですね」

「先生、ほのかは大丈夫だったんですか」


「彼女さんからは黄色ブドウ球菌は検出されませんでした」


「黄色ブドウ球菌?」

「ええ、あなたの唾液からは黄色ブドウ球菌が検出されたんですよ。おかしいですね。あの後衛生局に連絡して祭り会場の出店の全てをチェックしたのですが、特に異常はなかったんですよ。あなたの食べた野菜スティックを除いてはね。


 しかし、あなたの食べたカップからしか検出できなかった。まったく不思議なものだ」


 ………


 さて、全ての情報はあげられた。皆さんはどういう過程で黄色ブドウ球菌を取り込むことになったかわかりますか?

 菌については常識的に考えて下さい。ヒントは次のまとまりに有ります。

 解答はその次のまとまりにあります。






















 ヒント

 1.菌が育つには湿度、餌、繁殖時間が必要。

 2.どうやって彼だけ菌を感染させるか?

 3.時間

 次のまとまりに解答があります。












 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 では解答編に移ろう。


 菌はどこで大地に移ったのだろうか?まずは単純に食べた食品について注目しよう。最後の文まで読むと途中に()がついた名称があるはずだ。それが祭りで大地が食べた食品である。


 1.たこ焼き

 2.かき氷

 3.アイス

 4.野菜スティック


 この中で菌が繁殖しやすいものはなんだろうか?

 たこ焼きは出来立ての描写があり、まずないだろう。

 そしてかき氷、アイスも冷たいものであり、ヒントにあげた菌の増殖条件に当てはまらない。

 となると野菜スティックで感染したことが考えられる。

 しかし、これは一部が正しい誤りである。


 これでは大地の食べた野菜スティックのカップにだけ菌が付いていたことを説明できない。


 そこで注目してもらいたいのがどうやって1〜4の食品を食べるかである。これらの食品のうち手を使って食べたのは野菜スティックだけである。また、1〜3は手を使って食べたとは到底考えにくいものだ。1ならば箸や爪楊枝、2ならばストローやスプーン、3ならばバーを持って食べるだろう。


 これで感染経路は大地の手であることが特定できた。

(カップに初めから菌がついていたと考えた人は野菜スティックをつまむ手がカップを持っていない手であることに気づいてください)


 ではいつ大地の手に菌がついたのだろうか?


 よく読むと文中に菌の増殖条件が揃っている場面がある。

 電車の中だ。この中は高温、多湿になっていることが伺える。では菌のエサはなんだったのだろうか?


 これについては時間設定に注目してもらいたい。

 祭りが始まったのは5:00であり、その前には6時間大地は電車に揺られている。

 しかも描写から5:00とは17:00のことだとわかる。

 では17:00の6時間前とは何時だろうか?

 電車から降りてすぐに会場に行ったと考えても11:00に電車に乗る必要がある。


 となると考えられる菌のエサとはなんなのか。

 それは昼食である。もちろん、大地の皮脂がエサになった可能性があるが、こちらの方が納得のいくものだろう。


 実は6時間という時間設定は

 1.電車内で菌を含んだ食べ物を食べた可能性を薄める

 2.菌が繁殖するための時間

 3昼食を食べたと考えるための布石

 のトリプルミーニングを持っていたのだ。


 では今回の流れをおさらいしよう。

 電車に乗った大地は昼食を食べた。そしてその際手に付着した食べかすに黄色ブドウ球菌が取り付き、電車内の高温多湿もあいまって大地の手の上で増殖し、毒素を生成した。


 そして祭り会場につき、たまたま手を使わずに済む食品を始めに食べた。しかし、ついに手を使って食品を食べてしまった。

 その結果、大地は体内に菌と毒素を取り込むことになり、大地の食べたカップにのみ菌が付着した。

 そしてしばらくたち、菌は大地を蝕みついに大地は倒れてしまった。



 別解)

 大地が触っていたスマホに菌とその餌が付いていて、彼女に連絡しようとした時に大地の手に付着した。

 ………………

(死因?)毒殺?

(凶器)毒?

(犯人)大地自身


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