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真夏のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 真夏のミステリーツアー参加者一同
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「ある夏の罪 ――ツーリングで出会った奇妙な少年―― 8. 悪夢」 夢学無岳 【ホラー×サスペンス】


  悪夢




 真夜中、突如、わたしは目を覚ましました。テント内が何かおかしいと感じたのです。わたしはゴロリと寝返ると、そこにはA君がいました。彼はテントの入り口にしゃがんで、わたしを見ています。わたしの口から「ひっ!」と声がもれました。


 たき火を背にして、彼の表情は分かりません。入口のファスナーは大きく開けられていて、テントには黒い手形がいくつもついていました。


「お兄さんの肉は無駄にしません」


 A君は静かに言うと、両手で持ったナイフを、わたしの首を目がけて、頭の上から振り下ろしました。


「うわあああ!」


 わたしは思わず叫び、身体を守ろうとしました。その瞬間、わたしの意識のチャンネルが変わりました。彼がいません。わたしは身体を伸ばして寝ていました。



 夢だったのか……。わたしはそう思って安心しました。



 少し落ち着いてみると、おかしな感じがします。何だろうと思って、辺りをよく見ると、目の前に、宝石のように美しい天の川が見えました。テントの屋根がないのです。がばっと起きようとした時に、気がつきました。わたしはテントの中にいません。土を深く掘った、棺桶のような穴の中にいました。わたしは立ち上がろうとしましたが、下半身はすでに土に埋まって動きません。わたしは混乱しました。


 そこへA君がやって来ました。穴のきわに立ち、星空を背にして、わたしを見下ろしました。


「お兄さん、土にかえって、土壌を豊かにしてください」


 彼はそう言い、シャベルで、ザクッザクッと、わたしに土をかけました。土の重みで、どんどんと胸が圧迫されてきました。


「待て! やめろ! 何するんだ! 助けて……」


 声も虚しく、わたしは徐々に土に埋まっていきました。懸命に手を動かして、土をのけて脱出しようとしましたが、うまく手足が動きません。頭にかかる土を払うのが精いっぱいで、それも追いつかなくなると、わたしの顔は土に埋もれ、完全な闇となりました。


 しばらくして何かがおかしいと感じました。自分が土に埋まっているのに、呼吸ができるのです。わたしは、これも夢なんだ、と思いました。そして一生懸命「夢から覚めろ、夢から覚めろ」と念じました。



 すると、いつの間にか、わたしはテントに戻っていました。身体を丸めて寝ています。咽喉に傷はありません。テントの入口も閉まっています。土の感触はありません。ただ心臓の鼓動が、競馬場で疾走する馬の足音のように激しく、口の中が砂漠のように乾き、そして洪水のように汗をかいていました。


 起き上がろうとした時、膝に、電気のような、びしっとした痛みが走りました。わたしは、この痛みで、今度こそ現実に戻って来たと感じました。

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