4ダイス目 無性欲の苦悩
下ネタに走るのが楽しい
それじゃあいくつか質問していいか?気になることがたくさんあるんだよ。
『うん、いいよ。まだ答えられないこともあるけど、言うだけならタダだしね』
まず、あの家を用意してあの手紙を書いたのはニャルだよな?
『そうだよ。備品も全部ボクが選んだ物さ』
オッケー、じゃあなんで用意されてる服の半分以上が女物なんだ?正直なんで俺が喚ばれたのかとかこの世界についてとかよりもそれが一番気になる。
『あれ、お気に召さなかったかい?この世界の女の子が普段から着てる服を数着ずつ拝借したのに』
…………は?
『大変だったんだよ?APP17以上の女の子を探してその子の着てる服をバレないように脱がして持ってくるの』
………………は?
『できるだけバリエーション豊かにしたかったから貴族の令嬢とか科学都市の街娘とかスラム街の女の子とか、ダンジョンに潜ってる魔法使いのローブとかも脱がしたし、後は教会にいた聖女の服とかも』
……………………は?
『みんな脱がしてあげると驚愕と羞恥と絶望で悲鳴上げてたなぁ。つい面白くなっちゃって脱がし過ぎちゃったっけ』
…………………………は?
『とまあ、生で女の子達が着てた服を持ってきた訳だけど、気に入らなかった?女の子の匂いも残ってたと思うけど』
………………………………。
――SANチェック――
77>1d100→46
成功
77→76
『え!? なんで今SANチェックしたんだい!? しかも確定1減少!? 男なら泣いて喜んで自慰する所だろう!女の子のパンツを使って!』
い、いや、とりあえずニャル、人間の男に対する偏見が激しい。本当に俺が喜ぶと思ってやってるってことに狂気さえ感じるよ……。SANチェックするのもやむを得ない。あと変態発言は自粛しようか。
『おかしいな、ボクも顕現するときは男の姿だから男の心や考え方はちゃんと勉強したはずなんだけどなぁ』
ニャル、本音と建前って言葉知ってるか?頭の中で考えてることと表面に出すことは一致しないんだぞ。
『もちろん知ってるさ。だけどこの場にはボクとキミしかいない。ならキミが女の子の下着に性欲を吐き出したりhshsprprしたところでなんの問題もないじゃないか!偽善者ぶっても何も得られないよ』
……確かにそうだな。法律は日本じゃないから考えないでおいて、その他だと悪化してるから言葉を自粛しろとしか言えない自分が悔しい。ところでニャル、俺はそんなことをしたいと考えてるか?
『何を言っているんだい?キミも男なんだから頭の片隅や心の端で考えてるはず……考えてない!? どこを探してもニャルがちょっとキモすぎるとか邪神だから仕方ないかとかそんなどうでもいいことしか考えてないじゃないか!性欲が無いなんて、キミは男かい?それどころか人間なのかさえ疑わしいよ』
もともと性欲が無い体質なんだからこればっかりはどうしようもないだろ。お前本当に男かよ!って言われたのも両手じゃ数えきれないし。てかそれがどうでもいいことでいいんだ。
『まさか、三大欲求の一つが無い人間がいるなんてね……。人間という種族が生まれてからずっと見てきたけど、キミのような人は初めて見たよ』
はぁ、俺の性欲は放って置いて、あの女性服の山、どうするか……。
そう思いつつ、俺は立ち上がり家へと向かう。いきなり出てきたニャルのせいでレッドワームの死体を細切れにする謎の人になってた。
『うーん、これはちょっとわかりにくいね。こうしよう』
(ん?なに言ってるんだ?)
『いや、なんでもないよ。ただのメタ発言だから』
(なるほど。なら気にしたら負けだな)
そんな会話をしている間に家に到着。そこまで離れてなかったからな。玄関を開けて書斎へと向かう。そしてクローゼットとタンスを開く。クローゼットにはできる限り端に寄せても半分以上のスペースを取る女物の服。タンスには半分以内に収めようとすると溢れる女物の服。言われるまで気にしてなかったけど、確かに甘い香りがする。しかもAPP17以上保証。通常の男ならそりゃ泣いて喜ぶんだろうけど、俺はなんでかそういったモノに対してどころか全ての物に対し性欲自体が湧かないからなぁ。
はぁ。この服、返さないとなぁ。異世界初日で女の子に服を返しに行くことが決定するってどういうことだよ……。
『どうしたんだい?女の子の匂いに興味があるのかい?ナニするのかい?』
(興味なんて無いよ……少ししか。ニャル、この服の持ち主ってわかる?)
『もちろん。それぞれの服を着てた女の子の外見は覚えてるよ』
(住んでる場所は?あと名前)
『うーん、何人かの名前は覚えてるけど……住所は全員必要ないと思って忘れちゃったなぁ』
(必要ないってなに!?)
『ほら、喚んだ人が名前とか外見とセットじゃないと興奮できない性癖かもしれないじゃないか。無性欲だったけどね。ただ、住所は盲点だったよ。王女とか聖女みたいな有名な人のいる場所ならわかるけど。確かに実際に合わないと興奮できない性癖だったかもしれなかったしね』
(有名人の居場所ならわかることを喜ぶべきか、そもそもニャルがそんなに凄い人から服を盗ってきたことを嘆くべきか……)
『ねえキミ、性欲は無くても女の子の匂いに興味はあるんだよね?嗅いじゃいなよ』
(お前は俺の中の悪魔か何かか。……邪神だからあながち間違いじゃないという。無念。それはさておき、沢山物が入るバッグとかあったりする?)
『次元収納のバッグかい?そんな高価な物は無いけど、代わりにボクが空間収納のスキルをプレゼントしてあげられるよ』
(空間収納のスキルでも物を沢山持てるんだよな?なら頼む)
『はいはーい。……っと、これで空間収納が使えるはずだよ』
――空間収納――
触れている物を異空間に収納する事ができる。また、収納した物を手の届く範囲に取り出すこともできる。収納可能な量に上限は無く、収納されている物の時間は止まる。ただし、生きている物を収納することは不可能。
『手で触れて念じれば収納できるよ。心を読んでるからやろうとしてることはわかるけど、その前に嗅がなくていいのかい?』
(心を勝手に読まないでくれないか?)
『ちぇっ、仕方ないなぁ』
ニャルに呆れつつ手近な所にあった赤色の優美だがやや小さいドレスに触れ、収納と念じる。ドレスが消え、脳内に漠然と収納しているというイメージが表れた。脳内の感覚に慣れたくなかったなぁ。
次にドレスを取り出すと念じる。すると目の前にドレスが出現する。その後も収納と取り出しを繰り返し、空間収納の使い方に慣れておく。ドレスにシワがついてしまうけど仕方ない。
『ちなみにそのドレスはミルフォス帝国の帝王子女であるリーナ・ミルフォスが舞踏会で着ていたドレスだよ。確か9歳を記念する誕生日パーティーの舞踏会だったかな。誕生会で突然全裸になった娘を見た帝王の表情は面白かったなぁ』
無言でドレスの形を整え、綺麗な状態にしてから収納する。
その後も同じように大量にある女性服を収納していく。ただ服を手に取る度に服の持ち主の解説をするのはやめて欲しい。
終止無言で勝手に服に触ることを脳内で謝り続けながら収納すること30分。ようやく最後の1枚だ。残ったのは薄紅色のパンツ。小さなフリルがあしらわれている。……まあ、下着を後に残しちゃうのはもう必然としか言い様がないよね。罪悪感からついつい下着を後回しにしてしまうという。
パンツに触れ収納すると念じ……
「スー」
『やあ変態。パンツの匂いはどうかな?ちなみにそのパンツはどこかの村の13歳のアルナ・クーミって名前の女の子が穿いてたパンツだよ』
(うるさい。変態って言いたかっただけだろ。あとさっきから若くないか?)
『この世界では14歳で大人だよ。平均寿命は70歳だけどね』
(………………。)
無言で最後のパンツを収納する。ほんのり甘い香りがした……気がした。
――ステータス――
名:相津聡
職:探索者
STR:10
CON:13
POW:14
DEX:9
APP:10
SIZ:13
INT:14
EDU:13
初期SAN値:70
現在SAN値:76(1DOWN)
最大SAN値:89
幸運:70
アイデア:70
知識:65
ダメージボーナス:+0
HP:13
MP:14
技能
オカルト:45
回避:18
化学:36
聞き耳:50
クトゥルフ神話:10
芸術《CoC》:51
コンピュータ:41
生物学:51
図書館:50
博物学:40
物理学:21
異世界言語:51
日本語:65
目星:50
スキル
《Nyarlathotep》
異世界言語理解
空間収納(New)
用語説明
・APP
外見。内面の性格の良さをこれで表す場合もある。大体15以上で美男美女と評される。18が最高値である。
ダイス表記説明
――SANチェック――
77>1d100→46
成功
77→76
この場合77(現在SAN値)が成功値で、1d100の結果の46は77以下なので成功。現在SAN値が77から1減少し76になった。
状況によって減少値は変動する。減少値が0、もしくは1で無い場合、減少値をダイスで求めるのが普通である。
成功した時と失敗した場合の減少値は異なるが、この小説ではあえてもう片方の減少値を表記しない。