レイラ
■西暦 12021年 レイラ視点
バババババ!ヒュンヒュンヒュン・・・
ズドーンズドーン
わたしは人生最後でなるであろう最後のブルーマウンテンを飲みながら、
ドラッグ、、いや昔風に言えばシガレットをこれまた昔めいたかたちでふかしていた。
「はやく!レイラ、もう時間がない!こっちきて!!」
ボブがわたしを無理やり突き飛ばした。
「レディのお尻をむやみに触るもんじゃないわよ?触るならもっと情熱的に・・・ね?」
わたしはぶつぶつと小言を言いながら、体魂分離装置、、まぁ見た目は冷凍カプセル、、
というよりも棺桶ね・・・に向かった。
ここ地球では数千年前からなにものかに攻撃をされている。
どこからミサイルが飛んで来るのか、今の地球の情報力・技術力では分かっていない。
ミサイルは、母艦ミサイルと呼ばれるひとつ落ちれば地球の1/3を破壊するものを、
小型の衛生ミサイルが護衛しているのだ。
月にコロニーを作り、そこから母艦ミサイルを迎撃しつづけて数百年。
よく耐えてきたが、地球のほとんどがミサイルによって破壊され、人類は1/10程度まで減少していた。
そして今日まさにコロニーから最後の連絡が入ったのだ。
「これまでにない超巨大母艦が接近中、迎撃不能、
爆発レベルは地球すべてを粉とする破壊力」
人類は考えた。
地球に変わる星を開拓できていない今、できることは何か。
死か。
宇宙脱出か。
宇宙脱出の計画はすでに実行に移されていて、エネルギーさえ確保できれば
地下空間で酸素を作り、光を作り、さらに地球からさまざまな種子を持ち込むことで、
実現可能とされていた。
しかし、志半ばにしてその星は爆発してしまったのだ。
死。
このままこの美しい地球を枕にそれもありかもしれない。
脱出。
宇宙脱出も即死につながるわけではない。
今はエネルギーをほんの数ミリのバッテリーに溜め込むことができる。
10年はまず宇宙を漂流しても生きていけるだろう。
その間に地球のような星を見つけることができれば、、
生きれる可能性は1%くらいあるかもしれない。
しかしレイラはどちらの選択肢も選ばなかった。
レイラは、体魂の分離により魂のみ生き続けるという選択をした。
そんな装置を開発したのはもちろんレイラ本人である。
幽体離脱、金縛り、などというオカルトティックな話ではない。
心と体を物理的に分離するのだ。
心と呼ばれる部分は脳だ。脳情報を原子レベルに分解しそれを魂として離散しないよう、
ひとつのモノとして融合させる。つまり平たく言うと、霊的なものとしてではなく、
一個の生命体(ただし目には見えない)として生まれ変われるという装置である。
レイラは恋人のボブと一緒に肉体は冷凍し宇宙を漂流させ、その棺桶を目印として
魂として生きることを選んだのだ。
「ボブー?最後に、、、その、、、しない?」
バストを揺らし誘ってみた。
「そんな気分じゃないよレイラ。けど最後のキスをしよう」
「んっ・・チュ」
「ありがとうボブ。じゃあ永遠にお別れね。」
「魂同士で交信できればいいのにな。どうしてそこ開発しておかなかったんだよ」
コツンとボブはわたしの頭を叩いた。
「さて、それじゃもうカウントダウンがはじまってるみたいだし、いっちょ分離しますか!」
わたしは精一杯の虚勢をはって、分離装置へと入っていった・・・。
■西暦 2016 玲良視点
「玲良さーーーん!事件ですってーーー!なんか長野県のとある村で
人がいきなり全員死んでしまったらしいです。でもその中に1人だけ生き残りがいたらしくて、
事情を聞いてるんですが、何を聞いても答えてくれなくて。。」
わたしは大学を卒業し、今は政府付きの秘密捜査員として活躍している。
「よっ!玲良、まーた難事件ふっかけられたのか?」
ニコニコ顔で崇志がわたしの頭をクシャっとなでてきた。
「そうなのよ。あなたが行ってくれればいいのに、どうしてわたしが(ブツブツ」
「前にも行ったけど僕はあくまでも助教授だ。僕の力はこの世界じゃ使っちゃいけないんだよ。」
「なによ使っちゃいけないって・・わたしの心は読むくせにもう」
などと嘯きながら、崇志を上目遣いで見やり
「今日、食事でもいかない?」
と心のなかでつぶやいていた。。