異変
■西暦 2016 玲良視点
「ななな、なんで、ああ、あんたがここにぃーーー!!!!」
わたしは尻もちをつき、服装が乱れていることも忘れ・・叫んだ。
それはそうだ。自宅のしかも自分の部屋から、つい昨日会ったばかりの変な男が出てきたのだ。
「つつつ、通報するからね!!」
「ぴぴ・・トゥートゥー」
「こちら110番 お名前をおねがいいたしm・・」
「すとっぷ!!すとーーっぷ!がちゃ!」
急に切られてしまった。
「ちょっと話だけ聞いてもらえないかな?玲良ちゃんならきっと分かってもらえるからさw」
ニコニコと笑いながら崇志はわたしを起こしてくれた。
「玲良大丈夫?」
琴が心配そうに覗き込んでくる。
わたしは不安な気持ちもあったが、出会った時から感じていた崇志に対する不思議な包まれるような
感情がわきおこり、意を決した。
うん、とりあえずは話とやらを聞いてみよう。それから判断すればいいや。
琴にはわたしが1時間以内に連絡しなかったら警察を呼んできてもらうように頼もう。
「琴、よろしくね!」
「う、うん。玲良ちゃん気をつけてね!」
琴が去り、わたしはせいっぱい虚勢をはった・・、
「はは、話とやらを聞こうじゃないのよ?」
つもりだけど、ガクガクと体は震え、声もかぼそいものになってしまった。
情けない・・。
「うん。百聞は一見にしかずだからさ。一緒に玲良ちゃんの部屋に行こうか?」
「へへ、へんたい!!!恋人でもない人を入れたくないわ!それに何であんたがドアを
あけようとしてるのよ!ここは私の部屋よ!」
「まぁまぁ・・君の部屋は今逆側に行ってるからないよ。安心して。」
まーた意味わからないことを言い出してる。まぁいいや。のりかかった船だ。
ヤツにドアノブを引かれるのは嫌だから、わたしが先導して引こう。
「よし。いくよ!」
ガチャ。。
「ブーーーーーーーーーーーーーーーン ブーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
連続した機械音がなりひびいてきた。
足を一歩踏み入れて見たものは・・
「・・・・・・・え?ここ・・・宇宙?いや違う・・・」
思考が停止した。
実際に見えたものは、視界の上半分だけ夕方、下半分はモノクロ。
地面はなんだか魔術をとなえるような円陣みたいなものが、少しだけ宙に浮いて
くるくるとまわっていた。
「えーと簡単に説明するね。」
「ここはこの時代のタイムトラベルポートなんだよ。」
「???」
この人は何を言っているのかしら・・。タイムトラベルポート?タイムマシンってこと?
あんなのドラえもんの世界でしかあり得ないもののはず・・。
「わたしの部屋はどこいったの・・?」
「ちょうど今、19時23分だから・・もう帰ってくると思うよ。時間軸で表すと、18時位置くらいかな。」
わたしは崇志のその言葉を聞きながら、極度の頭痛がきて・・
パタン─
その場に倒れて気を失ってしまった。
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■西暦 2016 レイラ視点
「レイラ!見てるんだろ?おーーい。出てきてくれよ。」
「ぷっ・・」
「あはははははは!」
「崇志ったらだっさーーーい!小娘ひとりにわたわたしちゃってもう」
わたしはレイラ。
玲良とは体を共有している人格。ありていに言えば、二重人格ってやつになるのかな。
玲良はわたしの存在を知らない。レイラでいるときの記憶はほとんどない。
逆にレイラは玲良の人格の時に、ある程度コントロールできる。
玲良の記憶を操作することもできる。つまり、レイラと玲良が共存できているのだ。
「ついにこの日が来たってわけね。お久しぶりね、崇志」
「レイラ久しぶり。それにしてももうちょっとはやく出てきてくれよ。それに笑いすぎだ。」
「だってー面白かったんだもん。ずーーーっと。ずーーっと待ち続けたファーストコンタクトじゃない。大事にしないとダメよ、こういうのは。」
「そうだけどもさ。どうするよ、玲良ちゃん気絶しちゃったよ。」
「そうねぇ・・適当に記憶をつないでおくわ。そのかわり向こうのわたしに奉仕しなさいよ、崇志?」
「わかってるよ・・いつもしているじゃないか?」
「あら~足りないわよ。どんどん人が少なくなっているのよ?もっともっとレイラ様を崇めてもらわないとね。」
「へーいへい」
「さて玲良も寝ているしちょうどいいんじゃない?ミッション、こなしちゃおうよ?」
「やる気だねぇいつもながら尊敬するよ、レイラのその行動力」
「ふふふw」
レイラであるわたしは未来の・・というと近い未来を想像するかもしれないが、
地球という星すらも滅んでしまった更に先の未来のモノである。
目的は失敗した未来をかえること。
そのために、その時代・時代で崇志という相棒と歴史をまげようと奮闘しているのだ。
玲良に宿ったのは、玲良が生まれたときから決まっていたこと。
「この時代のミッションはなんだっけ?」
それぞれ未来へつむぐ時間軸には分岐点というものがある。
その分岐点で正しい方向へ導くのがミッション、と呼ばれるものなのだ。
「えーーと。ウイルスというか、細菌だね。それの除去だよ」
「あぁ・・あのウイルスか・・あのウイルスでかなりの人が死んでしまって、更に兵器までできちゃうのよね。」
「うん。だからそれを食い止めなきゃならない。」
「あいあいさーっとな」
あれは確か、尖閣近海の海底から掘り起こされた新種のウイルスなんだっけ・・・。
「あ、琴に連絡しておかなきゃな。それと玲良の職場にも長期でお休みすることを伝えなきゃ。」
この時代で生きていくための諸々の手はずを整えてわたしたちは旅だった。
■西暦 2016 尖閣付近 石油掘削地
かゆいかゆいかゆいかゆいかゆい・・・
喉がかゆい、かゆい
「おーいお前どうし・・え!?やめろ!喉をかきむしるのをやめろ!」
かゆいかゆいかゆいかゆいかゆい
かゆいかゆいかゆいかゆいかゆい
海底深くまで掘り進み戻ってきた作業員がのどをかきむしりながら・・死んでいった・・。