出会い
はじめて書いた小説です。よろしかったら呼んでみてね!
■西暦 2016 玲良視点
「ブブブ・・ブブブ・・」
携帯のバイブモードで意識を取り戻す。
うっすらとまぶたをあげ、また閉じる。
まどろみの中で瞬間的にいろいろな事件がおきてはきえ、
はっと目を覚まして時計を見ると、ものの5分もたっていない。
夢の中での時間軸と実際の時間軸は同一ではなく、
わたしはいつもこのトリックにしてやられるのだ。
「ん・・もう起きるか・・。それにしてもどうしてバイブが。。」
そのまどろみの中で淡い朝の日差しを感じながら
スマートフォンへと目をやり、セブンスターに火をつけ、煙をくゆらせ、
時計へと視線をうつす。
あぁいつもの起きる時間の目覚ましだ。
とりあえず仕事に行くためにのそのそと起き上がり、鏡台へと向かう。
「・・・ひどい顔・・」
泣きはらした涙のあとが残ったまま・・寝てしまったらしい。
そうだ・・思い出した。
昨日わたしは親愛なる彼にふられたのだ。
それもよく分からない理由で。
「玲良ごめん。人の寿命だけはどうにもならないんだ。僕は明日死んでしまう。
だから玲良、今までありがとう。そしてこれからもよろしく。別れよう」
「バカ・・」
思い出すだけでもイライラする。
それにしても、昨日の彼はひどくびくびくしていた。
まさか本当に今日死ぬと信じているのだろうか。
「昨日は泣いちゃってゴメン。よければ今日また会って食事でもしない?」
LINEを入れてから、バスへ向かい身支度を整える。
今日も代わり映えのしない1日がはじまろうとしている。
彼の名前は金城 崇志。出会ってから昨日でちょうど5年。
はじめて出会った記念日をささやかに祝おうと思いわたしは綿密なプランをたて、
崇志を呼び出したのだ。しかしそのプランも台無しになってしまった。
崇志との出会いは唐突だった。
わたしは当時大学の三回生で、
テニスサークルで知り合った、琴と旅行に行く計画をたてていた。
琴は名前を、三条琴といい、わたしのキャンパスライフは、琴がいないとはじまらない、
そこまで言っても過言ではない親友だ。
そんな琴との何気ない幸せな時間。
そこへ彼がやってきたのだ。
「玲良ちゃん、三石玲良ちゃんだよね?」
「はい。あなたは・・学内で見かけたことがありませんが、どなたですか?」
「あ、そうか。玲良ちゃんはまだ僕のことを知らないんだね。
この春から、考古学の平峰教授につく助教授として赴任した金城 崇志。よろしく。」
わたしは硬直した。
どうしてこの人は、わたしだけに話しかけてきたのだろう。
気になるのは、僕のことを知らないんだね・・という言葉。
まるでお互いに知っているのが当たり前という感じ・・。
警戒信号がなり、わたしはこう続けた。
「助教授さん・・ですか。よろしくお願いします。今はサークルのメンバーと軽井沢旅行の
計画をたてていますので、もし何かわたしに用がある場合は、庶務のほうをとおして連絡をお願いします。」
「あぁ、そうか。いきなり不躾だったね。それにしても玲良ちゃんはいつの時代もかわらないな。
それではまたね。あ、その旅行中に身内で事件が起きるかもしれないからやめたほうがいいよ。」
そう言い残して崇志は去っていった。
「玲良~なんなの?あの人?いい人いないとかいいながら隅に置けないな。」
琴が冷やかしてくる。
それからのわたしは、琴と話す幸せな時間にもかかわらず、何か上の空で、
はじめて会ったばかりの崇志のことを考えていた。。
やがて計画した旅行の日がやってきた。
わたしはどうしても崇志の言葉が気になったので、両親へこう言った。
「わたしが不在の間に事件がおきるかもしれない。天災ならすぐ逃げること。避難地図ここにあるから。
それから病気や発作の場合はすぐ救急車呼んでね。ワンプッシュでかかるように登録しておくから。」
そんなわたしをいぶかしげに両親はながめ、
「そんな心配しなくても大丈夫だよ。琴ちゃんと楽しんでらっしゃいね!」
と言いわたしを送り出してくれたのだった。
それがわたしがこの世界で両親とかわした最後の言葉だった。
軽井沢を満喫し、予定の2/3スケジュールをこなした
わたしのもとへ、別荘のオーナーさんが
駆け寄ってきた。
「三石さま。ご両親が失踪したそうです。」
失踪??
天災や病気ではなく失踪とはどうゆうことだろう??
話はこうだ。
両親は老齢にもかかわらず、多彩な趣味を持っている。
父親は俳句の会、麻雀の会、園芸の会
母親は敬虔なクリスチャンでボランティア活動、絵画教室、陶芸教室
悠々自適な生活を送る両親であるがゆえに、平日は毎日スケジュールでいっぱいである。
そんな両親が、わたしが旅行に出た日から、まるまる二週間、どこへも姿を表してないらしい、ということだった。
わたしはすぐGPS追跡をしてみた。
しかし両親の反応はどこにもなかったのだ。。
「琴、ごめん。あと一週間あるけどわたし帰るね。」
「玲良が帰ってわたし1人でどうしろというのよ。一緒にかえろ。」
琴はそういってくれた。
お互いにすぐ帰り支度をし、練馬へある実家へわたしと琴は一目散へと戻った。
「鍵・・かかってる。」
心臓がばくばくいいだした。色々な不吉な妄想がうかでくる。
家の中で死亡しているかもしれない・・という諸々の覚悟をし、
わたしは懐から鍵を出しあけて入ってみた。
「おかーさーん、おとーさーん」
呼んでみるが反応はない。
琴と2人で部屋をひとつづつ確認していった。
台所・・居間・・寝室・・トイレ・・バス。
どこにもいない。
わたしは自分の部屋へと歩をすすめた。
「ガチャ」
!!!!
誰かがわたしの部屋にいる!
わたしは琴と目配せをし、ずりずりと後退しようとして、
「ずでーーーん」
転んでしまった。
と、わたしの部屋から一人の男性が現れた。
「あれ?玲良ちゃん。こんにちわ!何やってるの?あはははは」
その男性こそ、わたしの未来の彼、崇志だった。
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■西暦 2016 レイラ視点
彼はわたしの人生の恩人なのだ。
"転ばぬ先の杖"ということわざがあるが、まさに彼はわたしの人生の
杖でありいつでも笑顔をたやさず余裕があり、わたしの人生を導いてくれた。
なんというか、すべてのこの世の未来を知っているのではないか?と
思うくらいはじめて出会った時から、わたしのことを知っていた。
わたしのこと以外にも、簡単な未来予知みたいなことをして、それがすべて当たるのだ。
空恐ろしく思うこともあったが、彼から発せられるわたしへの愛情というかパワーが尋常ならざることを察し、わたしはそれに答えただ彼を思い続ける。
彼に対する不満はひとかけらもなく、過ごせば過ごすほど彼のことを好きになっていく自分がいた。
彼と出会ってからのわたしは、幸福でいっぱいだった。