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少し時間は経ち、通学ラッシュで道が賑わっている中、沙耶は居た。
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目的地である学校へ黙々と足を進めていると周りからにぎやかな声が聞こえてくる。
それもそのはずで、あと少しで学校というだけあって生徒がたくさんいた。
「梁取さん」
名前を呼ばれて心臓が跳ねながら私はゆっくりと振り返った。
「神木君…おはよう」
「おはよう」
はにかむ神木君は、朝から会えるなんてついてるなと眩しすぎる笑顔で言ってくれるので顔が赤らむ。
なによりその言葉に体温が上昇するのが分かったけれどこちらも嬉しいという気持ちを伝えたい。
「わ、私も…「瞬ちゃ〜ん!ヒドい!何で万里のこと置いていくの!?」
とてとてと走ってきた万里さんは顔を紅潮させて神木君と向かい合うとぷぅと頬を膨らませ、私は続きを口に出来ないままそのやりとりに釘付けになってしまった。
その姿も本当に可愛くて、ついつい二人を見入ってしまう。
美しいなぁ…と。
「置いて行くも何も…一緒に来てないだろ」
「だから!何で万里を待たないで行っちゃうのよ!」
「二人共時間まちまちじゃないか…待ってたら遅刻するだろ」
万里さん達はいつも来る時間が違うらしく、神木君は少し困った顔で返答している。
聞いている感じではどうやら待っていて遅刻をしたらしい事がうかがえる。
そんな二人の討論(?)に後から来た龍太君が欠伸をしながらピシャリと返す。
「つーかいっつもお前がなんだかんだ言って時間通りに行かないからだろ」
この前は散々瞬を待たせたあげく、髪が決まらないからとかくだらねー理由で学校休むし。と呆れた顔をしながら万里さんたちへ近づく。
「あんたなんかにこの繊細な気持ちなんか分からないわよ」
「分かりたくもないね…」
お互いギロリと睨み合う横で実に爽やかに神木君は私の手を取り、行こうかと笑顔で促す。
もちろんその笑顔にかなうはずもなく、後ろの二人をそのままにしていいのかという心配も少ししつつ、ついて行く。
だって、これ、手を繋いでるんですよ!?
どうしよう…緊張で手に汗かいてないかな。
そんな心配をしていると後ろから万里さんの叫び声が聞こえた。
「あ〜!瞬ちゃん!待ってよ!これっ今日のココア!」
「ばっ!!お前まだ懲りずに持ってきたのか!?」
「うるさいわね!あんたは黙ってて!」
「黙ってられるか!!それで何度瞬を殺しかけたと思ってんだ!?」
え!?と神木君を見ると心なしか目が虚ろと言うか顔色も悪い。
「ちょっと!誤解受けるようなこと言わないでくれる!?ちょっと失敗しちゃっただけじゃない!」
よく分からないけどココアって失敗とかあるのかな?と話を聞きながら考えているとついに耐えられなくなった龍太君が叫ぶ。
「ちょっと!?何がどうして失敗でウナギが入る!?」
「え〜だってウナギ滋養にいいって言うし、万里わざわざ買ってきたんだよ?愛だと思わない?それに今日はウナギじゃないよ」
はい瞬ちゃんと笑顔で容器を差し出すその姿は可愛いのに何故か怖く感じた。
どうするのかと神木君を見ているとすかさずやってきた龍太君によってその容器は空を舞い、姿を消した。
そう、投げられたのだ。
「あ〜!!何するのよ!?万里の栄養ドリンク!!」
あ、やっぱりただのココアじゃないんだと思いながら二人を見る。(どうやら神木君もそう思ったようです。)
「瞬にやる前にまず味(毒)見しろ!!」
「万里の愛のドリンクは瞬ちゃんだけのものだもん!貰えないからってひがまないでよね!」
誰がひがむか!と再び口論になり私は神木君に手を繋がれたまま無言で先に進んだ。
正直このままでは学校に着く頃には完全に遅刻してしまう。
二人には申し訳ないけれど、以前もこんな感じで遅刻してしまったのだから許してほしい。
にっこりと笑う神木君につられて私も笑みを返す。
多分このときの私は幸せすぎて周りの声が聞こえていなかったんだと思う。
その直後、万里さんの怒った声と同時に私のスカートがふわりと浮く。
「ま、万里!?」
「万里の目の前でいちゃつかないでよ!」
何が起こったのか分からず固まってる私に万里さんはクスリと笑って言った。
「色気のない下着…瞬ちゃんかわいそぉ〜」
「ま、万里っ!!」
神木君が万里さんに怒ってくれていたけど私はその事よりも今自分に起きた出来事に頭がいっぱいになりながらも、現実と向き合うことが出来ず放心するしかなかった。
こうして私の日常が始まった。
ポイ捨てはダメです。




