表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここあ  作者:
1章
4/8

3

 軽やかな動きにスカートが踊り、すれ違う人はその姿を目で追った。

 視線を浴びている可憐な少女は、前方に愛しい人の姿を見つけるとすぐさま飛びつき腕を絡ませる。

「万里またお前は…」

 瞬は絡められた手を離そうとするが意地でも放すまいとする万里によってそれはかなわず、半ば諦めてしたいようにさせる。

 それを機嫌良さそうに万里は笑った。

「機嫌がいいな。どうした?」

 うん?と上目使いに瞬を見るその姿は、他の男であったならころりと落ちてしまうほど、可愛い。  そして花がほころびるように笑った。

「瞬ちゃんは龍太が幸せになれたら嬉しい?」

 質問の答えと違う気がするが瞬は笑顔で「もちろん」と答えた。

「万里もね、龍太が幸せになれたら嬉しいなぁ。だからね、お手伝いしてあげようと思って。そしたら瞬ちゃんも協力してくれるよね?」

「当たり前だろ。何をすればいい?」

 その言葉に満足したように万里は笑う。

「じゃあその時になったら言うね」

 もう少し一緒に居たかったが、するべき事がある。

 するりと腕を放した万里はにっこり笑った。

「じゃあ瞬ちゃん、万里頑張るね」

 楽しみにしててと言葉を残し、来たとき同様軽い足取りで去っていく。

 状況を理解出来きるはずのない瞬は、ただその背中を見送った。


****


「万里さん…どこに行くんですか?」

 私は今万里さんの後ろを追うように、校庭を歩いていた。

 そう、あの龍太君が怖い人たちに絡まれていた校庭、だ。

「うん?もう少しよ。」

にっこりと微笑まれると何も言えず、また後ろをついて行く。

 龍太君と話をしたのは昨日。

 今日も三人でご飯を食べたけれど、昨日と変わらず、私は空気と化していた。みんなご飯を食べ終わり、それぞれの教室に戻るときに、万里さんに呼び止められたのだ。(神木君は、万里さんがあまり構ってこない事をこれ幸いとした龍太君に引っ張られていった)

 ヨシちゃんが言うように二人っきりにならない方がいいのかもしれないけど、龍太君のように話してみなければ相手の考えていることは分からない。認められていないにしても、認められるためにはまずは話をしてみなければ始まらないと思う。

「万里ね、龍太のことはムカつくチビで邪魔だとは思ってるけど、幸せになって欲しいと思ってるの…」

  頷いていいのかしらという言葉が含まれていて、返事に困る。

 あまり使われていない体育倉庫の前まで来て、万里さんは扉の取っ手に触れた。

「だからね、万里が恋のキューピットになってあげようと思って!万里には瞬ちゃんより龍太がいいと思わないから分からないけど、女の子ってドラマチックなのが好きでしょ?」

 ど、どうしよう。これは世にいう恋愛相談というものなのかな。まるで経験がないからなんと答えていいか分からないが、女の子はドラマチックが好きなのは確かだし頷いた方がいいのかな?

「えっと…」

「それでね、そうなると男たちから救ってくれたってかなりきゅんとくると思うんだけど、それで龍太が怪我でもしたら瞬ちゃんが悲しむかなって…」

 別に万里はいんだけど…龍太意外に喧嘩強いから楽しくなさそうだし…と呟いていて、口を挟める隙がない。

 私の意見を求めていた訳ではないらしい。

「そうなるとやっぱり女の子かなって思って…大丈夫!すぐに助けを呼んできてあげるから!」

開けた扉に万里さんは私をえいと突き出した。

 その力に抗うことなく尻餅をつく。

中には派手目な女の子達や、少しきつそうに見える子など、たくさんいた。

 ヒリつくお尻は気になるけど、それよりもっと気になるのはその女の子たちが私の背後にずらりと並んでいることだった。

「ちょっと矢吹!うちらをここに呼んでどういうつもりよ!やっと謝る気になったわけ!?」

「え~?万里がなんで謝んなきゃいけないの?何にもしてないのに…」

よくもぬけぬけと!!とギリギリと歯を食いしばる人は、きれいな人なだけにすごく怖い…。

「万里はただみんなに協力してもらおうかと思って!」

「はぁ!?協力!?なんで私たちがあんたの協力なんてしなきゃいけないのよ!!」

「ふふふ…じゃーん!!なんとこの子が今の瞬ちゃんの彼女です!」

 両手を広げて私を紹介してくれたけれど、あまりのことに唖然としたままだった。

たぶん気のせいじゃないと思うんだけど、“今”を強調していた。

「は?この子が?」

「納得できないんだけど」

みんな一斉に私を見ながら言っている。頭上からは無数の視線が…………痛い。

「じゃあ万里はもぉ行くね」

 冷や汗が背筋を伝う中、注目が逸れた万里さんは元気いっぱいに言葉を残し、笑顔で去っていった。

 待ったを掛ける暇も無く、冷たく頑丈な扉が目の前で堅く閉ざされるのを私はただ口を開けたまま見送った。

後ろからはなんだか不穏な空気が流れていて、振り向く勇気はもちろん、…無かった。

 この時には万里さんの話はすっかり忘れていた私で……えっと、これから私はどうすればよいのでしょうか…?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ