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BLUE in blue  作者: ゆほ
16歳最後の日
6/19

指輪

「あれ?恭ちゃん車で来てたの?」


今だ夢見心地の千晴。どういうわけか恭輔が今日中に書類を提出すると言っているので、書類が揃うや否や役所へ行くことになった。

先ほど恭輔からもらった紙袋を藍から渡された千晴は家のそばの駐車場に連れて行かれ、そこに恭輔の車があるのに驚いた。


恭輔の実家は千晴の家から15分くらいのところにある。実家からうちになら歩きで充分だ。


「今日は実家には寄ってないんだ。それに役所に行くから車の方がいいだろう」

千晴の問いに恭輔が答えた。


役所は千晴達の住んでいるところからは少し距離があって、時間をかけて運動がてら自転車で行くか、バスで行くのが通常である。バスだと役所まで迂回したルートで行くので意外と時間がかかる。自宅からバス停とは逆方向に駅がありそこと役所と駅を結ぶ役所が出しているシャトルバスがある。そのシャトルバスなら乗車時間が短くて済むが運航本数が少ないのでタイミングを逃すと返って時間がかかる。

役所には来訪者専用の駐車場があるので車で行くのが一番早いのは確かだ。


「ねぇ恭ちゃん、恭ちゃんママと恭ちゃんパパは結婚のこと知ってるの?」

実家と聞いて千晴は恭輔に尋ねた。


「話してあるから心配するな。役所の帰りに寄って顔を出して行こう。」助手席に座った千晴の頭に手を軽く乗せて恭輔が言った。


千晴は小さい時から恭輔の両親を「恭ちゃんパパ・恭ちゃんママ」と呼んでいる。恭輔は男ばかりの3人兄弟の次男だ。佐伯夫妻は女の子も欲しがっていたから藍も千晴も可愛がってもらっていた。恭輔の母、智代ともよの育児がひと段落した時に丁度可愛い盛りだった千晴は智代自身がずっと女の子を欲しがっていたので我が子同然のように可愛がられていた。その可愛い千晴が年齢的には早いとはいえ恭輔と結婚すると聞いて狂喜乱舞していると千晴は聞かされた。


千晴が通学に時間のかかる高校に進学したために佐伯夫妻に会ったのは12月の母の1周忌のときが最後で年が明けてからは会っていない。


その間に結婚すると報告していたのかな。


そんなことを考えたら少し恥ずかしくなってしまった。


千晴が恭輔の車に乗るのは初めてではない。中学3年生の時、塾が終わった千晴を恭輔はこの車で迎えに来てくれていたのだ。


「千晴、それ開けて」


「あっ、うん」


千晴は言われるがままに袋から中身を取り出した。キャンディーか何かだと思っていたが、中も同じジュエリーショップの包装紙で包まれている四角い立方体のものが出てきた。


一般的に考えれば中身は指輪か何かで---------


ちらりと恭輔を見たが恭輔は千晴が中身を出す作業を見守っている。千晴は包装紙を剥がした。包装紙の中は箱で、その箱の中にはビロード地のジュエリーケースが入っていた。そのケースを開けるとダイヤの指輪が入っていた。


「あの------」


千晴は改めてこの状況の説明を恭輔に求めようとしたが恭輔は黙ったまま指輪を千晴の左手の薬指に填めてしまった。


驚くことにサイズはピッタリだった。千晴が指輪に目を奪われていると車は発進した。

恭輔が何も言わないことに千晴の疑念は晴れなかった。


やっぱりこれって冗談かも。指輪まで用意してかなり性質は悪いが、恭ちゃんパパと恭ちゃんママにご挨拶もしないで入籍なんてありえないよ。多分藍ちゃんのいたずらにお父さんも恭ちゃんも使われているんだ。

まったくもう藍ちゃんは。後で藍ちゃんはしっかり怒らないと。


夢見心地の気分は半減し、幾分冷静になったところで千晴はこれは藍が仕掛けた冗談だと思っていた。



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