習慣
短いです。
「恭ちゃん、朝はパン?それともごはん?」
夕食を済ませた帰りに立ち寄ったスーパーで千晴は恭輔に聞いた。
「朝は無理に支度しなくてもいいぞ。」
「なんでー?それにさっき電話で明日は早く出かけるって言ってたけど何時頃出るの?それと帰りは?」
「7時半には出掛ける。帰りは・・・・早くはないだろうな。5時過ぎに1回連絡するから。夕飯の支度も特には必要ない。」
恭輔と結婚したという現実にとまどいはあるものの母が亡くなって高校受験が終わり藍が再就職してからは三浦家の家事のほとんどをこなしていた千晴が翌日の食事の事を考えてしまうのは習慣であった。
「・・・余計なことだった?しない方がいい?」
「いや、そんなことじゃないから。千晴がやりやすいようにすればいい。」
カートを押す千晴の頭をくしゃっと捕まえて恭輔が言った。
千晴は恭輔を見つめていた。
それは今の恭輔の言葉が自分を突き放すものなのかどうか恭輔の心に問いかけているような表情だった。
「千晴と俺は結婚したんだから。」
恭輔が千晴の無言の問いに答えた。
「パンにしようか。恭ちゃんよくコーヒー飲むから、それに卵と生野菜買っておけば目玉焼きとサラダとかでおかずもつけられるし。」
「任せる。」
「夕飯は・・・明日またこの商店街に来てみるよ。温め直して食べられるもの用意しておくね。明日食べられなければ明後日でもいいような感じで。」
うんうんと自分自身で確認するように千晴が語る。
それを恭輔は穏やかに見守っていた。