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今日から使える異世界ライフハック  作者: 白生荼汰


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貴族飯? 貧民飯?

「リサってやっぱり元貴族?」

「どうしたん、いきなり」

 購入した包みを開けるなり、こそっと聞いてきたゲルキに聞き返す。

「だってさぁ、こんな綺麗な食い物見たときねえよ……」

 見たときってなんだ。見たことじゃないのか。

 幼児語みたいでちょっと面白い。

 笑いそうになっているわたしにゲルキは真剣な顔でさらに問いかけてくる。

「なぁ、俺馴れ馴れしかった? 後で無礼者! ってされちゃわない?」

 耐え切れなくなってぶふっと吹き出すと、ゲルキは泣きそうな顔になる。

「なんだよ、俺は真剣に……」

「ないない。もし無礼討ちするならその場でするでしょ。そんな、後になってからなんて騙し討ちみたいなマネ、いくら貴族でもやらないんじゃ……ないのかな……あれ? どーだろー」

 断言するには、貴族のサンプルを知らなさすぎる。

「なんだよ、言い淀むなよ。怖いだろ!」

「いや、わたしも貴族のことなんてわかんないな、って思って。少なくともわたしはやんない、それでいい?」

「……あ、うん」

 いつもの元気はどこへやら、しょんもりと肉巻きを口にしたゲルキは飛び跳ねるように顔を上げた。

「美味い! これ野菜なのに美味い!」

 にんじんとネギに裏庭産の水菜っぽいヤツを巻き込んでホリニシで味付けした肉巻きは、我ながら彩り鮮やかで歯触りも良くいい出来だ。

 なお、手柄はどう考えてもホリニシである。

「今日のおむすびにも、この肉にも贅沢に香辛料使ってるし、かれーとか、こういうものを当たり前に食うような生活をしてたんだろ?」

「あー……」

 カレーうどんほどではないにしても、カップヌードルも割とスパイシーだし、うっかりしてたけどホリニシなんてまんまスパイスミックスソルトだわ。

「わたしの故郷はね、なんというか食べ物に拘りが強くて、この程度のものなら誰でも当たり前に食べられたんだ」

「うっそだー。平民がこんなに食い物に手をかけられないだろ。野菜もこーんなに細かく切ってさ。しかも肉を薄く切るって結構難しいんだぜ。俺だって兵士になってから料理をやらされてるから知ってる」

「それがね、故郷ではあらかじめ薄く切った肉が当たり前に買えるのよ。塊の肉よりも良く売れてるくらいに」

「へー。リサの故郷はすげー肉屋ばっかりだな」


 本日もありがたいことにおむすびは売り切れた。

 今日は星の日だし、マグの店で豚肉を買っていこう。

 次の星の日まで持つように、塩豚とチャーシューを作ろうかな。

 ありがたいことにわたしは氷魔法が使えるから、2日くらいは生肉のまま置いておいても大丈夫。

 明日もブルの肉巻きを添えて、明後日からチャーシューにしよう。

 しかし、肉巻きであんなにドン引きされるとは思わなかった。

 お肉を薄く切る文化がなければ、肉巻きなんてしないよね。

 こちらの世界では千切りなんて遠く及ばない百切りぐらいのわたしのつたない細切りでさえ、超すごい包丁技術らしい。

 スパニッシュオムレツの時みたいに野菜でかさましするなんて賢い、って方向に行くかと思ってたら、お貴族様みたいな料理だって言われるなんてびっくりだ。

 明日の肉巻きの中身は朝市でボイエがおすすめしてくれた橙色がかったキノコにしようと思う。

 ボイエは、初めての朝市で籠を壊して途方に暮れていたおばちゃんだ。

 もう旬も終わりのジロールというそのキノコは、食べきれないなら干しておけば冬のスープを美味しくしてくれるらしい。こんな時季に手に入るなんて運がいいね、と笑っていた。

 きのこと牛肉なんて絶対美味しい。

 キノコは激しいタンパク質分解酵素を持っていることがあるから、明日はちょっと大変だけど今日も晩酌が楽しみだ。

 ボイエは顔を合わせるたびに、あれを買って行け、これが美味しいとおすすめしてくれる。

 たまに自分が売っているもの以外も勧めてくれるから、本当に世話好きなんだと思う。

「こんにちわー」

「今日は星の日だから来ると思ってたぜ。どこをどんだけ買ってく?」

「肉と油が層になってるとこと、腿の脂身が少ないあたりを銅貨5枚分ずつくらいかな」

「おう、任せときな」

 マグがしていた作業を切り上げて、豚肉の処理に移ってくれる。

 何をしていたのかがふと気になって作業台の上を見ると、そこは宝の山だった。

「ねえ、マグ。何してたの?」

「ん? ブルや豚はでかい分食いにくい部分が多い。赤い肉のところだけ売ってくれって言われるから、それ以外のところを外してるんだ」

「ブルのすじ肉のところも売ってほしい」

「え? リサが買うのか?」

 マグが驚いた様子で聞き返してくる。

「獣人なんかは酒の肴に喜んで買うが、人間にはちぃと固いぞ? 人間で買っていくやつはたいてい貧乏な奴だがなぁ」

「美味しいものに安いも高いもないでしょ。安くて美味しいならなおよし」

「そりゃそうだ」

 納得したマグが牛筋も包んでくれる。

「もう少し寒くなってからならいざ知らず、この時期のすじ肉は売れ残りがちなんだ。まけとくから、リサが料理したら持ってきてくれ」

「ありがとう。いいの?」

「売れ残るよりかずっといいさ」

 得しちゃった。

 さてどうやって食べようかな。

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマークや★★★★★、レビュー等で応援してもらえると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いします。

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