異世界卵とキャベツパン
サラシを外した後は、ブッケに立ち売り箱を預かってもらってゆったりと朝市を見て回る。
生鮮食品だけじゃなく、器や生活雑貨も売っているのが興味深い。
魔物素材とやらを売ってるのが異世界だな、という感じ。
光る毛皮なんて、どんな理屈で光ってんの……?
「あ、卵!」
「はい、うちで飼ってるコッコ鶏の産みたて卵です。煮ても焼いても美味しいですよ」
卵を売っていたのは幼なげな少女だ。
「おいくら?」
「ひとつ銅貨3枚です」
「った……」
たっかい!
と、言いそうになって踏みとどまる。
そういえば、日本でも昔は卵って高かったんだっけ?
売られている卵はわたしがよく知る卵よりもふたまわりくらい大きい。
そう考えるとそこまで高く……いや、高いな、やっぱり。
でも、卵、あると嬉しいし、料理の幅も広がるよなぁ。
えーい、また売ってるとも限らないし、ここで買ってしまえ。
「卵、ここにあるだけ全部買っても大丈夫?」
「えぇっ? そんなにたくさん?」
卵を売っていた少女は、えぇとえぇと、と唸りながら、指でひとつずつ確認しながら卵を数え始めた。
「えぇっと、卵は全部で10と1個あります。1個銅貨3枚だから、えぇっと……」
「銅貨33枚、小銀貨1枚と銅貨8枚でいいかな?」
「えぇと、えぇと……3が10個と1個だから、33枚はあってて……」
まとめ買い、する人いないんだろうか。
「じゃあ、一緒に確認しようか。小銀貨一枚で銅貨25枚分なのはわかるよね?」
「はい」
「じゃあ、26、27、28……」
小銀貨を25枚分の銅貨として、一枚ずつ足していく形で確認して、女の子に納得してもらう。
「はぁあ、お姉さん計算が早いのね」
「それほどでも」
「それにたくさん買ってくれてありがとう! 卵を全部売り切った日は卵一個分のお駄賃をもらえる約束なの。大体風の日と星の日に売りに来るから、また買いに来てね」
卵を買った後はハーブを少し買って、ブッケの屋台に戻る。
「お粥一杯くださいな」
「はいよ」
ブッケのお粥は、野生的な風味のある出汁が効いている。
「これ、ひょっとしてモツを下茹でした煮汁を使ってる……?」
「お、わかるかい?」
新鮮なモツを使っているからか、クセはあるものの嫌な感じではなくて、コクがあってむしろ美味しい。
「手間は掛かるが美味いもんだろ?」
「あとで店にモツ煮も買いに行きます」
「あいよ」
そろそろ開いている香辛料の店とマグの肉屋に立ち寄り、生姜と豚もも肉を手に入れた。
一塊がズシンと重いんだけど、やっぱりこの世界の豚、デカくない?
1kgくらいあるこの塊が銅貨7枚って価格もちょっとバグってる。
卵から察するにコッコ鶏とやらもきっと大きいんだろうな。一回ぐらい丸鷄のローストチキンってやってみたかったんだけど、うちのダッチオーブンで焼けるかしら。ヒナ鶏でお願いしたりすればいいのかな。
ブッケの店でモツ煮を売ってもらってから、お昼はキャベツ入りのパンてヤツに挑戦してみた。
……わたしにはまだ難しかった。
キャベツとパン両方の癖のある酸味が厳しくて、しかも中々噛みきれない。半分くらい食べて、辛くなってあきらめて、追加で買ったエイクの葉にくるんでそっとしまう。
いいんだ、プレハブに戻ったらモツ煮と一緒に食べよう。ビールもつけちゃうもんね。
おむすび屋の開店祝いだし、こういう日は昼間っから飲んでも許されるってもんよ。
卵の分、予定外に荷物は増えたけど、戻ってからのビールを心の支えにわたしは山道を急いだ。
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