食品サンプルみたいな
さつまいもパニックで、うっかりベーコンを塩抜きしたまま忘れているのに気がついたのは、就寝前だった。
慌てて干して、翌朝表面がちゃんと乾いているかを確認して、朝から燻製に入る。
朝食を準備しようとして、わたしはつい呟いた。
「白米食べたい」
端的に言うと、インスタント麺に飽きたのだ。
いくら味が違うと言っても、毎日毎日カップ麺炊き込みご飯を食べていたのだから、仕方がない。
昨日のノンフライ麺で少し目先が変わった気がしてしまったのが逆にダメだった。
炊き込みご飯じゃなくて白いご飯が食べたい。
あとお味噌汁。
お味噌汁もインスタントじゃないのがいい。
味噌は出汁入り顆粒しかないけども。
二合炊いた白いご飯に、お味噌汁はじゃがいもと玉ねぎ、軽く塩揉みした大根を添えて。おかずはキャベツを炒めて醤油で味つけたの。
あぁ、なんだか生き返った気がする。
残ったごはんに大根の葉っぱで作ったふりかけを混ぜておむすびにしたら、3個できた。
昨日、土魔法でフカフカにした土に、景気良く牛糞堆肥とやらをばら撒いてかき混ぜておく。牛糞というセンシティブな原料に、若干腰はひけたものの、気にしていたような匂いはなく、土に混ぜた感じも別に土と変わらないように感じた。
これで二週間くらいおいておくのだ。
肥料っぽいものの説明を読むと、ただ混ぜればいいというものでもないらしく、農業ってめんどくさ……奥深いものなんだ、と思わずにはいられない。土のPH値って何……。作物によって向いた土があるとかなんとか。難しいことは本当によくわからない。
そうこうするうちにいい時間になったのでお昼にする。
千切りにしたにんじんを塩揉みして、ぎゅっと絞ってからセロリを漬けてたピクルス液少々で和える。オリーブオイルをかければキャロットラペだ。イタリアンとかの前菜で出てくるやつ。レーズンやスライスアーモンドもあるともっとそれっぽいけどないものは仕方がない。
朝残ったお味噌汁を温め直し、おむすびを齧りつつ、キャロットラペをつまむ。おむすびはふたつで満足。残ったおむすびは後で焼きおにぎりにでもしよう。
お昼を済ませて、燻製中のベーコンを確認するとテラッテラだった。
「シズル感が滴ってる……」
何がどう作用したのか、燻製機から取り出したベーコンはよくできた食品サンプルみたいにツヤツヤのテカテカで、視覚に『美味しい!』と訴えかけてくる出来だった。
これで本当に美味しくできていたらいい。
飴色に輝くベーコンを切り分け、まだ煙臭いそれを味見してみる。
「甘くてしょっぱい……けど、柔らかい」
ツヤツヤしてたのは、砂糖の効果か。
なるほどなー。
表面に出てきた糖分が、熱でカラメル化してできた色艶だったのね。塩水だけで漬けたのより柔らかいのは、砂糖の保水力のおかげかな。
しかし。味の方は甘くてしょっぱい。
気になるほどではないものの、今のところ出来立てで一番好みなのは最初に出来た塩豚で作ったベーコンだ。
このベーコンも、落ち着いて味が馴染むとまた違う印象になるかもしれない。
でも、もっと砂糖も塩も減らしていいな。保存性を考えるとこのぐらいでいいかもしれないけど、それならマグのところからプロが作った加工肉を買ってくれば良い。
自分で作るなら、日持ちよりも自分の好み一択だな。出来立てをそのまま食べて美味しいくらいの加減がいい。
しばらくベーコンは作らないけど。
だって、漬け込んで、塩抜きして、乾かして、燻製して、と時間はかかるし、場所もとるし、面倒くさい!
趣味だな、趣味。
気が向いたら作ってもいいかな、ぐらいのスタンスでいないと、それこそベーコンばかり作ることになりそうだし、絶対消費しきれなくなる。
そんなのは本意じゃないし、毎日ベーコンばかり食べてたら確実に飽きる。味のバリエーションがあるインスタント麺ですら飽きるのに、飽きないわけがない。
午後は出来上がったばかりのベーコンを絵に描いた。我ながらすごく美味しそう。艶の光具合を表現するのは難しくて楽しい。実物がフォトジェニック過ぎて、仕上がった絵がどことなく嘘臭く感じられるのがおかしかった。
あぁ、やっぱりわたし絵が好きだ。
夜はこちらのパンを薄く切って炙ったものに、サバの水煮とオニオンスライスとキャロットラペを乗せたオープンサンド。
今晩もビールが美味しい。
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