異世界まるごとHOWマッチ
欲しかったのはクミンと、マスタードシードと唐辛子。
スパイス屋さんでそれっぽいヤツをいちいち匂いを確認させてもらって、無事ゲット。マスタードは3種類あったから全部買った。
クミンは炒めものにもピクルスにも使えるし、じゃがいもやにんじん、大根と相性がいい。それにベーコンがあったらマスタード欲しい。粒マスタード、作り方わかんないけど酸っぱいし、酢でふやかして塩と砂糖で味整えて軽く潰したらそれっぽくならないかな。ハニーマスタードとかよく聞くし、蜂蜜のがそれっぽい? ジャーマンポテトには是非粒マスタード入れたい。
唐辛子は色々と使い勝手がいいよね。
それから、やりたかったことというのは……。
「こんにちは〜」
「おう、らっしゃい。ブレッドの彼女じゃねーか」
「あはは、こんな年上が彼女じゃブレッドがかわいそうじゃないですか。今日は鍋、持ってきました」
「よしきた。今日は塩漬け肉と豆の煮込みだ。今日は、っていうかいつものだけどな。パンもいるかい?」
「お願いします」
粥屋のおじさんの煮込みを鍋で買いに来た。
お昼にはやや遅い時間だからか、店は落ち着いていて、お客さんはまばらだった。
モツ煮も美味しかったけど、普段のメニューも食べてみたかったんだ。
すっぱくてもさもさするパンも、薄く切ってオリーブオイルを塗ってこんがり炙ったらもっと美味しく食べられると思う。それと薄く切ったベーコン乗せても美味しそう。チーズも欲しいな。
「これに入れてください」
手のひらサイズのコッヘルを差し出す。って言っても大柄な男性の手ぐらいだけども。
「変わった鍋だね。ちょっとぶつけたら凹みそうだ」
「その分軽いんですよー」
そして蓋はシリコンパッキンで溢れにくい優れ物。
「こんなに小さい鍋じゃオマケしようにも一人前しか入らんな」
「あ、あ、蓋が出来なくなっちゃうんで、入れるのはほどほどで」
「欲のねぇこった」
ははは、とおじさんは笑う。
「はいよ。銅貨5枚」
鍋を受け取って、本題に入る。
「わたしこれから朝市で食べ物を売るつもりなんですが、先輩として相談に乗って下さいませんか?」
「おや、商売敵が増えようってかね。なんだい、何を売る気だい?」
面白そうに身を乗り出した親父さんに、エイクの葉で包んだおむすびを差し出す。
「値付けで悩んでまして」
「味を見てもいいかい?」
「ええ、そのために持ってきました」
親父さんはおむすびを突くと、じっくりと観察した。
「粥を固く炊いて、持ち運びできるように丸めたんだな。コイツは一個ずつ売るのか?」
「いえ、こうして二個をエイクの葉で包んで売ろうかと」
「ふん。それなら持ち歩きもしやすいだろうな」
一口、大きく齧りとり、味を分析しているのか、じっくりと噛み締めてから飲み込む。
「パンよりもずっと柔らかい。しっかりした味がついているが、こりゃ変わった味付けだな」
「わたしの故郷の調味料なの。数は限られているけど、悪くなる前に売ってしまおうと思って」
「で、いくらで売るつもりだったんだい?」
「素のパンが銅貨一枚だというから、銅貨2枚で……」
「バカ言っちゃいけない!」
親父さんは驚いた様子で言った。
「おい、お前も味をみてやんな。で、このお嬢さんがどんだけ馬鹿なことを言っているか教えてやろうじゃないか」
親父さんに促されて、おかみさんもおむすびを手に取る。
「あらあらまぁまぁ、柔らかいねぇ。それにずいぶん香辛料を使ってる」
おかみさんは恐る恐る小さく齧ると、うん、うん、と言いながら、咀嚼した。
「これだけ香辛料を使うなら小銀貨1枚だね。でないと売るだけ赤字になるんじゃないかい」
おむすび2個2500円……。
「そんな高いもの誰も買わないでしょ」
「なら、もっと香辛料を減らすんだな。香辛料はさておき、こんなもんを銅貨2枚で売られたら、こちとら商売あがったりだ」
「そうだねぇ。持ち運べるのも気が利いてるが、この柔らかさならスープもエールもいらない。普通の粥よりこっちを選ぶってお人は多いだろうね」
親父さんも女将さんも頷きあった。
「あの、粥っておいくらで出してます?」
「その場で食べてもらって銅貨2枚だよ。たいてい店の下拵えで出る端材を使うから、その値段でも利益が出るが、粥だけを売るならそれじゃやっていけないだろうね」
「ははぁ、なるほど。それで、パンは銅貨一枚で、キャベツをつけても銅貨2枚なんでしょう?」
それを考えるとおむすびにあんまり高い金額をつけるのもな……。
「いいかい? パンは重さも値段も決まってる。この国に暮らす限り、どこで買っても1ビストのパンが1サミューだ」
またわからない単位が出てきたけど、神妙な顔をして頷いておく。
察するに1サミューっていうのは銅貨一枚のことだろう。
単位に関してはあとでブレッドに聞こう。
「パンは神の恵み、キャベツは神の慈悲、粥は料理人の始末だ。だがな、ちゃんとした料理にはちゃんとした値段をつけなきゃならん」
「でも、あまり高くすると売れないっていうのもわかるわよ。香辛料抜きでなら……銅貨5枚ってところかしらね」
「それ、ここの定食と同じ値段じゃないですか」
「この穀物、丁寧にふすまを取り除いているでしょう? そのぐらいの価値はあると思うわ」
「あぁ、だなぁ」
おかみさんの値付けに親父さんも同意する。
「その値段じゃ、腹一杯喰うのは厳しいな……」
残念そうにブレッドが呟く。
「こんな贅沢品、腹一杯喰うモンじゃないだろうさ。たまの褒美に味わって喰うモンだろ」
「なるほどー、参考にします」
「こんなんで良かったかね?」
「はい。今日はありがとうございました。また寄らせてもらいますね」
「おう」
食堂を出た後はマグの肉屋に向かう。
マグも同じように銅貨5枚の値をつけた。
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