不穏な話
「そういえば、俺が来ていない時に訪ねてきた者はいないか?」
「へ? ……いたかもしれないけど、裏の畑とかプレハブや物置きで作業してたら聞こえないだろうしなぁ」
「あぁ、ならまだ会ってないんだな」
ブレッドはどこか困ったような、ホッとしたような顔で呟いた。
「誰か来る予定でもあんの? まさかお貴族様ってことはないよね?」
「フロルは貴族だったけど、スレチはどうだったかな……」
「何その曖昧なの」
こういう悩み方をするってことはブレッドの知ってる相手か。
「ここに勤めてたメイドと料理人がこっちにいて、クビになった」
「どゆこと?」
「一緒にリサの世界に行ったわけじゃなくて、サボって遊びに行ってる間にルディアーナが異世界に行ったようだ」
「わぁ。ってことは……」
そこから導き出される結論に、ブレッドが頷きで答える。
「ルディアーナはひとりで向こうにいるらしい」
「あらららら」
あっちも人里離れた立地ではあるけど、一応こっちよりも道は整備されてる。
人がいる場所に辿り着くのは難しくないだろう。
でも、文化も習慣も違う世界に一人か。
わたしも条件は同じだけど、一応落ち着いて生活出来てる今、気の毒になってくる。
「俺とは完全に行き違いになってたんだけど、俺らが領主様にお会いしに行った後、敷地に入れないって訴えたせいでサボってたのがバレて首になったんだと」
「悪いことはできないね」
言わなくてもそのうちバレてはいただろう。自首した形になっただけマシなのかな。
「ん? わたしたちが領都に行った後? 訴えに行くのが遅くない?」
「そう。遅い。だからサボってたのがバレたんだ。メイドと料理人でふたりしてサボって領都で遊んでて、戻ってきたら屋敷に入れなくてまた領都に、ってことらしい」
「今どうしてんの?」
「それがわからないから、ここに訪ねてきてないか聞いたんだ」
「行方不明かー」
「横領の疑いもあったけどルディアーナの意向で、それは問わないことになったんだとさ」
あぁ、ルディアーナ不在が世間にバレると不味いから、詰められなかったか。
「しかし、フロルとスレチが付き合ってたなんて知らなかったから俺も驚いた」
「そのフロルとスレチっていうのがメイドと料理人?」
人里離れた職場で同じ立場の男女ってなったら、そりゃお付き合いには発展しやすいだろうさ。
「あぁ。両方ともあんまり勤務態度がよくなくて、ルディアーナ付きになったんだ」
勤務態度がよくない使用人を娘にあてがうのって、どうなの……。
だからあのおっさん信用できないんだよなぁ。
「再雇用の予定はないから、もし訪ねてきても無視していい。っていうかリサの取り次ぎは俺に任されてるから、他の誰が来ても取り合わなくていい」
「ルディアーナ係から引き続き異世界人係にさせられちゃったか。苦労するね」
労うとブレッドは舌を出してニヤリとした。
「ルディアーナはともかく、リサ係は役得しかないから問題ない」
「そう言ってくれるとありがたいよ」
お茶を飲みつつ、少々不穏な会話をしたところで、フィーダに向かう。
今日は追加のスパイス購入とやりたいことがあるんだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや★★★★★、レビュー等で応援してもらえると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。




