○欲をもてあます
ブレッドを見送った後、買ってきたパンツ2本を洗濯する。
漬け置き洗いで落ちた染みもあるけど、血染みは依然として残っている。
そこだけ揉むようにつまみ洗いして、それから、酵素系漂白剤をクリーム状に練ったのをダイレクトアタック。しばらく置いて使い捨て歯ブラシでこすり洗いしてから人肌くらいのぬるま湯で洗濯する。
使い捨て歯ブラシ、今後も活躍してもらうことになるかもしれないから、わかりやすいようにとっておこう。
「お、結構落ちたんじゃない?」
前に買った古着よりは使い込まれた感じで、全部綺麗にってわけにはいかなかったけど、かなり綺麗にはなった。
今は鼻が馬鹿になってるだけで後になったら匂うかもしれないから、前に買った古着と同じく重曹で煮洗いして、洗濯終了。
くったりと弱った生地のせいで、肌触りは柔らかい。
洗濯しまくったからあんまり長持ちはしないかもしれないな、と思いつつ、ほつれている場所を確認する。幸いなことに思いっきり洗濯したからといって、それほどほつれてはいなかった。
ただ、片方は膝が抜けているだけじゃなくておしりの生地が薄くなっているし、ゲルキのパンツだった方は、膝が破れているのと、わかっていたけど脛のあたりにポツポツ穴が開いている。
町では継ぎの当たった服を着ている人は少なくないから、単純に端切れを使って継ぎをあててもいいけど、それじゃ芸がなくて面白くないなー、なんてことを考えているうちに日が暮れてきた。
晩御飯用に塩豚の残り半分を茹でる。
臭み取りにお酒とネギと生姜を入れた鍋で茹でるが、冷めるまで肉がお湯から出ない水分量を心掛けるのが柔らかい茹で豚にするコツだ。
竹串で刺して、透明な肉汁が出てくるようなら、そのまま火を消す。冷めるまで放置。
慌てて温かいうちに切ると肉汁が逃げてスカスカになっちゃうから、冷めるまで待つのが大事なところ。
あとは食べる分だけ切って、残りは茹で汁の中に戻して、クーラーボックスへ。
塩豚は、ラップとかキッチンペーパーとか、ごみが結構出るのが難点。
それに使用済み保存バッグが地味に増えていく。
今はまだいいけど、そのうち捨てるに捨てられない使用済み保存バッグを持て余しそう。
茹で豚を冷ます間にお風呂に入った。
風呂上がりのビールは最高。
ビールを飲みながら、晩酌用のおつまみの仕上げ。
なんとなく雨の気配がしたから、干している大根をガレージ内にしまって、タープのサイドシートを下ろし、クーラーボックスをプレハブに移動させる。
ペキ、といつものように二本目の缶ビールを開けつつ、収穫したばかりのレタスに茹で豚を乗せて、バルサミコ酢をかけたのを頬張る。
美味しい、けど辛子が欲しい、再び。
香辛料屋さんにマスタードシードっぽいのはあった。そこから和芥子ってどうやって作ったらいいんですかね。
えーん、辛子と山葵が恋しいよー。あと七味と山椒。
我ながらバルサミコ酢はあって、そのあたりの薬味がないのは謎。
七味はカップ麺のそばとうどんの中に入ってたからあると言えばあるんだけど、どうせならもっとバサバサかけて食べたいものがありすぎる。
これは物欲なのか食欲なのか。
気軽に買いに行けない異世界にいる今、持て余すしかない衝動だ。
持て余すといえば、畑もね。
当初畑として認識していた部分は根菜が植っていた範囲なのだけど、小松菜っぽいものを見つけたあたりで、もっと広い範囲が畑だと気がついた。
好き放題に蔓延っている緑が葉野菜だとは思わなかったんだ。
手をつけちゃったから、根菜の区画ぐらいは畑らしく整えるつもりだけど、葉野菜の区画までは難しい。
慣れれば拡張することもできるかもしれない。でも、大根とじゃがいもを収穫するだけでも大変だったのに、その倍以上の広さを維持するなんて、到底無理だ。
小松菜や白菜、レタスのように、食べられそうなら有り難く収穫するが、それ以上の管理はやっていられない。
これまでもそうだったんだし、しばらくは植えっぱなし、生やしっぱなしでもいいかな。
土壌を改善するには、何週間かかかるって有機石灰の袋に書いてあったし、順番に様子を見ながら進めていくつもり。
裏の畑が失敗しても野菜は町で買ってもいい。
わたし一人分なんてどうとでもなる。
甘酢漬けの残った酢に、干した大根の皮を洗って漬けておいたものは、歯応えが一味違って美味しい。
そういえば、切り干し大根なんていうのもあったな。かんぴょうも謎だけど、切り干し大根もどうやって作るものなんだろう。鉛筆削りみたいにくるくる剥くのかしら。
ドイツには大根専用のスライサーがあるのよね。
涙大根っていうドイツのおつまみは名前に風情があっていい。梅水晶や翡翠煮、鼈甲煮と並ぶいい名前だ。
揚げシューにペドノンヌなんて付けるフランス人や、ソーセージ料理にトード・イン・ザ・ホールなんて付けるイギリス人も見倣うべきだと思う。
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