【年末セールの魔力】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「見て見てーっ! お兄ちゃん! 年末セールってすごかったよーっ!!」
両手には色とりどりの紙袋。
赤、青、ピンク、金。
少なくとも5つ以上の袋を抱えている。
コートの袖がめくれてるのも気にせず、風にスカートを揺らしてキララが満面の笑顔で駆けてきた。
息を切らしながらも、その表情は達成感に満ち溢れている。
「まさかそれ、全部買ったのか‥‥‥」
待ち合わせ場所で本を読んでいたピカルは、呆れ顔で妹を見上げた。
出発前は「ちょっと見てくるだけ」と言っていたはずだ。
それが2時間後――両手いっぱいの戦利品を抱えて帰ってきた。
「あのね、お店を見渡す限りsaleの文字がいっぱいでね! どれを買っていいのか迷っちゃって! これでも買うの我慢した方なんだよ!」
キララは誇らしげに袋を並べた。
「それにしても買い過ぎじゃ‥‥‥」
ピカルは袋の中身をちらりと覗き込む。
服、アクセサリー、雑貨、お菓子――ジャンルもバラバラだ。
「だって! 『70%OFF』とか『今だけ限定』とか書いてあったら、買わないと損な気がしちゃうんだもん!」
「‥‥‥それが、セールの戦略なんだけどな」
ピカルは小さくため息をついた。
すっかりキララは『今だけ』という特別感に煽られて買いこんでしまったらしい。
(これが消費者の購買意欲を促進してるのか。いいサンプリングになったな)
とピカルは妙に納得してしまった。
地球の商業戦略――特に「期間限定」「数量限定」「特別価格」といった言葉が、いかに人々の心理に作用するか。
キララは見事に、その典型例となっている。
「ねえ、お兄ちゃんも何か買った?」
「いや、俺は見てただけだ」
「え〜、もったいない! こんなにお得なのに!」
「‥‥‥キララの買い物を見てたら、それで充分だった」
ピカルは苦笑した。
キララは袋を一つ取り出して、ピカルに差し出した。
「そんなことだろうと思って! はい、お兄ちゃんにもお土産! マフラー! 寒いでしょ?」
「‥‥‥ああ、ありがとう」
ピカルは受け取ったマフラーを見つめた。
深い青色の、シンプルで温かそうなマフラー。
「‥‥‥これ、セールじゃなかったんじゃないか?」
「えへへ〜、バレた? これだけは定価で買ったの。お兄ちゃんに似合いそうだったから!」
キララはにっこりと笑った。
「地球の福は、袋に詰まってるんだね!」
そう向けた笑顔が、いちばんの福かもしれない。
ピカルは小さく笑い、マフラーを首に巻いた。
「触り心地がいいな」
「でしょ! じゃあ、帰ろっか!」
「ああ。‥‥‥その前に、荷物持つぞ」
「やった! お兄ちゃん優しい!」
キララは嬉しそうに袋を半分、ピカルに渡した。
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帰り道。
「ねえ、お兄ちゃん。今日買ったもの、全部記録書に書く?」
「いや、さすがに全部は書かない」
「え〜、『地球の消費文化の研究』とか言って!」
「‥‥‥それは、キララの買い物リストを記録するだけだろ」
「あはは、そうかも!」
兄妹の笑い声が、冬の街に響いた。
年末セールの袋を抱えて、ふたりはまた一つ、地球の文化を学んだ。
そして、何よりも大切な『福』は――共に笑い合える、この時間そのものだった。
投票リクエスト:キララで年末セール
このお話を踏まえ「地球編・4」を読んでいただくとより深く楽しめると思います。
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