【紅葉の森で】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「すごい!葉がぜ〜んぶ赤と金色!」
キララの瞳が、紅葉に染まる森の景色を映して輝いた。
秋の陽射しが木々の間から差し込み、赤や黄色、オレンジ色に染まった葉が、まるで宝石のように光を受けて輝いている。
風が吹くたびに、ひらひらと舞い落ちる落ち葉が、まるで自然が作り出した芸術作品のようだ。
キララは両手いっぱいに集めたモミジの葉を、大事そうに広げて見せる。
彼女の無邪気な笑顔に、周囲の光まで暖かく揺れているように見えた。
「この葉っぱ、ハートみたいでかわいくない!?ほら、こっちは星型にも見えるし!」
一枚一枚を丁寧に眺めながら、キララは夢中で形を確かめている。
確かに、モミジの葉はハート型にも見えるし、角度を変えれば星のようにも見える。
自然が作り出す造形の美しさに、キララは完全に心を奪われていた。
夢中で葉を見せてくるキララの背後。
少し離れた木陰には、ひとりの青年の姿。
ピカルはいつものようにそっと見守っていた。
手には記録用の端末を持っているものの、カメラを向けることなく、ただ静かに、彼女の笑顔を目に焼きつけている。
端末の画面は消えたまま。
今この瞬間は、機械を通してではなく、自分の目でしっかりと記憶したかった。
木漏れ日がピカルの髪を照らし、彼の表情を優しく浮かび上がらせる。
「キララが楽しんでくれて、よかった」
小さく、誰にも聞こえないような声で呟く。
言葉はなくとも、頬にはやわらかな微笑み。
この穏やかな時間が、どれだけ貴重かを彼は知っていた。
アルフィオスには、もうこんな景色はない。
色とりどりの紅葉も、風に舞う落ち葉も、季節の移ろいを感じさせる豊かな自然も。
すべて、遠い昔の記録の中にしか残っていない。
だからこそ――
キララがこうして笑顔で、地球の自然を楽しんでいる姿が、ピカルには何よりも嬉しかった。
やがてキララがくるりと振り向く。
「お兄ちゃーん!見て!この葉っぱ、守冠の形にも見えるかも!」
手のひらに乗せた一枚の葉を、高く掲げて見せるキララ。
確かに、ギザギザとした切れ込みが、守冠のシルエットに似ている。
「……ふふ、色と形が似てるからかな?」
ピカルはそっと歩み寄り、キララが差し出した葉を受け取った。
黄色く染まった葉を指先で優しく撫でる。
「この紅葉でいっぱい守冠作れそう!あ、コーギーちゃんにも作ってあげようかな!」
フフフッ、と嬉しそうにはしゃぐ妹。
その足元には、赤や黄の落ち葉がやわらかく積もり、風がひとひらとふたりの間を抜けていった。
葉が舞い、光が揺れ、兄妹の笑い声が森に響く。
この瞬間を、ピカルは心の奥深くに刻み込んだ。
「ねえ、お兄ちゃん。アルフィオスにも、昔はこんな景色があったのかな?」
キララがふと、真剣な表情で尋ねた。
ピカルは少し考えてから、静かに答える。
「……ああ。記録によれば、約200年前まではあったらしい。四季の移ろいも、色とりどりの自然も」
「じゃあ、いつかまた……そんな景色を、取り戻せるかな?」
キララの瞳には、希望の光が宿っていた。
ピカルは頷いた。
「ああ。だから俺たちは、ここで学んでいるんだ」
「うんっ! じゃあ、もっともっと覚えて帰ろうね!」
キララは再び、落ち葉を拾い始めた。
その背中を見ながら、ピカルは思う。
『この笑顔を、いつか母星にも。』
秋の風が、優しくふたりを包み込んでいた。
参加者リクエスト:「二人で紅葉狩り」
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