【特別講師と、こっそりスパイ】
※挿絵はAIイラストを使用しています
白衣をまとったピカルは、教室の大型スクリーンに映し出された星図を指しながら、落ち着いた口調で講義を進めていた。
地球の中学で行われている【宇宙週間】 その特別企画として、ピカルが一日だけ『特別講師』として招かれたのだ。
生徒たちはノートを取りながら、彼の言葉に真剣に耳を傾けていた。
そんな中 ふと、ピカルの視線が教室の窓際で止まる。
ガラスの向こう、木陰の隙間からひょっこりと顔を覗かせているのは、見慣れたふわふわツインのシルエット。
(まさか......。キララ……?)
まるで「見つかってませんよ~」と言わんばかりに、窓の外からこっそり覗き込み、目が合うと慌てて隠れるキララの姿。
ピカルは一瞬だけ絶句し、眉をぴくりと動かして小さくため息をついた。
(完全にバレてるぞ..…)
しかしその顔はどこか呆れつつも、優しくゆるんでいた。
生徒たちは、突然静かになった先生の表情に首をかしげる。
「……すみません、少し話が脱線しました。 それでは続きを..…」
気を取り直し、ピカルは再び教壇に立ち直す。
その視線の先、ガラス越しの木陰にはまたちょこっと顔を出す影がひとつ。
そっと見守り続ける存在がいるという安心感にいつの間にか緊張感はほぐれていった。
___________
「……以上で、本日の特別授業を終わります。ありがとうございました」
ピカルの言葉とともに、生徒たちの拍手がぱらぱらと教室に広がる。
「すっごーい!宇宙に星がこんなにいっぱいあるなんてー!」
「うちの理科の先生より優しかったかも」
そんな感想がこぼれる中、ピカルはやや疲れたように眼鏡のブリッジを押し上げた。
(……ふぅ。地球の教育現場もなかなかエネルギーを使うな)
準備したスライドの枚数より、質問タイムが倍の長さになったことは想定外だったが、それでも生徒たちの純粋な好奇心に触れるのは、悪い気はしなかった。
「おにーちゃーん!!お疲れさまぁ!」
授業が終わるや否や、校舎の裏手から突撃してきたのは、この地球(いや宇宙)で一番予測不能な存在・キララだった。
「やっぱり見ていたのか。というか、堂々と正面から来るな」
「えへへ!だって、こっそり見てるだけじゃ我慢できなかったんだもん!」
ぴょこぴょことリュックを揺らしながら近づいてくるキララの手には、なぜか紙袋がひとつ。
「ほらっ、おにーちゃんに差し入れ!授業がんばってたからごほうび~」
「……中身は?」
「焼きそばパンとラムネ、あと謎の駄菓子!」
「謎って......バランスも壊滅的だな」
それでも袋を受け取るピカルの動作はどこかやさしくて、それに気づいたのかキララはにんまりと笑う。
「ねぇお兄ちゃん。教壇に立ってるときの顔、ちょっとキリッとしててカッコよかったよ?」
「……キララ。お前はそのちょっとが余計なんだ」
「えー!?ちょっとが一番リアルな褒め方じゃん!」
そんなくだらなくてどこか温かいやり取りが、夕方の校舎の片隅で交わされる。
「でもね。ちゃんと伝わったと思うよ。お兄ちゃんが話してた、“星に想いを向けること”っていうの。みんな真剣に聞いてたもん」
ピカルは一瞬だけ、驚いたように目を細める。
「……そうか」
「うんっ!」
キララの言葉に、ピカルは空を見上げる。
地球の青空の向こうに遠く離れたアルフィオスの空が、ほんの少しだけ重なって見えた気がした。
「じゃあ次は、体育の授業でも出てみる?」
「絶対嫌だ」
「ええ~~っ!!一緒に跳び箱しようよーっ!」
こうして『特別講師』の一日は終わりを告げる。
けれど、ふたりの旅と記録は、まだまだ続いていくのだった。
セルフリクエスト:科学の先生一日体験
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