表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/71

地球編・2 灯りをつなぐものたち①

※挿絵はAIイラストを使用しています

「ねぇねぇお兄ちゃん、なんか楽しそうな音しない? ほら、あっちから!」


挿絵(By みてみん)


 キララがうきうきした様子で、ピカルの袖を引っ張る。

 春の風に舞う花びらのなか、ふたりは買い出しの途中で足を止めていた。

 ピカルが耳をすませると、広場のほうから太鼓のリズムが、心地よく響いてきた。


「あれは祭りの準備かな? にぎやかだな」


 キララはそわそわと落ち着かない様子で、ちらりとピカルを見上げた。


「‥‥‥行ってみてもいい?」


 ピカルは穏やかに微笑んだ。


「そう言うと思ってた。行こう」


 キララはぱっと顔を輝かせて、小さく跳ねるように駆け出した。

 ピカルもあきれながら、その後をゆっくりと追いかける。

 商店街の先には、カラフルな飾りと屋台、にこやかに働く人たちの姿が広がっていた。

 笑い声、風にそよぐ旗、焼きたての香り。

 それはまるで、生きている文化の風景そのものだった。


「すごい! すごい! まるで夢の中みたい!」


 キララは目を輝かせながら、飾り布の間を跳ねるように歩いていく。

 屋台の甘い匂い、太鼓のリズム、笑顔が交わされるあたたかい空気。

 彼女はそのすべてに目を見張り、まるで心ごと吸い込まれていくようだった。


「文化って‥‥‥こんなに人を元気にするものなんだな」


 ピカルはその様子を見つめながら、静かに言葉をこぼした。


 アルフィオスでは、このような派手な祭りは遠い昔の記録にしか残っていない。

 資源が枯渇し、星が衰退していく中で人々は生きることに精一杯だった。

 かつては季節ごとに祭りがあり、音楽や踊りで溢れていたはずなのに今では誰もがただ静かに、必要最低限の日々を送っている。


 文化を楽しむことを忘れたように。

 いや、忘れざるを得なかったのだ。


 祭りの色彩、人々の笑い声、太鼓の響き。

 それらすべてが、ピカルの心に鮮烈に刻まれていく。


 彼にとってもまた、これは記録ではなく『体感』としての感銘だった。

 そして同時に、アルフィオスが失ってしまったものの大きさを、改めて思い知らされる瞬間でもあった。


 _____________________


 ピカルは少し離れた場所から、それを静かに見つめていた。

 キララはすでに人々に混じって飾りを結ぶ手伝いをしている。


「‥‥‥あの子はすぐに馴染むな」


 ピカルは小さく笑いながら、近くにあった案内板へと目を向けた。

 そこにはこの祭りの由来と、歴史が簡単に紹介されていた。

 ふと、説明文の下に描かれた、古い図柄に視線が釘付けになる。


 幾何学的な円と、線が組み合わさった模様。

 中心から放射状に伸びる七本の線、それを囲む二重の円環。


「これは‥‥‥」


 ピカルの心臓が高鳴った。

 その文様は、アルフィオスで500年前の祭儀に使われていた『調和の紋章』にそっくりだったのだ。

 七つの領域を結ぶ線、星全体の循環を表す円環——構造まで一致している。


 偶然だろうか? それとも――


 ()()()としての好奇心が疼く。

 ピカルは、祭り会場から少し歩いたところにある、小さな資料館へと足を運んだ。


 木造の建物に差し込む午後の光の中、彼は祭りに関する展示コーナーを丁寧に見て回った。

 そして、壁際のガラスケースに収められた古文書の前で、再び足を止めた。


 そこには案内板で見たものより、はるかに複雑で精緻な文様が記されていていた。


「この構造‥‥‥まるで星の記録網と同じ‥‥‥」


 文様の周囲には古い文字で説明が添えられている。

 ピカルは息を呑みながら、その内容を読み進めた。


『この文様は村々を結ぶ守りの印。祭りの音は風に乗り、遠く離れた人々の心をひとつに結ぶ』

『音は人の心を揺らし、時間を越えて伝わる』


「音が‥‥‥記憶をつなぐ‥‥‥」


 ピカルは胸の奥に何か灯る感覚を覚えた。

 文化とは、ただの娯楽ではない。

 それは人と人、時代と時代を結ぶ"記憶の糸"なのだ。


 そして、アルフィオスが失ったのは、まさにこの()だったのかもしれない。


 __________________


 一方その頃、キララは地域の年配の女性たちと一緒に、飾りの一部である紙細工を折っていた。


「これ、すっごく可愛い! アルフィオスでも飾ったら絶対楽しいよねっ」


「アルフィオスって、どこの国だい?」


「えっ‥‥‥あ‥‥‥えっと、遠くの星、かな?」


 アハハと笑ってごまかすキララに、周囲は疑いなく笑顔で返してくれる。

 そのぬくもりに、彼女は少しだけ眩しそうに目を細めた。


「こういうお祭りって昔からあったの?」


「ええ、あったよ。ずっと昔からね。季節の節目には、みんなで集まって、笑って、歌って……そうやって、町も人も元気をもらってきたのさ」


 年配の女性が手を動かしながら、やさしく語る。

 その目には、懐かしさと誇りがにじんでいた。

 その眼差しを見つめていたキララの胸に、温かいものがじんわりと広がった。


 祭りは、ただ楽しいだけじゃない。

 昔の人から今の人へ、そして未来の人へと、想いがずっとつながっていく。

 笑顔も、歌も、飾りも——すべてが大切な何かを運んでいるんだ。

 キララはそれを"心の灯り"と呼びたくなった。

 消えそうになっても、誰かが受け継いでくれる。

 そうやって、ずっと光り続けている灯り。


「アルフィオスにも‥‥‥この灯り、届けたいな」


 小さくつぶやいたキララの言葉を、春の風が優しく運んでいった。


地球編・2 灯りをつなぐものたち② に続きます。


お読みくださりありがとうございます!

ブックマーク、評価、コメントを頂けると大変嬉しいです!!


リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

Xで最新情報を投稿してますので、よかったらご覧ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ