【地球の朝は危険がいっぱい!?】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「ちこくちこくちこく〜〜〜っ!!」
朝の静寂をぶち破るピカルの情けない叫び声が響いた。
全力疾走中。
そして、口にはキララが焼いたばかりのトーストがしっかり咥えられていた。
(くっそ……なぜよりによって、今日に限って!)
寝坊の理由は明白だった。
昨晩、母星アルフィオスへの定期報告書を作成していて、夜更かししたのだ。
(分析項目なんて、あんなに細かく書かなくてもよかった……っ!)
通学路の曲がり角が迫る。
視界の端で、何かが動いた。
「……っ!!??」
ぶつかるか、避けるか。
それは、まるで世界の命運を左右するほどの瞬間だった。
焼きたてトーストの香ばしい香りが口いっぱいに広がる中、ピカルの脳内は異常なほど冷静だった。
(このまま行けば記録には残るが、記憶には痛い!)
一瞬で重心を引き、華麗に急停止。
ギリギリ回避成功。
(……危なかった……!)
こうしてピカルは、またひとつ“地球の教訓”を学んだのだった。
『夜更かし、厳禁。』
その夜。
机の上には整然と並ぶ書類と、湯気を立てる紅茶。
ピカルは真剣な顔で端末の報告書の一ページを開いた。
(……さて、今日の出来事をまとめておこう)
少し息を整え、静かに入力を始める。
『本日、地球時間における「朝の支度」中に遅延発生。
原因は、前夜の記録作業における時間配分の誤りである。』
淡々と打ち込む。
しかし、行を進めるごとに彼の感覚のズレはじわじわと広がっていった。
『なお、遅刻を回避するための緊急対応として、食料を咥えながらの高速移動を実施。結果、咀嚼効率と走行速度の両立に課題が残ることを確認。』
ピカルは真顔で頷く。
「……地球の行動に、理に適ったものが多いとは限らないな」
さらに追記。
『走行中に第三者との衝突リスクを検出。反射的回避行動により事故は回避。
反省点:今後は朝食の摂取と移動は別フェーズで行うべき。』
手が止まり、ピカルは小さくため息をついた。
ページの下に、きちんと教訓欄を設ける。
【本日の教訓】
・夜更かしは翌朝の知的精度を低下させる。
・焼きたてトーストは軽食として有能だが、運搬食には不向き。
・「ちこくちこく」と叫ぶ行為は、冷静さを著しく損なう。
(……よし、完璧だ)
満足げにうなづいたそのとき、背後からひょいと顔を覗かせる影。
「お兄ちゃ〜ん、まだ書いてるの?もしかして“遅刻日誌”?」
「日誌じゃない。地球生活観察記録だ」
「ふふっ、タイトルの割に内容かわいいね!」
「かわいい?どの部分が?」
「“焼きたてトーストは運搬食に不向き”とか、“ちこくちこく禁止”とか〜!」
キララは笑いながらページを覗き込み、ついには机に突っ伏して笑い転げた。
ピカルは小さく眉を寄せながらも、どこか照れくさそうに紅茶をすする。
「笑いすぎだし……。」
「うんうん、楽しい実験だね!」
そう言って笑う妹に、ピカルもつられて微笑む。
彼の机の上、今日の記録の最後にはこう記されていた。
『地球の朝は予測不能。だが興味深い。』
参加者リクエスト:「ピカルに食パンを咥えて全力疾走」
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