【地球の夏は、ちょっと眩しい】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「お兄ちゃん!今の見た?!」
浴衣の裾をふわりと揺らして、 キララは振り返った。
手には小さな団扇。
頬はほんのり紅く、 目は潤んでいる。
夜空の向こうでは、 次の大輪が音を置いて咲き始めていた。
キララの視線は、ピカルの方を向いていた。
「ドーンってお腹に響いて!でも綺麗で、すっごく……!すっごくね! 胸がぎゅーってなる感じ!」
手振りを交えながら、 興奮を伝えようとするキララ。
その姿に、ピカルはふっと目を細めた。
「ずいぶん感性豊かに表現するようになったな」
「うんっ! こういうの、地球じゃなきゃ見れないもん! だから、ちゃんと伝えたいの!」
キララは笑って空にもう一度視線を向けた。
空にもう一度、花が咲いた。
<ピカル視点>
キララが、夜空を見上げて笑った。
その瞳の奥に映る花火は、ただの光や音以上に何か大切なものを刻んでいるようで
「……綺麗だな」
つい漏れた言葉に、キララがぱっと振り返る。
「でしょ!? お兄ちゃんもやっぱ思うよね!? これ地球文化に永久保存しよ! AURORAの記録データに登録案件だよ!」
そう言って、団扇をひらひら振りながら小走りに、次から次へと店を回っていく。
「ちょ、キララ、走り回ると浴衣が――」
「だって! だって! も〜いろんなお店がいっぱいありすぎて!ほら!あれ見て! この焼きとうもろこし、絶対おいしいに決まってるやつ!」
「……はあ。結局、目の輝きの半分は食欲か」
「なにか言った〜?」
「いや、何も」
ピカルは視線を空へ戻す。
轟音とともに夜空に開いた花火は、ほんの一瞬で形を変えて消えていった。
でもキララの瞳には、きっとその余韻がずっと残るんだろう。
(感性が豊かになったというより、ただ真っ直ぐすぎるだけか……)
それが今の彼女らしさで、自分もこの地球での“旅”に意味を感じられている。
「お兄ちゃん、次はあれね! あんず飴いくよ! そのあとヨーヨー釣りでしょ! あと写真も撮って! なんかすっごい楽しそうな顔してるとこ!!」
「そんなに予定詰め込んで、最後まで持つのか?」
「だいじょーぶ!今だけは全力で“楽しむ”のが地球の流儀なんでしょ!」
「誰に教わったんだ、それ」
「コーギーちゃん!」
またか。
とピカルは小さく笑って、頭をひと振りする。
今だけは、記録も忘れてもいいかもしれない。
キララの弾けるような笑顔と、夜空に咲いた火の花を見ながらピカルは静かに胸の奥でそう思った。
「じゃあ....全力で楽しむか。地球の流儀とやらを実際に」
「やったーっ!」
キララの手が伸びてきて、ピカルの腕を引っ張る。
その先にあるのは、屋台の明かりとまだ終わらない夏の夜。
星を失った故郷に届けられるようにと、彼はもう一度空を見上げた。
そして小さく確かに願う。
「きっといつか、あの星にも――」
参加者リクエスト:「キララと花火大会体験」
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