【ゼリーと夏の気配】
※挿絵はAIイラストを使用しています
窓から差し込む日差しに、ピカルは目を細めながらゆっくりと体を起こした。
じんわりとまとわりつく午後の暑さ。
髪も肌も、ほんのり熱を帯びている。
「……ふぁ……なんだろ、このメモ……」
テーブルに置かれた走り書きの紙を手に取る。
『冷蔵庫にいいものあるよ! バテバテ顔だったから買ってきたよー! キララより☆』
思わず目元がゆるむ。
ぼんやりとした頭をそのままに、ピカルはキッチンへ足を向けた。
冷蔵庫を開けると、涼しげなガラスの器が目に飛び込んでくる。
淡いミントグリーンのゼリーが、冷たい光を反射していた。
「……ふっ」
思わず小さな笑みがもれる。
器を取り出し、スプーンですくって口へ。
ぷるん、と揺れるゼリーが舌の上でほどけ、ひんやりとした甘さが体の隅々に染み渡っていった。
「……ああ、生き返る……」
眠気も暑さも、そして妹のやさしさまでもが、じんわりと体を包み込む。
これなら、もう少し頑張れそうだ。
そんな気持ちになれる六月の午後だった。
ゼリーを食べ終えたあと、ピカルは軽く背伸びをした。
「……さて」
まだ冷たい甘さが口の中に残っている。
視線を落とすと、テーブルにはもう一枚のメモ。
『あとで感想きかせてね☆』
「……まったく」
思わず苦笑が漏れる。
だが胸の奥に、ほんの少しだけ楽しみが増えた。
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夕方。
玄関のドアが開くなり、キララが勢いよく顔を覗き込んでくる。
「ねえねえ! お兄ちゃん、ゼリーどうだった!?」
「……涼しくて、ちょうどよかった。ありがとう」
「えへへ、でしょー!?」
ご機嫌でバッグを放り置き、キララはくるりと振り返る。
「じゃあ次はアイスもストックしておくね!」
ピカルは小さくため息をついたが、その口元は緩んでいた。
「……ほどほどにしろよ。冷たいものばっかり食べてると、夏バテが――」
「わかってるー!」
返事を先回りするように、明るい声が弾む。
窓の外では夏の気配が少しずつ色を濃くしていた。
けれど。
この家の中はひと足早い涼しさと、妹のやさしさで満たされていた。
参加者リクエスト:「ピカルに冷たいゼリーと食べてもらう」
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