【雨と“霧の月”】
※挿絵はAIイラストを使用しています
ポツポツと傘を叩く雨音。
街灯の光は雨粒に滲み、路地を淡く照らしていた。
その下を、ピカルとキララは並んで歩いていた。
「ねえお兄ちゃん。梅雨ってさ……ちょっとさみしいけど、なんか落ち着くね」
キララがふと口にした言葉に、ピカルは目を細めて微笑む。
「湿った空気が光や音をやわらげるからだよ。地球の梅雨は、そういう季節なんだ」
「へぇ……。アルフィオスにもあったの?」
「昔、“霧の月”って呼ばれる時期があったよ。似てるかもしれないね」
キララは雨粒の落ちる空を見上げ、ぱっと笑顔をこぼした。
「じゃあ今は、地球版“霧の月”だね!」
その無邪気な声に、ピカルの胸に小さな温もりが広がる。
静かな雨音に包まれながら、ふたりの足取りは自然とそろっていった。
ピカルはふと傘を傾け、妹の肩にかかる雨粒をそっと避けてやる。
「……霧の月はね、星を隠すけどそのぶん、灯りのありがたさを思い出させてくれる時期だった」
キララは横目でお兄ちゃんを見上げる。
どこか遠い記憶を語るような表情に、小さく首をかしげた。
「灯り……って?」
「家の明かり。人の声。……そして、隣を歩く誰かの存在」
言葉の途中で一瞬だけ視線を落としたピカルに、キララはふっと笑みを浮かべた。
「そっか。じゃあ今の“霧の月”も、悪くないね」
道沿いの水たまりには街灯の光が揺れ、雨粒の輪が静かに広がっていく。
雨音に溶けるように、ふたりの足音はやわらかく響いた。
「ねえお兄ちゃん。次の“霧の月”も、一緒に見ようね」
「……ああ、約束だ」
ピカルは小さく息を吐き、傘をさらに傾けて妹の頭を包み込む。
雨はまだ降り続いていたが、その歩みはどこまでもやさしかった。
参加者リクエスト:「二人で梅雨体験」
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