【未来を故郷に】
※挿絵はAIイラストを使用しています
夜の帳がゆっくりと大地を覆い、春の夜風がやわらかく頬をなでる。
ピカルはランタンの灯りを横に、焚き火の前で膝を折った。
ぱち、ぱち……火の粉が夜空に吸い込まれ、遠い星と重なる。
「こうして星のよく見える場所に来ると……故郷を思い出すね」
ピカルは、空に広がる星を見つめたままぽつりとつぶやいた。
「君自身の故郷の思い出話を聞かせてよ」
くるりと回って、コーギーちゃんがピカルの隣にちょこんと腰を下ろす。
尻尾がゆるやかに揺れ、焚き火の赤が毛並みに反射して金色にきらめいた。
ピカルは少しだけ考え、やがて口を開いた。
「そうだな……子どものころ、夜になると母さんが“星の歌”を口ずさんでくれたんだ。星が音を持つなんて、子ども心に信じていてね。風が鳴るたびに、耳をすませていたよ」
ふわりと春の夜風が二人の間を抜け、炎を小さく揺らした。
遠くの木々がざわめき、まるで本当に星が歌っているみたいだった。
「そっか……きっと今も、あの星ではその歌が流れてるね」
コーギーちゃんは、しっぽを小さく振りながらふふっと笑う。
ピカルは、わずかに視線を伏せて照れたように笑った。
「……そうだといいな」
二人の視線が夜空に吸い込まれる。
満天の星々が、群青のキャンバスを埋め尽くしていた。
「……昔は、まだ星が元気だった」
焚き火を見つめながら、ピカルは小さく息をつく。
「でもただ懐かしむだけじゃなくて、戻りたいとも思わないんだ。」
「ふーん、どうして?」
コーギーちゃんが首をかしげると、ピカルは少しだけ言葉を探すように沈黙した。
「今の僕は、ただ“記録”する人間じゃないから。こうしてキララと地球に来て、いろんな人に会って、経験を重ねて……ようやく“自分の意思”で動けている気がするんだ。」
「それって、つまり……ちょっとだけ成長したってこと?」
コーギーちゃんは大きなあくびをしながら、悪戯っぽく笑う。
「“ちょっとだけ”って言うな。」
ピカルが眉をひそめると、焚き火がぱちんと弾けた。
その音が、まるで星の記憶が夜空にこぼれる音のようで。
ピカルは手元のマグカップを胸に寄せ、目を閉じる。
「帰る場所は昔じゃない。これから築く未来が、僕たちの“新しい故郷”になるんだと思う。」
焚き火の炎に揺れる横顔は、どこか穏やかで強い光を宿していた。
「うん……その未来、ボクも楽しみにしてるよ。」
コーギーちゃんは尻尾をひと振りし、静かに横になった。
夜風に揺れる焚き火の火花が、二人をやさしく照らしている。
そして、頭上の星々は変わらず瞬き続けていた。
その光は、きっと遠く離れたアルフィオスの空にも届いている。
投票リクエスト:ピカルかキララでキャンプ体験
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