【泡に愛情?をこめて】
※挿絵はAIイラストを使用しています。
「カプチーノお待たせしました~……って、あれ?」
カウンター越しに顔を上げたキララが、ぱちぱちと瞬きをする。
「お兄ちゃん? どうしたの? お店に来るなんて珍しい~!心配だった??」
ピカルは、手元のメニューを閉じながら静かに答えた。
「……いや、まぁ……ちゃんと作れてるみたいでよかった」
「……あーっ!」
キララが何かに気づき、突然むっと頬をふくらませる。
「また失敗すると思って来たんでしょ! 私だってやればできるんだから!」
(……前例が、な……)
過去にあった数々の“惨状”を思い出し、ピカルは微妙な表情になる。
が、言葉にはしない。
「なによー! でもね、今日のわたしは違うの!」
胸を張るキララ。
その時点で、少しだけ不安が和らいだ。
(……いや、“根拠のない自信”ってやつじゃないだろうな?)
「実はね……昨日、寝る前に“ラテアート動画10本”見たの! これでプロ級!」
小声でピカルの耳元に種明かしをする。
動画10本でプロ級になれるなら、地球の修行文化は崩壊してると思う。
そう心でツッコミながら、ピカルはただ頷いた。
ここで言い返したら倍返しでテンションが上がる。
学習済みだ。
そして、差し出されたカップ。
表面には……ハート。
いや、正確には“ハートっぽい生命体”だ。
……努力の痕跡は見える。
否定はしない。
「見て! わたしの愛情100%ハート!」
愛情は泡に閉じ込めないでほしい。
というか、今すぐ言葉のチョイスを再考してくれ。
ピカルは恥ずかしさを隠しように無言でカップを受け取り、口をつけた。
ふわりと泡が広がり、舌に柔らかな甘みと苦みが絡む。
「……おいしい」
素直にそう言えた。
味は本当に悪くない。
(というか、かなり……いや、普通に美味いな。どういう確率で成功したんだ?)
その瞬間、目の前の紫の瞳がキラッと光った。
ぱちりと大きな瞳がこちらを見て、次の瞬間—‐満面のドヤ顔。
「でしょ~~! ちゃんとやればできるんだからっ!」とでも言いたげに。
ピカルは軽く肩をすくめて、もう一口。
失敗も成長も、全部詰まった一杯だ。
温かな香りがゆるやかに心を解きほぐしていった。
参加者リクエスト:キララにバリスタ体験
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