表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/71

地球編・4 届く形②

地球編4 ①の続きになります


※挿絵はAIイラストを使用しています

 回収センターは、駅から少し離れた場所にあった。


 古い倉庫を改装した建物で、入口には『リユース・リサイクルセンター』という看板が掲げられている。


「ここだよ!」


 コーギーちゃんが元気よく尻尾を振りながら、建物の前で立ち止まった。


「うわぁ、思ったより‥‥‥大きいね」


 キララが、バッグを抱えたまま建物を見上げた。

 中からは、人の声や、何かを運ぶ音が聞こえてくる。


「じゃあ、入ろうか」


 ピカルが促すと、キララは深呼吸をして頷いた。

 扉を開けると、そこには想像以上に活気のある空間が広がっていた。

 テーブルがいくつも並び、そこでは数十人のスタッフやボランティアが、服を仕分けている。


「あ、お願いした方ですね! ようこそ!」


 明るい声とともに、30代くらいの女性スタッフが近づいてきた。

 名札には「佐藤」と書かれている。


「初めまして。今日はよろしくお願いします」


 ピカルが丁寧に頭を下げた。


「こちらこそ! えっと、今日は‥‥‥」


「体験参加で来ました。服の寄付と、作業のお手伝いができればと」


「ありがとうございます! じゃあ、まずは簡単に説明しますね」


 佐藤さんは、施設の中を案内しながら説明を始めた。


「ここでは寄付された服を仕分けて、状態の良いものはリユース、傷んでいるものはリサイクルに回します。それぞれに基準があるので、最初はちょっと難しく感じるかもしれませんが、慣れれば大丈夫ですよ」


 キララは熱心に頷きながら、施設の様子を見回した。

 テーブルごとに、「夏物」「冬物」「子供服」といった札が立てられている。


「まずは、寄付された服の受付からお願いできますか?」


「はい!」


 キララは元気よく返事をした。


「じゃあ、こちらへどうぞ」


 佐藤さんに案内されて、受付カウンターの横に立つ。


「ここに持ち込まれた服を、まず『受け取る』『袋から出して確認』『大まかに仕分ける』という流れでお願いします。仕分けは、あちらの札を参考にしてください」


「分かりました!」


 キララは張り切って作業を始めた。

 最初のうちは順調だった。

 持ち込まれた服を受け取り、袋から出して、冬物は冬物のテーブルへ、夏物は夏物のテーブルへ。

 ピカルは少し離れた場所で、データパッドに施設の様子を記録していた。


 しかし、30分ほど経ったころ、別のスタッフが、困った顔でキララに声をかけた。


「あの‥‥‥すみません」


「はい?」


「これ、冬物のテーブルに置かれてたんですけど‥‥‥薄手のカーディガンなので、春秋物なんです」


「え? でも、冬に着られますよね?」


「着られますけど、仕分けの基準では『主に着る季節』で分けるんです。薄手は春秋、厚手は冬って」


「そうなんですね‥‥‥ごめんなさい」


 キララは慌てて謝った。


「大丈夫ですよ。最初はみんなそうですから」


 スタッフは優しく笑って、カーディガンを持って行った。

 キララは少し落ち込んだが、気を取り直して作業を続けた。

 でも、また別のスタッフが声をかけてくる。


「あの、これ‥‥‥ちょっと汚れがあるんですけど、リユースのほうに入ってて‥‥‥」


「え、でも洗えば落ちそうな汚れですよ?」


「そうなんですけど、うちでは『そのまま着られる状態』じゃないと、リユースには回せないんです。洗濯が必要なものは、リサイクルか、状態によっては処分になります」


「処分‥‥‥」


挿絵(By みてみん)


 キララの声が小さくなった。


「せっかく持ってきてくれたのに、もったいないですよね。でも、衛生基準があるので‥‥‥」


「‥‥‥分かりました」


 キララは、その服をリサイクルの箱に入れた。

 気づけば、1時間で何度も間違いを指摘されていた。


 季節の仕分け。

 汚れの基準。

 子供服のサイズ分け。

 ボタンが取れたものの扱い。


「‥‥‥難しい」


 キララは、テーブルの前でため息をついた。

 そのとき「キララさん、ちょっといいですか?」と佐藤さんが声をかけてきた。


「はい‥‥‥」


「えっとね、今日はたくさん持ち込みがあって、ちょっと混雑してるんです。だから受付よりも、奥の仕分け作業を手伝ってもらえますか?」


「分かりました!」


 キララは、少しホッとした。受付での失敗続きから解放されると思ったのだ。

 奥の作業スペースには、大きなテーブルがいくつもあり、山積みの服が置かれていた。


「ここでは、もっと細かく仕分けをします。『そのまま使える』『修繕が必要』『リサイクル』『処分』の4つに分けてください」


「はい!」


 キララは、新たな気持ちで作業を始めた。

 でも。


「これは‥‥‥そのまま使えるよね」


 キララが手に取ったのは、少し色あせた子供用のTシャツだった。


「あ、それは色あせが目立つので、リサイクルですね」


 隣で作業していたベテランのボランティアが教えてくれた。


「でも、まだ着られますよ?」


「着られるけど、『もらって嬉しい状態』かどうかが基準なんです。色あせたものをもらっても、嬉しくないでしょ?」


「‥‥‥」


 キララは黙り込んだ。

 確かに、自分がもらう立場だったら「色あせた服より、綺麗な服のほうが嬉しい」。

 でも、実際にはまだ使えるのに。


「あと、これもリサイクルですね。毛玉が多いから」


「これも?ちょっと毛玉取れば‥‥‥」


「毛玉取りの時間まで含めると、作業が回らないんですよ。ここは、あくまで『そのまま使える状態』のものを選別する場所なんです」


 キララは、少しずつ胸の中にモヤモヤが溜まっていくのを感じた。

 せっかく持ってきた服。

 せっかく寄付しようと思った服。

 でも、基準に合わないものは、リサイクルや処分になってしまう。


「もったいない‥‥‥」


 キララが小さく呟いた。


「そうですよね。でも、これが現実なんです」


 ベテランボランティアは、淡々と作業を続けながら言った。


「善意だけじゃ、循環は回らないんですよ」


 その言葉が、キララの胸に刺さった。

お読みくださりありがとうございます!

ブックマーク、評価、コメントを頂けると大変嬉しいです!!


リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

Xで最新情報を投稿してますので、よかったらご覧ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ