Ep.1 出逢い
※この作品はすべてフィクションです。
実在する組織や人物には一切関係ありません。
いつも通りの朝だった。いつも通り、誰とも目を合わせずに教室の隅の席に座る。授業中もノートの落書きに集中する。だから、最初は気づかなかった。いや、気づきたくなかったのかもしれない。あの日、彼女が俺の隣の席に座るまでは…
空が厚い雲に覆われている朝、いつもと少し違っていた。担任の先生が、少し興奮した面持ちで教室に入ってきたかと思うと、いつもより大きな声で言った。
「みんな、今日は新しい転校生を紹介する。月島咲良さんだ。」
先生の言葉に続いて、教室の扉が静かに開くと同時に教室がほのかにざわめいた。そこに立っていたのは、一人の少女だった。
俺は、顔を上げるつもりはなかった。新しい転校生が来ようが、俺には関係のないことだと思っていた。しかし、ふと視界の隅に映ったその姿に、俺の心臓は妙な音を立てた。
彼女が教壇の前に立ち、少し緊張した面持ちで口を開いた。
「月島咲良です。今日からここで皆さんと一緒に勉強することになりました。よろしくお願いします。」
その声は、澄んだ鈴の音のようだった。
一瞬、俺はなぜか、あの顔に見覚えがあった。どこかで、いつか、確かに見たことがある。古いアルバムの中に、夢の記憶の中に、それとも、もっと昔の遠い過去の中に……。しかし、どれだけ記憶を辿っても、その出所は掴めない。まるで霧の中で隠れるような、もどかしい感覚だけが心に残る…。
先生(担任)は指を差した。
「月島、席は藤井(俺)の隣が空いている。そこへ座りなさい。」
先生が指差した先には、窓際の席に座る俺の隣の空席があった。月島は小さく会釈をして、ゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。規則正しい足音が、静かな教室に響いく。
「キーンコーンカーンコーン」
1コマ目の始まりを告げるチャイムが、先ほどまでの物音をかき消すように鳴り響いた。
授業が始まる、。
俺はちらりと横目で彼女を見た。彼女は俺に視線を向けることなく、黙々とノートに書き連ねている。サラサラとペンが紙を滑る音だけが、自分の頭に入った。その横顔は、やはり見慣れないはずなのに、どこか懐かしさを感じさせる。一体、彼女は誰なんだ。胸の奥に引っかかったままの疑問が、雨音と共に降り続いていた。
放課後になり、激しい雨が窓を叩きつけ、遠くで雷鳴が轟いていた。教室に残る生徒はもうほとんどいない。俺は、読みかけの文庫本に目を落とし、文字を追っていた。しかし、物語は頭に入ってこない。窓の外の荒れた天気のように、心の中もざわついていた。彼女の顔が、ふと脳裏をよぎる。ページを繰る手が止まり、ゆっくりと本を閉じる。静かに立ち上がり、重い足取りで教室を後にした。傘を差しても濡れてしまいそうな雨の中、俺は一人、家路を急いだ。
次回いつ出るかわからないです。でも結構進展があるかも!?!?
(。ŏ﹏ŏ)