表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/53

怪談 ‐邪視事件‐

 さあさあ、ちょいとお時間を拝借!


 怪しい宗教にヤクザの娘。彼女が宿すは邪視の瞳!


 舞台はとあるマンション。密室に呪殺?


 世にも奇妙で、そして、とってもおぞましい事件。いったい真相はなんなのか。



 今、解き明かしましょう!


   ***


 現場はカルト宗教の信者たちが住むマンション。そこの305号室にて、住人が死亡しました。


 哀れな子羊の名前は羊堂一敏。

 一酸化炭素中毒による自殺……というのが警察の見解でした。



 ドアには鍵がかかっていて、開ける方法はなかった。監視カメラの記録によると、3階に来た人もいない。完全な密室であると考えられました。


 さらに、被害者は数日前から精神が不安定だった。遺書もあって……とはいえ本人が書いたとは思えないんだけど、自殺の線が濃厚だったのです。


 彼の死はまさか、呪いの瞳によって引き起こされたのでしょうか?



 すべての謎を解くためには、まず崇眼教会について説明しましょう。



 この宗教にはある特徴的な習慣があります。それは毎朝6時に行う儀式です。


 始めに、儀式を行う人は決められた時間、決められた部屋の場所で正座します。その後、目を隠し、額を床にくっつけるのです。


 賛美歌を流し、アロマキャンドルを焚いて、目を瞑る。心の中で神様と目を合わせるとのことです。

 彼らは皆、儀式によって気持ちが楽になると言います。


 まさか、本当に神様と心を通わせられたというのでしょうか。信者たちを導いていると?



 ──とんでもない。これらはすべて、教祖である天巌魔希の計略によるものでした。



 儀式の秘密は、マンションの空室にありました。このマンション、住人が居住する部屋が決められているのです。


 奇数階は101、303と奇数番、偶数階は202、402と偶数番というように決められています。つまり、人が居住している部屋の上下左右は必ず空室なんですね。


 儀式をすると心が安らぐ?

 神様と目が合わせられる?


 すべては、まやかし。

 トリックの種は唾棄すべきものでした。



 儀式の時間、天巌さんと護衛の方は空室に入り、薬物を炙り始めます。もちろん、違法の。


 炙られて発生した気体は、天井を抜け、真上で床に顔をつけている信者のもとに届きます。

 このとき、天井に滞留してしまいそうですが、そうならないために、仕掛けが施されていました。


 それが、過去に行われた大規模な改築です。これにより、天井には微小な隙間が作られ、気体を上階の部屋に届けることができるのです。


 目を隠すのは万が一にも隙間に気づかせないため。賛美歌は聴覚を、アロマキャンドルは嗅覚を阻害するためのようですね。



 もっとも、このインチキ行為は、薬物使用経験がある人にはバレやすいという弱点を含んでいます。だから、被害者にも気づかれてしまいました。


 そう。羊堂さんは口封じに殺されたのです。

 このインチキと同じ方法で。



 殺害の第一歩目。


 犯人は羊堂さんを自室に招きます。それまでに薬物の件で衝突しあっていたようなので、彼はその話だと思ったのでしょう。

 話し合いの詳細は分かりませんが、犯人は羊堂さんに睡眠薬を盛りました。途中で寝られても困るはずなので、効果はそれほど強くないものだと推察できます。


 羊堂さんは眠気を感じながら、自分で部屋に帰りました。ドアは自分で施錠し、床に就いたはずです。


 そして羊堂さんは眠りにつき、おそらく二度と目覚めることはなかった。



 いよいよ犯人たちは犯行に及びます。羊堂さんの部屋の真下、205号室の鍵を事前に借りておき、午後11時頃に入室します。


 そして薬物を炙るときと同じように、一酸化炭素を発生させます。


 現場には石油ストーブがあったので、使われたのもストーブだと思われていました。でも誰にも見られず証拠も隠せるとしたら、煉炭とか、もっと効率の良いものを使用したかもしれませんね。


 そして羊堂さんの部屋に一酸化炭素が充満し……死亡推定時刻の午前0時頃。羊堂さんは中毒死してしまいました。

 


 精神を病んでいたのは邪視の呪いのせいなどではありません。単に、薬物を絶たれたことによる禁断症状が出ていただけです。



 以上が顛末。

 そしてマンションと薬物を使って、このインチキ殺人を企てたペテン師は……。



 天巌魔希、もちろん、あなたですよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ