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血溜まりチャチャチャ  作者: 海の字
第一章 裏公団編
17/38

17.怪物達の饗宴

「コンコさまはどうとも思われないのですか。ナナシめはとても悲しいのです。生石さまが、生石さまが……」


「自分が(そそのか)したくせに悲劇のヒロイン気取ってんなよ。まぁ、気分は良くないよね。楽しみにしていたビスケットの袋を開けてみた、すると中はバラバラに砕けていた。それくらいの絶望さ。はぁ、惜しいやつを亡くしたよ」


 二人はキナと生石が相打ちになったと誤認していた。実際は生石を救うために、血液化したキナが傷口から入り込んでいた。


 最短で最愛の死を受け入れていたコンコは、だからこそ驚きの声を上げた。


「ぎゃあ!?」


 死んだはずの生石が、死んだままに立ち上がったのだ。その瞳に精気はなく、呼びかけにも無反応だった。


「まさか、キナ様ですか?」


 生石の表情は険しく、まさにキナそのもの。

 正解だ。現在生石は、肉体の主導権をキナの呪いに乗っ取られている状態にある。


 キナがなぜ生石に目をつけたのか。

 もちろんナナシとの友情に胸打たれたからだ。

 しかし前提として、彼女にはまともな理性など残っておらず。

『憎悪を晴らすことができる』という目的によるものも大きいだろう。理性を無くし、ゆえに本能に従った。


 生石の精神は、呪いを発現するほどの複雑な構造をしていない。『深く考え込まない』を信条にしているためである。


 かつ、類稀なる肉体強度によりキナを受け入れる土台が完成していた。


 そんなものはただのキッカケに過ぎない。

『狐塚コンコ』こそが真相である。


 先の戦闘のおり、キナはコンコの呪いを大量に浴びた。

 操作のため血の解析を試みたが、法則を上書きする呪われの血だ、相応の時間を要する。


 結果、解析を中断し戦闘のスタイルを変えざるを得なかった。


 無駄だったと言うわけではない。呪いとはとどのつまり精神の表出であり、キナは解析のおりコンコの歪な思惑を感じ取っていた。


『私にとってつまらない人間は、いなくなってほしい』


 コンコは生粋の刹那主義者であり。コンコにとって他人とは、面白い人間か否かのみが主菜である。


 逆に言えば、つまらないと判断した者に容赦はしない。『興味がない』と言えたなら、コンコはまだ常人の範疇であれた。


 コンコは敵意、いやそれ以上の殺意を抱いてしまうほどに鬱屈していた。


 生石はコンコのためなら何だってする殉教者として愉快だし。

 ナナシは弱小の皮を剥げば人間以上に傲慢な野望が露出する。


 ならばこの場合の『つまらない』は、『ダンビラ組』をさす。


 人殺しを諦め、神になる野望も捨て、混沌に仮初の秩序をでっち上げた。そのくせ人間らしく弱者を迫害する卑劣な姿勢。


 コンコは叶うことなら『ダンビラ商店街の壊滅』を望んでいた。 

 キナは忌み子を虐げる『人間共の死滅』を望んでいた。


 二人の望みが《《合致》》したのだ。


 瞬間、キナの目的意識がビリビリとコンコの恥部を焼いた。


「は、はは!! こりゃいいぜ。キナ、やるんだな!?」


 なぜ今までキナが門番に甘んじていたのか。

 いくら憎もうと、古井戸から遠く離れた土地に居を構える人間の元へ行く知性が、神にはもう残されていなかった。


 己の血を染み込ませ続けた古井戸周辺の領域から出てしまうと、呪いの真価が発揮できないのもある。

 実際、生石にはそれで追い込まれてしまった。


 今は違う。生石の足と、コンコの知恵がある。彼女に従うだけで、最短で攻め入ることができる。


 キナはすでに血の解析を終えていた。

 なので領域の外へ出たとしても問題にならない。

 コンコという『無限に出血できる血液タンク』を獲得したためである。


「世界をぶっ潰すんだな!?」

 

 その後キナはコンコ主導のもと、百の人間と、『十呪烏合(じゅうじゅうごう)』と呼ばれる呪われの傑物たちに引導を渡した。


 商店街は消えて無くなり、『ウェルカム・ダンビラ商店街』のアーチだけがかつての名残りを残していた。


 このことを生石は何も知らない。

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