96.それぞれの日常 05
※若干ではありますが残忍な表現があります。
荷馬車はガタガタと音を立て進んでゆく。あと10分程度で到着するだろうと彼女達から教えられる。
「次は俺か?」
そう言って俺の袖をグイグイ引っ張るのは俊太だ。
「こいつは俊太。魔導剣士だ」
「魔導剣士?」
「ああ。双剣を使って素早い攻撃を使えるし、特攻するなら俊太に任せたら良いぞ」
「そうか。それは頼もしいな」
そう言うユリシアは少し顔を引きつらせている。
――――――
根本俊太 / 人族 / クラス [魔導剣士/魔力向上]
力 F / 知 C / 耐 F+
<スキル>
[剣術] 剣の扱いを極めし力
[魔法剣] 武具に魔力を籠めて強化する力
[飛剣] 籠めた四大魔法を放つ力
[双成魔剣] 複数属性の魔力を籠めて強化する力
[双剣術] 双剣を巧みに操る力
[神速] 瞬間的に速力を増幅させる力
――――――
俊太は魔法剣士だったが試練により魔導剣士となった。魔力が大幅に増え、試練により[双剣術]も覚えたことで攻撃力がさらに上がった。同じく試練で手に入れた[神速]によりもはや剣では勝てそうにない。
もしかしたら俺って大したことないのか?と悩んでしまう。この世界に来た時は聖剣士というクラスになったことに高揚したのにな。少し悲壮感を感じてしまうが、何を思ってもこの現実は変えられない。
「なんだかお前達だけで十分に依頼をこなせそうな気がしてきた」
「いや、そんなことないぞ?今回は偶々人質がいないってことが分かったけど、もし仮に人質がいたらどうなっていたか分からない。俺達はそこら辺の経験も覚悟も決まって無いからな。そんなこと想像すらしてなかったし」
「そうか。そう言ってくれるなら良かったよ」
ユリシアは少し照れた様子で頬を掻く。
「じゃあ次は俺だな!」
裕也がそういながら自己紹介を始めた。
――――――
斉藤裕也 / 人族 / クラス [斥候士]
力 F- / 知 E / 耐 D
<スキル>
[気配察知] 周囲の気配を感じる力
[隠密] 気配を殺して身を隠す力
[急所突き] 相手の急所を把握して正確に攻撃を加える力
[以心伝心] 他者と脳内で会話をすることができる力
[解錠] 簡易な鍵なら解除できる力
[自動罠解除] 周囲の罠を自動で解除する力
[盗賊の嗅覚] お宝の匂いを嗅ぎ取る力
――――――
斥候士だと言った瞬間、3人が少し安堵したように見えた。
だが、[以心伝心][自動罠解除]という試練で手に入れたスキルを伝えるとため息をつかれてしまった。同じく試練で手に入れた[盗賊の嗅覚]は伝えなかったが、この二つのスキルだけで十分規格外なスキルだと言われた。
[以心伝心]については使用が難しいと言っているが、気心の知れた俺達なら簡単な単語は伝えることができるので、たまに使っている。不特定多数へ言葉を伝えるのは難しく、且つ大量の魔力を消費するのだ。
「なあ、お前達って王国のダンジョンへ行ったのか?」
そう聞くユリシアに頷いてみせる。
「ああそうだ。50階層をクリアしている」
「50階層って……お前達ほんと何者なんだよ?でも試練か……いいな。私はこの国から出るわけにはいかないし……」
そう言いながら膝に顔をうずめるユリシア。
彼女達は帝都のダンジョンの30階層は軽くクリアしているという。ならば森のダンジョンに入れさえすれば……いや、それは俺が言って良いことではない。少なくとも佐田に許しを貰わなくてはならない。
そもそも今回偶々一緒に依頼を受けただけの関係だ。彼女達を強くする義務は何もない。そう心の中で反省し、流れを変えようと大吾の紹介を始めた。
「最後はこいつ、大吾だ。大吾は……神官、治癒と解毒、浄化ができる」
「……そうか。分かった」
控えめにそう伝え少し間があったが納得した様子のユリシア。
敢えて全てを伝える必要はないのだと今更ながら反省した。周りがチートばかりだったので感覚が麻痺しているらしい。このぐらいならと思っての説明は不味かったのだと。
そもそもこの世界の普通というものが分からないのだから仕方ないだろ?と心の中で言い訳をしてみる。
――――――
山本大吾 / 人族 / クラス [大神官/治癒力向上]
力 F- / 知 D+ / 耐 E-
<スキル>
[治癒] 癒しの力で傷を回復させる力
[解毒] 毒素を抜き取る力
[浄化] 害のある菌類や汚れを取り除く力
[精神安定] 他者の心を癒す力
[上級治癒] 高い癒しの力で傷を回復させる力
[範囲回復] 周囲に常時回復の領域を作り出す力
――――――
大吾は試練により大神官へとクラスアップして治癒力が向上した。試練により得た[上級治癒]と[範囲回復]は文句なしに仕えるスキルだ。
回復特化のスキルばかりの大吾。俺達が深い階層を安定して探索できているのは、大吾がいる安心感からでもある。俺だって痛いのは嫌だが、その苦痛も大吾が癒してくれるから幾分慣れてしまっている。
浩平がうまいことやってあっちに帰れたとして、この感覚を直すのは苦労しそうだと思う。今なら多少腕を折れたり切られたりしても大丈夫というあっちでは考えられない感覚になっているから。
当然あの世界でスキルが使えるとも思ってないしな。
そうこう考えている間に目的となる廃墟の近くにたどり着く。
荷馬車は俺達を降ろすと、少し離れた場所で待機しているという。危険を感じたら逃げるからとも言われたが、俺達が負ける未来は想像できない。
そう思ってユリシアを先頭に警戒しながら廃墟へと近づいていった。
「よし、ここからはさらに警戒を。あの中央に見えるデカイ建物に奴らの親玉がいる。私達はここから隠れながら奴らを引き出すように陽動するから、お前達は背後から強襲してもらえるか?」
「分かった」
顔を近づけ小声で大雑把な作戦を告げるユリシアだが、俺がすぐに了承すると苦笑いを見せた。
「ビビったりしないんだな?」
「まあな。もっと化け物みたいな連中と文字通り化け物と戦った経験もあるからな。人間相手で負ける気がしない」
「それは、頼もしいな。では突入は10分後、宜しく頼む」
俺は頷き、気配を消すように指定された建物を強襲すべく廃墟の背面へと移動を開始した。
その後、陽動により引き出された盗賊達を眺めながら、背後から近づきあっという間に親玉を制圧した俺達。行動不能にしては逃げ出した残党を捕まえては引きずるようにして一か所にまとめた。
こうして初めての盗賊討伐任務はあっけなく終わったが、色々と実りある経験を得たとこの運に感謝した。
盗賊達は全員その場で首を落とすことになっていた。残忍ではあるがこのまま捕縛して連れ戻っても処刑されるのだと言う。さすがに無抵抗となった者達を殺すことには抵抗があったが、それらは彼女達がやってくれた。
荷馬車に戻っていて良いと言われたが、俺と大吾だけは残りその様子を見ていた。いざとなればそんな場面もあるだろう。その前にあっちに帰れたとしたらラッキーだと思って眺めていた。
予想通りではあるが俺も大吾もあまりの光景に嘔吐したが、この経験が活かされることが無いよう、今後は気を付けなくてはと改めて思った。何を気を付けるかは分からないが。
落とした首を回収用の魔法の袋に詰め込む彼女達を見て、早く日本に帰りたいという思いを一層強くした。
盗賊達が貯めこんだお宝についてはギルドに戻ってから鑑定してもらい、分け前としていくつかを貰うことになっている。かなりの数の魔道具、装備品が貯めこんであったので思わず嬉しくなってしまう。
俺達は鑑定結果が出る翌日にまた会うことを決め、彼女達と分かれ初めての盗賊退治の緊張を癒すように食堂へと足を運んだ。
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