94.それぞれの日常 03
※本日二本目です。
適度に焼けたお肉をお皿に移す。
あれ?そう言えば味付けしたかな?
そう思ってお肉を凝視する。
うーん、分からない。でも焼き加減は最高に良い状態だ。美味しそうな匂いもするし多分だけど千佳特性の味塩コショウをパラパラとした……はず?
目の前のお肉はキラキラと光を放ちその見た目は最強と呼ばざる得ない出来になっている。これは、勝基君に食べてもらわねば!
そう思って勝基君を見る。
目線があってしまう。私は嬉しくなって頬が緩む。でもそんなに見られたら恥ずかしすぎる。
私は口元を隠してお肉を勝基君に差し出した。
勝基君は恥ずかしそうに口を開け、私の箸からお肉を啄んでくれた。私の中で母性が満たされてゆく。
私は次のお肉を準備するため、用意された肉の皿から良いお肉を厳選しようと目を凝らした。君に決めた!そう心の中で叫びながら輝くお肉を熱い鉄板の上に乗せた。
「ねえ千佳、うちのウッキさんがこれ摘んできてくれたけど、これって食べれるっぽい?」
沙耶がそう言いながら千佳に紫色の花を手渡していた。
ウッキさんというのはこの森の大猿で沙耶が隷属している魔物の事だ。彼女の隷属した魔物は森を探索しては食べれそうな何かを発見してくるらしい。
「これ凄いやつだよ沙耶!雌しべを乾燥させて使うんだけど、あっ、でもこれ数が必要なんだよね」
「なら大丈夫かな?大量に咲いてる場所があったって」
千佳の言葉に考える。紫の花の雌しべ?良く分からないけど喜ぶ千佳の様子から凄いものなのだろう。
「サフランはこの世界では出回って無いからね。手間もかかるし高価ではあるし、ウッキさん達に大量に採ってもらえたりしないかな?」
「分かった。全滅させない程度に確保させるね」
「大丈夫。そこまで自生してるなら球根さえ残せばまた咲くから」
「そうなんだ。じゃあ頑張って採ってもらうかな?」
そんな会話が聞こえた。
サフラン?それなら知ってる。でもサフランを使う料理って何があるだろう?
パエリア?それぐらいしか思いつかない。ご飯が黄色くなる奴だ。そもそもどう使うかも分からないけど。そんな中、千佳と紗那は雌しべを取って乾燥させる手順を説明して、その為の雌しべを採取する方法ををウッキさんに教えているようだ。
残りは焼却処分だけど、花炭にするとおしゃれかも?などと会話が弾んでいる。話が終わると沙耶を経由して採取方法を聞いていた3体のウッキさんが森の中へと駆け出していった。
優秀な魔物を使役できている沙耶も何気に助かるな。そう思いながら焼けたお肉を確認する。焼き加減はいまいちだ。こんな粗末な焼き具合では勝基君にあげられないと感じた私は、そのお肉を口の中に放りこんだ。普通に美味しかった。
沙耶は勝基君をどう思ってるんだろう。普段あまり自分の意見を言わない沙耶。できれば元の世界に帰りたいと言っていた沙耶。
彼女はウッキさんの他に魔馬なんかも隷属しているので移動手段とすることもできる。馬車の用意が要らないのはこの世界で何より重要な能力だ。物静かな彼女は勝基君とも相性が良いように思える。
――――――
山崎沙耶 / 人族 / クラス [調教師]
力 D+ / 知 F- / 耐 G+
<スキル>
[意思疎通] 魔の者と心を通わせる力
[親睦] 魔の者から慕われやすくなる力
[隷属] 親密度の上がった魔の者を隷属する力
[信頼の絆] 隷属している魔の者の力を強化する力
[召喚] 隷属した魔物を召喚する力
[英雄の目] 力の及ばない魔物からも慕われやすくなる力
――――――
魔物を隷属させる能力は汎用性が高い。今後沙耶がもっと強くなればさらに有用な魔物を従えることができるはずだ。試練で獲得した[信頼関係][借款][英雄の目]は強い魔物を従える程に有効活用できるだろう。
今後、勝基君がどこかのダンジョンの制覇を望むなら……彼女は一緒に戦ってくれるのだろうか?いや、沙耶は勝基君を好きにならない……はず。沙耶は洋画に出ていた俳優さんに夢中だったはずだから。
勝基君の顔を見て改めて安堵する。勝基君は黒髪だし、鼻も高くはない。背もそれほど高くは無いし、そもそも格好良いというよりかわいい系だ。改めて思う。私が好きな勝基君は沙耶のタイプではないのだと。
一人頷き安堵していると、目の前で2体の影分身にお肉を焼かせている京子の姿が目に入った。自身は一心不乱にお肉を頬張っている。
便利なスキルだ。スキルを使うと魔力と一緒に体力も消費する。食べることは回復するという事だ。スキルでお腹を減らしさらに料理を掻き込む。夢の永久機関だ。
そんなアホらしいことを考えてしまった。
魔力は回復しないのでいずれ魔力切れを起こすだろう。その時は歩ける程度に魔力を譲渡してあげよう。
京子はあまり勝基君とは接点を持っていないし、京子も私をサポートするって言ってくれたし。恋とかそう言った事にはあまり関心が沸かないって言っていたし。今も色気より食い気って感じだし。
……関心が無いと装っている、ってことは無いよね?
――――――
玉井京子 / 人族 / クラス [蔭術士/スキル能力向上]
力 F / 知 D+ / 耐 E+
<スキル>
[認識阻害] 他者の意識から外れる力
[影走り] 気配を消して高速で走る力
[影分身] 真っ黒な影の分体を作り自由に操作する力
[気配察知] 周囲の気配を感じる力
[影縛り] 自身の影を操り他者を拘束する力
[影の支配者] 影分身に自我を持たせる力
[ヒソム影] 他者の影に潜む力
――――――
彼女はその高い機動性から買い出し要員として活躍している。戦闘でも汎用性の高いスキルを持ち合わせている。
試練では[影の支配者]と[ヒソム影]というスキルを得て、さらには影術師から蔭術士にクラスチェンジしたことでさらに効率的にスキルを活用できるようになったと言っていた。
彼女は安全パイ……そう思ってはいるけど。いずれこの森を出て放浪すると言っているけど。それに勝基君がついて行きたいって言ったら京子はどうするのだろうか?
思わず拳に力が入ったようで握っていた箸がバキリと音を立てた。
「未波?どうしたの?」
気づけば目の前の肉は千佳により救い出され、適度に焼いたお肉と共に私の皿には肉の山ができていた。
「ううん?何でもないよ」
私は新しい箸を取ると、肉山から一番良く焼けているお肉を選び勝基君を見た。
これは私の皿に乗せられたお肉だ。なら私が育てたお肉と言っても過言はないだろう。私はそんなお肉を照れている勝基君の口に運び、満たされた心のままに笑ってみせた。
この幸せな日々がいつまでも続きますようにと願いながら。
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