93.それぞれの日常 02
――― ウイストザーク帝国・ウイストザーク大森林
王国から戻って2週間、ゆったりと過ごすことができた。
今は勝基君と共に楽しく暮らすことができている。超幸せ。
相変わらずルリさんやコガネさんがべったりとくっついていることも多いけど、食事の時なんかは恥ずかしそうにする勝基君にアーンしてあげることにも成功している。
フランは皇帝のお仕事があってまだあまりこれなくなり少しホッとしている。
だけど最近は由衣ちゃんがかなりグイグイきているので、私も負けてられない!と思うけど……やっぱり恥ずかしかったりするんだよね。
最初は飯田君の取り巻きをしていた由衣ちゃんが?なんて油断してたけど、明らかに好意を寄せているのは見え見えなわけで。あんなにあからさまな好意を向けられてたら、いつか勝基君もなびいちゃうかも……そう思うと不安で仕方がない。
この世界なら一夫多妻も普通みたいだし、ならいっその事、前にフランが話してくれたようにみんなで勝基君をシェアできたら……
シェアって……私は昼間から何を考えてるんだろ。
愛理達もまだ一緒にいてくれるけど、いつまでも甘えてばかりもいられない。千佳はいずれお店をと思ってたりするし、愛理と沙耶は元の世界に戻れるようになったら戻りたいって考えてるし。
京子は戻らないって言ってるけど、いずれは色々なところへ行ってみたいって言ってたし、いつまで一緒にいてくれるかは分からない。
私は勝基君が戻るなら戻る。戻らないなら戻らない。叶うなら勝基君とずっと一緒に暮らしたい。でも、由衣ちゃんはどうなんだろう?
今は千佳に料理を習ってるけど、やっぱりスキルが無いと上手くいかないよね?そりゃ美味しくはできるけどね?千佳の料理は別次元の美味しさだし……
私は勝基君に何ができるんだろう?おもむろにステータスを開いた。
――――――
志田未波 / 人族 / クラス [大聖女/スキル能力向上]
力 F+ / 知 B+ / 耐 E+
<スキル>
[結界] 自身の指定した範囲で耐物耐魔の結界を作り出す力
[治癒] 癒しの力で傷を回復させる力
[浄化] 解毒効果のある光を放つ力
[範囲回復] 周囲に常時回復の領域を作り出す力
[聖結界] 周囲に魔の者を浄化する領域を作り出す力
[上級治癒] 高い癒しの力で傷を回復させる力
[魔力譲渡] 他者に魔力を譲り渡す力
[聖女の裁き] 邪なる者を打ち消す力
――――――
試練で覚えたのは[魔力譲渡]と[聖女の裁き]。さらには大聖女とクラスアップしたのでスキル能力が向上している。
今までと比べて何倍も効率が良くスキルを利用できる。
魔力譲渡については王国での戦いでもすごく役に立っていたと思う。治癒により生命力を回復させるだけでなく、有り余った魔力を譲渡できるのは使い勝手が良い。なんだかんだ言って勝基君は無茶して魔力枯渇状態になることもある。
そう言えば魔力供給する時は暖かくて気持ち良いって言ってたけし、積極的に使っていけばいずれ?そう考えると邪な妄想が膨らんで顔が熱くなる。
私は、周りの女の子達の誰よりも勝基君に役立つ存在になれるかな?
フランはやはり強敵だ。特に[巨人兵]のスキルを使った時は、勝基君のテンションが上がる。それに積極的にスキンシップを取っているので、今は離れているとは言えいつ襲撃してくるか分からない。
それに彼女とはもはや一蓮托生だ。2人で勝基君を篭絡してシェアすることになんら思う所はない。彼女もそれを良しとしてくれているし、私の背中を押してくれる存在でもある。
由衣ちゃんはどうだろう?
最初はビクビクしていた勝基君も今は慣れてきたのか自然と接しているように見える。何より金髪だった彼女が勝基君の好みに寄せて茶髪に変え、時折見せる恥じらいもなんかこうぐっとくるものあがる。
勝基君もそのギャップにドキッとしているように見える時もあった。
――――――
池田由衣 / 人族 / クラス [監察官]
力 F- / 知 D / 耐 E
<スキル>
[千里眼] 遠くを見通す力
[簡易鑑定] 人物や物の名前や簡単な内容を見通す力
[記憶術] 覚えたい事柄を忘れず保持する力
[強制執行] 号令により相手を従わせる力
[鋭視] 対峙した相手を怯ませる力
[冷静沈着] 精神汚染を防ぐ力
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彼女から聞いているステータス。
監察官クラスという彼女だが、試練で手に入れたという[強制執行][鋭視][冷静沈着]の3つのスキルは便利なスキルだ。王国での戦いでも何度もそのスキルを上手く活用していた。
いざと言う時には勝基君を支える気概もあることは、以前の皇帝との戦いの時にはすでに分かっている。咄嗟に私が動けなかった時に彼女は勝基君を抱きとめて守ってくれた。
考える程に強敵だ。やっぱりフランの言う通り3人でシェアを……そんなことを考えながら目の前のお肉を焼いていた。
愛理はどうだろう?
以前勝基君には興味は無いと言っていた。多分それに嘘はないだろう。積極的に私の背中を押してくれている。私が勝基君とうまくいったなら……愛理はどうするのだろう?帰れることになれば帰るだろうけど、やっぱり帰れないとしたら?
このまま一緒に暮らす?そしたらいずれ勝基君の事……
やめよう。たらればを考え出したらきりがない。
――――――
加藤愛理 / 人族 / クラス [罠師]
力 F+ / 知 F+ / 耐 F+
<スキル>
[足止め] 自身の周辺の指定場所に見えないくぼみを作る力
[罠感知] 罠を見抜く観察力を得る力
[爆弾付与] 自身の周辺の指定場所に爆発を起こす罠を設置する力
[麻痺沼] 自身の周辺の指定場所に麻痺効果のある液体を設置する力
[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力
[直感] 危険を事前に察知する予測の力
[自動罠解除] 周囲の罠を自動で解除する力
[遠隔設置] 罠の設置距離を広げる力
[索敵罠] 設置した場の動きを察知する力
――――――
彼女は戦闘面でも活躍している。
罠はもちろんのこと、[直感]は本当に何度も助けられている。
試練で手に入れた[自動罠解除][遠隔設置][索敵罠]も便利なスキルだ。ダンジョンへ潜る時には一緒なら心強いスキルを持っている。勝基君だって今は森でダラダラ狩りをしてるけどいずれまたダンジョンへということもあるだろう。
その時に私以上に愛理の事を……
私は頭をふって湧き出てくる妄想を否定した。
「未波、もう良いんじゃない?」
「え、あ?うん」
千佳にそう言われ、焼いていたお肉を皿へと移す。
少し焦げてしまった。せっかく千佳が最適な熟成具合にしてくれた高級肉。美味しく焼いて勝基君に食べてもらいたかったのに。私はそのお肉を口に放り込み、次のお肉を焼き始めた。
「私、焼こうか?」
「ううん。大丈夫」
千佳の提案を断りお肉を焼くことに集中する。千佳のように美味しくは焼けないだろうけど素材は一緒なんだ。せめて私にできる限りの焼き加減で……雑念を払うようにお肉を見つめていた。
千佳はいずれここからいなくなるだろう。
街へ出て自分の店を持つ。その夢がこの世界なら100%叶うのだ。元の世界には戻らないだろう。でも勝基君は千佳の料理の虜になっている。もしかしたら一緒に森を出るのでは?
そんな不安がよぎってしまった。
思えば千佳は勝基君に大量の料理を渡している。食料庫に入らない分を格納庫に入れてもらっているらしい。あくまでも時を止めることのできるスキルの能力があるからで他意はないのだろう。
だけど以前、「勝基君はいつも美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ」と言っていたのを聞いた。その時から私は少し警戒をしていたりする。千佳の母性が勝基君に嵌ってしまうこともあるのでは?と思ってしまう。
――――――
野村千佳 / 人族 / クラス [調理師]
力 E / 知 D- / 耐 E+
<スキル>
[神の舌] 口に含むことで食材の情報を読み取る力
[食材鑑定] 可食できる物の全てを見通す力
[包丁術] 包丁の扱いが上手くなる力
[解体] 可食できる食材を最適なサイズで解体する力
[嗅覚強化] 嗅覚を強化して食材を探し出す力
[食料庫] 食材を常に最高の状態に保つ空間を所持する力
[品質向上] 食材の品質を向上させる力
[熟成] 食材の成熟、発酵を促す力
――――――
千佳から聞いたステータスは料理特化だ。
試練で得た3つのスキルが彼女をさらなる高みへと押し上げてしまった。
彼女の[食料庫]には常に新鮮な食材が収納されいつでも調理が可能となっている。[品質向上]や[熟成]により通常は考えられないレベルまで高まった料理には、比較することすら馬鹿らしくなるレベルだ。
私は、どうしたら良いのだろうか?
そう思いながらも、目の前の肉が適度に焼けたのを感じ箸を上げた。
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