91.王国に仕込まれれた罠 06
城の入り口付近、横井達と合流した俺達。
改めて城前で指揮を執っていた男は公爵家の当主であることが確認された。
これでこの国の3つあるという公爵家が全て反旗を翻したという事実が確定し、移動中に未波により魔力供給を受け回復したマイケイルが大きなため息をついていた。
城へ詰めかけ剣呑な雰囲気を出していた兵士達も、案の定3人の公爵が捕縛されている姿をさらすと、武器を投げ捨て投降し震えながら頭を地面に擦り付けていた。
こうしてこの一連の王国での彼是は終わり、俺達への依頼は全て解決となったことだろう。俺もようやく帰る目途が立った。そう思っていた。
それから数日、俺達は修復が完了した玉座の間へと集まり結果報告を聞いた。
この国の公爵である御三家が失脚という大事件。
マイケイルの恩情なのか当主は公開処刑となったが、親族等への処罰は治めている領土の一時的な増税、並びに要職に就いた者の解雇のみとなったようだ。今後は公爵家の中から新たな当主を立て、改めて国への忠誠を誓わせるという。
これで全て解決、やっと帝国へと帰れることになった俺達。
その前夜、夕食も終わった時間になぜか俺の部屋には全員が集まっていた。
「俺達は王国に残る」
真剣な表情の飯田がそう話を切り出してきた。
「俺は王国のダンジョンで100階層を目指す。今のままの俺ではみんなを救うことなどできない。だからフランソワーズ様の護衛は横井達に任せた。済まないが頼まれてくれないか?」
「それは良いけど……分かった。フランソワーズ様は俺達に任せてくれ」
悲しそうな表情をした飯田の願いに横井達が頷き握手を交わす。
城での一件で飯田は真っ先に罠に掛かり眠ってしまし、目が覚めたのは全てが終わった後であった。目が覚めた飯田はこぶしを床に打ち付けながら自分自身を何度も罵倒していた。
自分自身が許せないのは十分理解できるが、何とかなったのだから良いのだろう?と思うのだが。
目が覚めたことを知らされ駆け付けたマイケイルが「そんなに自分を責めないでくれ」と慰めながら、破壊された部屋の床を見て悲しそうな顔をしてのは印象的だった。
「100階層をクリアしたらみんなを元の世界に帰すことができるかもしれない。だから100階層をクリアするまで、それまでは死に物狂いで頑張ってみたいんだ!」
「そうだな。それは飯田にしかできないことだと思う。頼んだぞ?」
「あ、ああ!良いとも!俺に任せてくれ!」
過去の勇者がそうだったように、100階層で[異世界転移]を覚える可能性がある。それができるのは勇者というクラスを引き当てた飯田にしかできないだろう。俺の言葉に飯田は久しぶりの笑顔を見せてくれた。
「それと佐田、あー、その、なんだ……志田さんの事、頼むぞ」
「ん?ああ、未波は幼馴染だからな。任せてくれ」
俺の返答に飯田は複雑な表情をしながらも俺の手を握った。
飯田の手の圧が少し強く痛かったが、きっと場の雰囲気にあてられ力が入ってしまったのだろう。そうに違いない。そう思いながらギリギリと締め付けられる手を振りほどいた。
話も終わり飯田達が部屋を出る中、いつもの3人が部屋に居座ろうとした。最後の夜まで俺を揶揄って遊びたいのだろう。何とか3人を追い出した俺は、ようやく王国での最後の夜を迎える。
俺は少しだけ寂しさを感じながらもいつの間にか眠りについていた。
「ではフランソワーズ殿、それに皆様も此度の事は本当に何から何までお世話になりました。この恩を返す為、我が国は貴国の一番の同盟国として、友好な関係を維持してこの世界をより良いものにしたいと思っています」
「ええ。私も、貴国の御清栄をお祈り申し上げておりますわ!」
王国の召喚の間で、俺達を見送りにきたマイケイルとフランがかたい握手を交わす。フランが皇帝としての立ち振る舞いを見せていることに親心のような感情が湧き泣けてくる。
俺を揶揄っている時などと違いどことなく気品を感じるフラン。良い皇帝となって平和な国にしてほしい。そして俺は森に引きこもり、自由気ままにのほほんとした生活を送るのだ。
そう考えながら、召喚陣の横の装置に大量の魔石が投入されるのを眺めていた。
そして俺達は、マイケイルやこちらに残ることを決めた飯田達に別れを告げ、起動された召喚陣により帝国へと戻ることができた。相変わらずの浮遊感に少し気持ち悪くなったが無事に転移でき、目の前で出迎えられた帝国の者達に歓迎された。
だが感動する間もなく「大量に仕事がたまっておりますゆえ!」と、宰相であるニコラウスの号令で兵士達に引きずられるようにして連れ去られたフラン。それに付き従うように他のメンバーも行ってしまった。
その光景をあっけに取られ見送った後、残された未波達と池田さんといういつものメンバーは、部屋の外に待機していた城の人達に送り出され帰路に就く。
王家所有と思われるド派手な馬車を用意され森の入り口まで送って貰えるらしい。乗り込む際には俺の両隣に座る権利を得る為、いつもの3人がじゃんけんをしているのを横目で見ながら、俺は端っこに乗り込み目を瞑り眠りについた。
暫くすると体を揺らされ目を覚ます。
隣に座っていたやや不機嫌そうな未波から森へ到着したことを教えられ、馬車を降りると久しぶりの森の空気を味わった。
すぐに森の中から強い気配を感じ一瞬身構えるが、予想通りにその圧はルリとコガネのものであり、それを視界に納めた次の瞬間には俺は2人に押し倒されていた。
俺の体はルリの糸でしっかりと梱包され、そのままルリの蜘蛛足に包まれるようにして中層にある拠点へと戻ることになる。そんな俺の顔はコガネの唾液によりべっとりと濡れていた。
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